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統一地方選:原発立地の苦悩 再開反対、しっかり監視…

 ◇新潟・柏崎

 7基合わせて821.2万キロワットと出力が世界最大の東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県柏崎市。市議選(定数26)には30人が立候補し、原発の安全性を巡って論戦が繰り広げられた。

 労組や住民らでつくる「原発反対地元3団体」のメンバーで、7選を果たした無所属の矢部忠夫氏(68)は市民に広がる原発への不安や不信の受け皿を目指した。同原発では、07年の中越沖地震で被災し停止した全7基のうち4基が運転再開。電力需要が高まる夏を前に、停止中の3基(計330万キロワット)の運転再開を進めるか否かが地元の注目課題だが、矢部氏は「国や東電が繰り返した安全神話は崩れた。再開などとんでもない」と反対し、票を伸ばした。

 一方、原発推進派で8選された無所属の丸山敏彦氏(74)は「産業を維持するためには、現実的に原発は必要」と訴えた。丸山氏はかつて、同原発の2基増設を唱えていたが、震災後は封印。停止中の3基の再開問題についても「福島の事故が落ち着かなければ議論できない」と慎重な姿勢を強調した。【岡田英】

 ◇福井・敦賀

 高速増殖原型炉「もんじゅ」や、敦賀原発が立地する福井県の敦賀市議選(定数26)は28人が立候補した。だが、候補者の多くは、福島第1原発事故があっても、有権者の原子力問題への関心は低調だったとみている。

 従来、脱原発を訴えてきた4期目を目指す無所属の今大地晴美氏(60)は、「もんじゅ」や、国内最古の商業炉、敦賀原発1号機の運転継続に反対してきた。選挙戦でも福島第1原発事故を取り上げたが、有権者には「敦賀は大丈夫」という反応が多く驚いたという。「“危険手当”としての原発関連の交付金を受け取ってきているから、原発を争点にすること自体がタブー」と話す。

 2期目の当選を目指す無所属の馬渕清和氏(41)は、計画中の敦賀原発3、4号機の増設推進などを主張してきた。今回の事故を受け「安全性が確認できるまで計画を凍結する」という立場に転じ、選挙を戦ったが、「市民は原発問題にほとんど関心がなかった」と振り返る。市内には原発関連の仕事をしている人が多い。馬渕氏は「本当に原発をやめるのなら、国の責任でエネルギー問題をどうするのか考えてほしい」と訴えている。【酒造唯】

 ◇佐賀・伊万里

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)を巡る防災安全策を焦点に29人が出馬した佐賀県伊万里市議選(定数24)。市域のほとんどが同原発から30キロ圏内に入り、多くの候補者が原発の安全対策強化を訴えた。原発推進・容認派もいた市議会が慎重姿勢に転じるのは確実とみられ、玄海原発の運転再開問題を抱える九電は、これまで必要としなかった伊万里市など周辺自治体の意向も重視せざるを得なくなりそうだ。

 3選を果たした無所属の草野譲氏(62)は原発事故を受け、慎重派に転じた一人。「安全神話が崩れた今、根底から考え直さなければいけない」と主張する。

 以前から反原発を訴え6選を果たした無所属の盛泰子氏(55)も、「10年来取り組んできたことは間違いでなかった」と勢いづく。

 同市は、国が原発から10キロ圏内と定める原子力事故の防災対策重点地域(EPZ)に入らないが、玄海原発から最も近い場所は12キロの位置にある。

 九電は地元の理解を得たうえで早期再開を目指すとしているが、「地元」の範囲を明確にしていない。【上入来尚、竹花周、蒔田備憲】

毎日新聞 2011年4月25日 2時07分(最終更新 4月25日 2時07分)

 

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