残念ながらそれは期待できない。改革を回避した増税がもたらすのは、さらなる経済停滞と、それが誘発する増税、そして経済のさらなる停滞・・・。スパイラル式に貧乏になっていく日本の姿でしかない。
菅直人首相の所得半減政策
菅直人首相はこう宣言しているに等しい。「所得半減政策を進めます。日本人は粟を食べなさい」と。卑しい政策が招く当然の帰結である。
非常に面白いことに日本で「経済新聞」と名のつく新聞2紙が対照的な論調を張っている。産経新聞は、現政権に極めて批判的だ。4月22日の朝刊では1面トップで「大震災復興のために いま増税、とんでもない」と強く主張している。
また竹中平蔵・慶応大学教授の意見として「誤った議論の代表は『復興税』だ」という論文も掲載している。
一方で、日本経済新聞は歯切れが極めて悪い。社説では少なくともこの1週間、あえてこの問題を避けているように見える。その中で4月22日の「大機小機」では、「政府は復興税をためらうな」と題して、明確に増税を促している。
大機小機のコラムは匿名だけに、こちらの歯切れは極めていい。書き手には財務省の現役官僚もいると聞いたことがあるが、さもありなんという印象を受けた。いくら匿名記事とはいえ、これが日経新聞の主張と読めた。
自衛官は給与10%カット、ほかの省庁は知らん顔
ところで、今回の震災で航空自衛隊の松島基地は津波の被害に遭った。戦闘機をはじめとして多くの航空機が使えなくなった。その損害を補填するために、自衛官は10%の給与カットを決めたそうである。10万人体制で災害派遣している中で。
一方、総勢で7万人以上もいるとされる増税を主導する財務省のお役人が1円でも給与カットしたという話は全く聞かない。もちろん、原子力安全・保安院を擁する経済産業省もしかり、年金問題で大失態を演じ続けてきた厚生労働省も。
また、国会議員の定数を減らすというマニフェストを掲げた政権政党もあったが、そんなことは一切忘れている。また、外国人から献金を受けるという明らかな法律違反を犯してそれを認めた首相は、その椅子にご執心で自らの責任には頬かむりを決め込んでいる。
もちろん議員の報酬に手をつける気も全くない。増税が卑しい政策だと言うのにはこうした面も少なからずあることをお忘れなく。国民はばかではない。
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