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2011年4月26日(火)付

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統一選終わる―首相批判にどう応える

民主党が政権与党として初めて臨んだ統一地方選は、極めて厳しい結果に終わった。菅直人首相に対する党内からの批判は、昨年の代表選で首相を支持した議員にまで広がりつつある。東[記事全文]

統一選終わる―後はよろしくじゃなく

1カ月で、ざっと1万6千人の政治家を選んだ統一地方選が終わった。東日本大震災の直後で、非常時への対応が問われるなかでの選挙戦だった。見えてきたのは、民主党の不人気ばかり[記事全文]

統一選終わる―首相批判にどう応える

 民主党が政権与党として初めて臨んだ統一地方選は、極めて厳しい結果に終わった。

 菅直人首相に対する党内からの批判は、昨年の代表選で首相を支持した議員にまで広がりつつある。東日本大震災への対応では協力を表明している自民、公明など野党も、首相とは距離を置いたままだ。

 党内外でこれほど求心力の衰えた首相が、なお続く福島原発危機をうまく抑え込めるのか、不安は増すばかりである。

 被災地の再生も一大事業だ。多くの関係者の複雑な利害関係や主張をどう解きほぐし、合意を形成していくのか。必要な財源を賄う増税に国民の理解をとりつけられるのか。

 並大抵のことでは、その任を果たすことはできない。

 首相は、大震災の時に首相だったのは「宿命」と語った。その政権維持への執念は、自らの延命のためではなく、危機収束と被災地の復興に注ぎ込むものでなければならない。

 あらゆる意見に謙虚に耳を傾け、任せるべきは任せ、最終的な責任は一身に引き受ける。最高指導者としてのそんな姿勢に足らざるところはなかったか、改めて省みてはどうか。

 首相はきのうの国会で「政府を挙げて、やるべきことはやっている」と述べ、大震災や原発事故への対応が統一選に影響したとの見方を否定した。

 未曽有の二正面作戦である。誰がトップリーダーであっても、的確に対応できたという保証はない。しかし、自分は間違っていないと言い募るだけでは世論の支持は得られない。

 民主党は当初、今回の統一選を政党としての足腰を鍛える好機と位置づけていた。地方に根強い支持基盤を持つ自民党に対抗し、将来にわたって担う2大政党のひとつであり続けるためには、地方議員の裾野を広げ、「選挙は風頼み」の体質から脱しなければならないからだ。

 今回の敗北で、その目算は完全にはずれた。民主党は党再生のシナリオを一から練り直さねばならない。

 その責任を、菅首相は免れない。党所属議員も批判すべきは堂々と批判すればいい。

 ただ、いまはまだ危機のただ中である。時間の浪費、判断の遅れは日本の命取りになる。「菅おろし」の余裕はない。

 自分たちが選んだリーダーである。欠けている点は補い、一致して当面の危機対応にあたるのが政権党の筋目だろう。

 この国難に及んで、なお内紛という宿痾(しゅくあ)を繰り返すようでは、民主党の明日はない。

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統一選終わる―後はよろしくじゃなく

 1カ月で、ざっと1万6千人の政治家を選んだ統一地方選が終わった。東日本大震災の直後で、非常時への対応が問われるなかでの選挙戦だった。

 見えてきたのは、民主党の不人気ばかりではない。自治の現場の大きな問題点が浮かびあがってきた。

 そのひとつは、いわゆる「二元代表制」のあり方だ。

 首長と議会がそれぞれ選挙で選ばれ、ともに同等に民意を代表する制度だが、昨年来の河村たかし名古屋市長による議会解散と再選挙などで、議会が邪魔者扱いされる傾向が強まった。

 この統一選でも、大阪府の橋下徹知事が「議会を変えなければ何も変わらない」と訴え、みずから率いる「大阪維新の会」を躍進させた。民主主義のルールに沿って多数を得た手法は、共感の多さを裏づける。

 ただ、反対派との敵対関係をことさら強調することで有権者の支持を求める手法が行き過ぎれば、それは危うい「ケンカ民主主義」に陥る。

 そうして選ばれた議員が、首長の指示通りに動くようになれば実質的な一元代表制になる。「なれあい二元代表制」と批判されるいま以上に議会の監視機能が落ちることを懸念せざるを得ない。

 今回、市町村長選で議員定数や報酬の削減を公約する候補者が増えたのも「議会批判」が票になるとみてのことだろう。

 首長に議員定数や報酬を削る権限はないのに、まるで行革の対象とみなすような姿勢は、議会を軽んじすぎていないか。

 もう一つは有権者の沈黙だ。橋下氏のような人気者のいない選挙は盛り上がらないのか、道府県議、市長、市議、町村長、町村議の選挙はすべて戦後最低の平均投票率を更新した。知事選は戦後2番目の低さだ。

 これでは「多数決」というよりも「少数決」であり、民主主義がどんどんゆがんでいく。

 二つの問題点を解決できるのは、主権者の住民しかいない。

 自治と国政の最大の違いは、自治には住民の出番がいっぱいあることだ。首長も議員も解職させられる。もともと住民が積極的に関与する前提で、自治の制度は設計されている。

 首長と議会が対立したとき、最終判断をくだすのも住民だ。

 「情報がない」などと受け身でいても始まらない。住民が首長や議会との緊張関係を築いてこそ、自治は機能する。

 さあ選挙は終わった、「後はよろしく」などと、思っていたら大まちがいだ。有権者はずっと出番なのだから。

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