中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 速報ニュース一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

がれき受け入れに波紋 「放射能怖い」愛知で苦情殺到

2011年4月26日 02時05分

次々に運び込まれ、積み上げられるがれきの山=宮城県亘理町で(星野大輔撮影)

写真

 東日本大震災で発生した大量のがれき処理をめぐり、受け入れを表明した愛知県の大村秀章知事の発言が波紋を広げている。県庁には25日、放射性物質の付着や風評被害を恐れる市民から苦情が殺到。中部地方の各県も基本的に受け入れる方針で、波紋はさらに広がる可能性もある。専門家は処理に関する情報開示の必要性を指摘する。

 「放射能ごみを持ち込むな」「農産物への風評被害が広がるじゃないか」。電話口から怒気を含んだ声が響いた。この日朝から、愛知県資源循環推進課の電話は鳴りっぱなし。「放射能に汚染されたごみが持ち込まれることはない」と職員は説明を繰り返した。

 発端は22日、宮城県を訪れた大村知事が、村井嘉浩知事との会談で「(がれきなどの廃棄物処理に)最大限協力する」と表明。知事発言を報道などで知った市民から苦情が相次いだ。

 そもそも県は、放射能に汚染されたがれきの受け入れを想定していない。廃棄物処理法では放射能汚染物は対象外で、処理が許されないからだ。大村知事も25日の会見で「放射性物質を含んだがれきが流通するわけはない」と強調した。

 被災地の復旧には、がれき撤去が緊急の課題だ。環境省の推計では岩手、宮城、福島3県のがれきの総量は2千万〜2500万トンに上る。3県内で出るごみ量の数十年分に相当する。

 このため環境省は各都道府県を通じ、市町村や一部事務組合にがれきの処理の受け入れが可能かを照会。30都道府県で受け入れが可能との回答が寄せられた。

 中部の各県も「お互いさま。全力でお手伝いさせていだく」(三重)、「全国で引き受けないとさばけない量なので協力したい」(長野)などと基本的に協力する姿勢。本紙のまとめでは、愛知、岐阜、三重の3県で年23万トンの受け入れ処理が可能だ。

 ただ、環境省はがれきの搬出方法や割当量を示していない。自治体からは「住民理解を得られるよう、国にはきちんとした説明を求めたい」(福井)、「どういう形でごみを搬出し、受け入れを求めるのか示してほしい」(岐阜)との声も出る。

 いち早く受け入れを表明した川崎市には、1週間で2千件を超える苦情が寄せられた。環境省廃棄物対策課の担当者は「原発周辺の汚染が懸念されるがれきを搬出するわけではない」と理解を求め、放射線量などの調査をしたうえで処理を依頼する方針だ。

 昇秀樹名城大教授(地方自治)は「被災地だけで廃棄物を処理するのは困難で、他地域が協力をするのは当然」と指摘。その上で「受け入れる地域の住民が、放射能を心配する感情は理解できる。風評被害の拡大を防ぐためにも、国は汚染が基準値以下であることを文書で明確に示すべきだ」と話す。

(中日新聞)

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ