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【社説】

学校と放射能 神経を研ぎ澄ませよ

2011年4月26日

 福島第一原発の事故を受けて国は、福島県内の学校が安全かどうかを示す放射線量の目安を決めた。子どもが安心して学び、遊べるようしっかり放射能を監視し、速やかに情報を出す態勢が大切だ。

 子どもが学校に通っても大丈夫か。運動場を走り回っても心配ないか。原発事故が起きてから親や先生はずっと気をもんでいる。

 地元の自治体の求めに応じて国が放射線量の安全の目安を示した。とうに新学期が始まっていて、学校によっては校庭での体育の授業や部活動を控えていた。

 子どもの健康を左右しかねない大事な問題だ。国はもっと神経を研ぎ澄ませてほしい。

 国際放射線防護委員会の考え方に沿って、国は子どもの年間の被ばく線量を二〇ミリシーベルト以下に収めることをめどとした。それを守るのに、校庭の放射線量が一時間当たり三・八マイクロシーベルトに達したら屋外での活動を減らすことにした。

 子どもが一日のうち八時間を屋外で、残り十六時間を屋内で過ごすことを前提にしている。夏休みの終わりまでの暫定だが、国は慎重を期したとしている。

 基準値以上の学校では校庭での活動を一日一時間くらいにとどめ、手や顔を洗い、うがいをするよう求めている。小さな子は砂場で遊ばないよう注意を促している。放課後も外出を控えたい。国は放射線量を毎週測り、二回連続して下回れば制限を外す。

 原発から半径二十キロ圏外の調査では、福島、郡山、伊達三市にある十三の小中学校や幼稚園、保育園が基準値を超えた。六十キロ以上離れている学校もあった。これまでに四つが解除された。

 原発事故の先行きはまだまだ楽観視できない。風向きや地形によって、放射性物質はどこへ運ばれるか分からない。すべての学校で放射線量を継続して調べ、丁寧に説明する態勢が欠かせない。

 先生の手助けも必要になるに違いない。学校に線量計を配り、助言すべきだ。遠足やハイキング、運動会などの野外行事にも親と協力して備えたい。

 子どもは放射線の影響を受けやすく、年間の被ばく線量は大人の半分の一〇ミリシーベルト以下に抑えるべきだとの見方もある。むしろ、子どもが放射能を気にしすぎて体調を崩すとの懸念の声もある。

 国はいつも親や先生の疑問に応え、不安を取り除く努力をしてほしい。安全の目安が妥当かどうかの検証も怠ってはならない。

 

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