2011年02月26日08時50分
コンピュータ監視法案
2011年に入りチュニジアで起こった民主化運動・反政府デモに端を発し、近隣のエジプトやリビアへと飛び火、更に北アフリカ地域からバーレーンやサウジアラビアなど中東地域に政変が拡大する様相を呈しています。一連の出来事では、不特定多数の人々が時間と空間を超えて相互に情報共有する交流サイト「フェイスブック(Facebook)」など社会的ネットワーク(人同士の繋がり)をインターネット上で構築するサービス「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」の威力を世界がまざまざと思い知らされました。
2011年1月24日に召集された第177回通常国会提出を目論み民主党政権が準備している「コンピュータ監視法案(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)」は、コンピュータに係る「ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録に関する罪)」の疑いで警察など捜査機関が取り締まる必要がある際、裁判所の令状なしにプロバイダー(インターネット接続業者)にログ(通信履歴)を一定期間(上限90日間を想定)保全(消去せずに保存)するよう要請できる制度です。
コンピュータ監視法案では、ウイルス作成罪の要件が曖昧で“疑わしきは罰せず”の原則に反し、リモート・アクセス(遠隔操作)によって通信回線で接続されたコンピュータの膨大かつ広範なデータ(電磁的記録媒体)の差し押えが一網打尽に認められ、ログの保管を容易にするため、その保全を警察など捜査機関がプロバイダーに要請することができる等、国民のプライバシーや通信の秘密が侵害される致命的な欠陥を抱えています。
ログ保全要請によってメールの場合、発信者・受信者、通信日時、どのような回線経路で通信が行われたか、どのようなメールソフトを使っているか等が分かります。また、ウェブページ(ウェブ上にある個々の文書)の場合、どのウェブページを閲覧したか等が分かり、ブロードバンド(高速通信回線)で常時接続の場合には、かなりの確率で使用しているコンピュータを特定することも可能です。
警察など捜査機関がログを入手する方法としては、コンピュータ監視法に基づいてプロバイダーにログを保全させる正攻法のやり方のほか、ログは任意提出といいながらも国家的お墨付きを与えられたコンピュータ監視法の協力義務規定を根拠としてプロバイダーから半ば強制的にログを押収し、保管するやり方です。警察など捜査機関を取り締まる第三者機関がない以上、警察など捜査機関が適法な範囲を逸脱しても処罰されることを免れ、警察など捜査機関自身の権限を強大化しようと監視体制が行き過ぎた方向に進む恐れがあります。そして、インターネットが規制され、警察など捜査機関が特別高等警察(秘密警察)の如く自由な言論・表現活動を脅かして最終的に思想弾圧に波及する恐れもあります。
コンピュータ監視法案を取り纏める立場にある江田五月・法務大臣は、2011年1月15日の閣議後記者会見でコンピュータ監視法案について問われ、「これは、ちょっと勉強不足で何ともお答えできるほどの私の見解を持っておりません。我々の世代になりますと、それは何語ですかというところもあって、私自身は極力インターネットにもアクセスしたり、あるいは自分のホームページも活動日誌を毎日更新等しておりますが、それでも何か片仮名が飛び交うと頭がくらくらするのでしっかりと勉強させてもらいたいと思います」と発言し、民主党政権の閣僚として国家権力の中枢に居座りながら事の重大性を全く理解しておらず認識の希薄さを露呈しました。
日本をはじめ欧米など主要30ヶ国が署名し、2001年に採択された『サイバー犯罪に関する条約』を拠り所とするコンピュータ監視法案は、日本国憲法の第21条に規定されている「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」、或いは日本国憲法の第35条に規定されている「捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」に抵触し、「人権侵害救済機関設置法案(旧人権擁護法案)」と同様に私人である一般の日本人を国家統制し得る“平成版治安維持法(治安警察法)”と呼べ、天下の悪法であると考えます。
2011年1月24日に召集された第177回通常国会提出を目論み民主党政権が準備している「コンピュータ監視法案(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)」は、コンピュータに係る「ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録に関する罪)」の疑いで警察など捜査機関が取り締まる必要がある際、裁判所の令状なしにプロバイダー(インターネット接続業者)にログ(通信履歴)を一定期間(上限90日間を想定)保全(消去せずに保存)するよう要請できる制度です。
コンピュータ監視法案では、ウイルス作成罪の要件が曖昧で“疑わしきは罰せず”の原則に反し、リモート・アクセス(遠隔操作)によって通信回線で接続されたコンピュータの膨大かつ広範なデータ(電磁的記録媒体)の差し押えが一網打尽に認められ、ログの保管を容易にするため、その保全を警察など捜査機関がプロバイダーに要請することができる等、国民のプライバシーや通信の秘密が侵害される致命的な欠陥を抱えています。
ログ保全要請によってメールの場合、発信者・受信者、通信日時、どのような回線経路で通信が行われたか、どのようなメールソフトを使っているか等が分かります。また、ウェブページ(ウェブ上にある個々の文書)の場合、どのウェブページを閲覧したか等が分かり、ブロードバンド(高速通信回線)で常時接続の場合には、かなりの確率で使用しているコンピュータを特定することも可能です。
警察など捜査機関がログを入手する方法としては、コンピュータ監視法に基づいてプロバイダーにログを保全させる正攻法のやり方のほか、ログは任意提出といいながらも国家的お墨付きを与えられたコンピュータ監視法の協力義務規定を根拠としてプロバイダーから半ば強制的にログを押収し、保管するやり方です。警察など捜査機関を取り締まる第三者機関がない以上、警察など捜査機関が適法な範囲を逸脱しても処罰されることを免れ、警察など捜査機関自身の権限を強大化しようと監視体制が行き過ぎた方向に進む恐れがあります。そして、インターネットが規制され、警察など捜査機関が特別高等警察(秘密警察)の如く自由な言論・表現活動を脅かして最終的に思想弾圧に波及する恐れもあります。
コンピュータ監視法案を取り纏める立場にある江田五月・法務大臣は、2011年1月15日の閣議後記者会見でコンピュータ監視法案について問われ、「これは、ちょっと勉強不足で何ともお答えできるほどの私の見解を持っておりません。我々の世代になりますと、それは何語ですかというところもあって、私自身は極力インターネットにもアクセスしたり、あるいは自分のホームページも活動日誌を毎日更新等しておりますが、それでも何か片仮名が飛び交うと頭がくらくらするのでしっかりと勉強させてもらいたいと思います」と発言し、民主党政権の閣僚として国家権力の中枢に居座りながら事の重大性を全く理解しておらず認識の希薄さを露呈しました。
日本をはじめ欧米など主要30ヶ国が署名し、2001年に採択された『サイバー犯罪に関する条約』を拠り所とするコンピュータ監視法案は、日本国憲法の第21条に規定されている「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」、或いは日本国憲法の第35条に規定されている「捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」に抵触し、「人権侵害救済機関設置法案(旧人権擁護法案)」と同様に私人である一般の日本人を国家統制し得る“平成版治安維持法(治安警察法)”と呼べ、天下の悪法であると考えます。
http://yamada-shuzo.dreamlog.jp/
前・公益財団法人日本生産性本部主任研究員、元・特殊法人(現:独立行政法人)NEDO職員
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、同志社大学経済学部卒業
ライフワークである資源・エネルギー・環境問題から政治・経済・外交まで幅広いテーマを取り上げる
「『衆ノ雑感』山田衆三のブログ」の最新記事
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