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[5495] とある転生者の願い事 はじめました 【習作】
Name: 自爆者◆f730a957 ID:c3d32e8c
Date: 2010/12/28 11:08
初めましてこんにちは。初心者なうえど素人の自爆者です

 このサイトに投稿SSを見続けてる内に、「自分も何か書き込もう」とノイズが奔りました。メチャクチャな上に読むに耐えないかもしれませんが、読んで頂ければ幸運です。

 この作品の内容は以下のとおりです。

     ・成り代わり主人公(原作キャラ転生)
     ・ご都合主義
     ・中二病
     ・未登場キャラ参入
     ・原作キャラ性格改変
     ・ところによって、多重クロス及び原作改変
 
 以上、注意6点です。上記のものが嫌いな方、読んでいてムカつく方はスルーをお勧めします。 最後になりますが、注意点・ご指摘等御座いましたら、ご報告お願いします。
 


 ・・・ちなみにジャンルは「とある魔術の禁書目録」です。



[5495] とある転生者の願い事 プロローグ  
Name: 自爆者◆f730a957 ID:c3d32e8c
Date: 2009/04/28 12:43
 
 はじめまして矢崎相馬です。突然ですが、皆さんは不幸について考えたことは有りますか?

 「お~い、矢崎~。頼み有るから降りて来~い」

 不幸っていうのは、多分よそ見とか、不注意とかからでは無いと思う。

 「あ、はい親方。今そっちに行きます」

 俺もよく知らないけど、少なくともただツいてないだけだと思っている。
 
 「到着っと、で親方頼みって何ですか?」

 だってそうだろ、よそ見運転ではねられたより、まったく知らない奴に家族を殺された方が不幸じゃないか。
 
 「悪い矢崎、小倉と一緒にコンビニ行って、人数分の弁当買ってきてくれ。朝寝坊したから、皆の弁当家に置いて来ちまったんだ。
1万で足りると思うが、足りなかったらその分立て替えといてくれ」

 それに、そんな事で嘆いてたら、全国の轢かれた猫たちは皆草葉の陰で鳴いていると思う。

 「判りました。・・・って小倉! 回れ右して逃げようとスンナ!?」

 だから俺は、一寸したことでは間が悪いと割り切って、過ごして来た。

 「それじゃあ親方、こいつ(バカ)連れてくんで後お願いします。昼には帰れるようにカンバルんで、待っててください」
 「おう、気を付けてこいよ」

 けど、さすがにあれだけされりゃあ~十分不幸だわな。


   とある転生者の願い事 プロローグ

 「・・・とりあえずは人数分確保できたな」
 「・・・その格好で前向きなお前にビックリだよ」
 今の相馬の格好は、もうじき冬だと言うのに袖の破れた作業服にペンキと穴だらけになったズボン、腕には未だ猫が噛み付いてたり、
背中はアイスクリームと飴と飲み物でべっちょり、仕舞いにゃあ頭をカラスが連打している始末。
・・・ちなみに此処までで道端のガムを3回踏んだので、いい加減に粘り気が無くなっている。
 
 「矢崎・・・悪い事は言わん。いい加減神社に行って厄を払ってもらえ、いくら不幸に耐性があるとはいえそんなんじゃあ、お前自身の印象が悪くなるだけぞ」
 相馬の格好を見て心配してくれるのは、高校時代からの友人で名前は小倉才人である。
 「と言ってもな~ 俺が不幸になったのは高校1年の冬休みの間からだもんな~ いい加減離れろこのバカ猫!」
 相馬は未だ食いついている猫を振り回しながら話をする。口調は軽いが、実際かなり危険な目にあっているのは勿論、
最近では近所からも白い目で見られはじめているのだが、その事を意に返さぬまま過ごしている相馬。
どうやら4年間の不幸で相馬自身の価値観を捻じ曲げてしまったらしい。
 「それに、俺自身も笑っていられるからそんなに不幸じゃないしな」
 「・・・お前のその前向き思考は見習うが、その不幸が原因で親方からリストラ勧告されても知らないぞ」
 「・・・マジでありそうな予告有難う親友」
 「どういたしまして親友。ところで、のんびり喋っているけど時間は大丈夫なのか?」
 「へ?」
 言われて時計を見る相馬。現在時刻は11時40分。ちなみに仕事現場とコンビにとの距離は大体20分弱掛かる。
普通の人なら歩いても大複40分だが、相馬の場合はそうも行かない。来た道でさえこの有様なのだ、帰り道も20分以上かかるだろ
 。少なくとも、のんびり歩いてたのでは間に合わない。
 「やべっ、いそがねえと、・・・走ればぎりぎり間に合うか?」
 「とりあえず言い分け考えながら走るか」
 「いいけど、「言い分け考えてたら遅れました」はやめてくれよ」
 「今の世の中じゃ有り得ない言い分けだな」
と、軽口を言い合えるほど仲のいい二人であるが、もうじき言い合えないことになるのは、それから数分後のことであった。



 

 「あれ? 俺何してたんだっけ?」
 と、相馬は周りをキョロキョロと見渡した。さっきまでの都会の風景とは違って、真っ白い空間である。上を見上げれば天井が無い、
いや在るかもしれないが、少なくとも、肉眼では確認できない程突き抜けている。周りにいくつかの扉が在る事から、
壁は有るんだろう事しか確認できない。
 そこまで確認して、こんどは相馬自身何があったのか、思い出す事にした。
 「確か、小倉と一緒に人数分の弁当買って、ダベッてたら時間無いことに気付いて・・・!?」
 そこで思考を停止して、手を口に当て吐き気を抑えた。口から嗚咽が聞こえるが、何とか飲み込み、ゆっくりと呼吸をして、
自身を落ち着かせた。
 「そうか・・・。俺、トラックに撥ねられて・・・」
 あの時、相馬と才人は時間に遅れまいと走っていたが、ハンドル操作を誤ったトラックが、二人に突っ込んだのである。
かなりスピードがあったため、気付いたときには手遅れだった。
 「にしても、最後の光景が運ちゃんの情けない顔だなんて、救われないな・・・。あれ?じゃあ才人は何処に居るんだ?」
 と、一緒に死んだはずの友人を探すも、影も形も無い。
 「ま、ここに居ないんなら、ここの扉のどれかに居るかも知れんな、とりあえず移動するか。」
と判断の元、相馬は徐に近くにある扉に向かおうとしたが・・・
 「あの~、私としては、そんな短絡的な行動は謹んでほしいんですけど~。」
 後ろから不意に声がしたため、相馬は首を動かし後ろを向いて誰何する。
 「だれだ!・・・ってほんとに誰だ?」
 後ろに居たのは、背中に翼を生やし、片手に本のようなものを脇に抱えた白衣の少女がそこに居た。
 「あ、申し遅れました。私はここ継続の間を管理している座天使で、名をラジエルとい言います。」
 ラジエルと名乗った少女は、丁寧に会釈するが、相馬は訝しげ声を発した。
 「・・・え~と。マジで?」
 「まじです。翼も動きますし。何でしたら、頭上の輪っかを触りますが?周りが白いから、視認し難いですがチャンと有りますよ。」
 と言って少女は自分の頭上に輪っかがあることを示すように人差し指を回す。
 「・・・いや、いいわ。なんか気円斬見たいであぶなっかしいし。所で継続の間って一体どうゆー場所なんだ?」
 「さらりとひどい事を言われた気はしましたが、ここは魂の保管所見たいな所と思って下さい。」
 と、相馬の問いに答える少女。
 「本来死ぬはずの無い人の魂が、時々ここに来て残りの寿命を別の世界に転生させるための場所です。」
 嬉々として少女は説明するが、相馬の表情は冴えないものだった。
 「・・・改めて死んだと実感すると流石に凹むな・・・。」
 「ま~元気出してください。では早速で申し訳ないですが、どの世界にいくか決めちゃってください☆」
 「ほんとに申し訳ないな、しかも語尾に星まで付いてるし・・・てか、一体どんな世界があるんだ?」
 相馬は、やや落ち込み気味だったが、異世界に行くにしても、流石に知らない世界には行きたくないのか、少女に確認を取る。
 「現在つながっている異界の扉は全部で7つあります。1から順に、バイオハザード、ベルセルグ、ヘルシング、Dーグレイマン、
ゼロの使い魔、鋼錬、とある禁書です。」
 
・・・1から5までの致死率が異様に高いんだけど・・・
 
「ま、此ればかりは、しょうがないですね。運が無かったと思ってぱっぱと決めちゃて下さい。それと言い忘れていましたが、転生
するにあたって、その人には一寸した能力を贈呈するのでそんなに悪い事ではないと思いますよ?」
 とはいえ7つともどんな世界なのか、知っている相馬にとって少女の言葉は励みにもならない。
 「無駄に原作知ってるとこうゆう時って苦労するのな~。てか才人はどの世界に行ったんだ?」
と愚痴をこぼす相馬だが、少女から意外な言葉が漏れた
 「才人って、小倉才人さんですか?それでしたらゼロの使い魔の世界に即決で行きましたよ。同じ才人繋がりで。」
 「・・・・・」
 普段から前向きだの何だのと、言ってる割には決断力はたかいのな~。
 
 結局、散々悩んだ結果とある禁書にし、7番目の扉をくぐった。

 

相馬が扉をくぐってから数分後。少女ひとりとなった空間に、一人の天使が姿を現した。
 「どうやら、うまくいったらしいですね。■■■■」
 少女に向けた言葉は、しかし最後の部分は霞かかった様に聞こえない。
 「そうですね。少し戸惑っていましたが、予定どうりにとある禁書を選びましたね。それと、すいませんラジエルさん。勝手に
お名前を使ってしまって・・・」
 と苦笑しながら天使、ラジエルに謝罪する少女。
 「お気になさらず、後々キーヤんとさっちゃんに報告して貰えれば結構ですので、他の処理については私がしておきます。」
 と言ってラジエルは片手を挙げた。すると周りの空間が徐々に暗くなり、7つの扉はその形を失っていく。作業をしているラジエルは、
ふと思った疑問を質問する。
 「しかし、本当にうまくいきましたね。ただでさえ余裕の無い状態だったのに、よく7分の1を選ばせましたね。」
 「当然です。そうするように4年間、彼に干渉したんですから。」
 少女は素っ気無く答え、ラジエルに説明する。
 「人は疲れたとき、楽な姿勢で動作しようとします。理屈はそれと一緒です。4年間不幸になっていたのに、
わざわざ死ぬ確率の高い世界は選びません。そうなると、1番から4番までは除外されます。ゼロの使い魔も奴隷並みの扱いと二つの戦争
が在るためこれも除外。そうなると鋼錬かとある禁書になりますが、鋼錬よりもとある禁書は軸が違うだけで、生前と同じ生活が出来ます。
また、彼に選択を迫ったのも、ブレッシャーを与えて他の選択肢を有耶無耶にするためのものです。正直、私自身も上手く
いくか自信がありませんでしたが。」
 言って、少女はラジエルに近づく。一方ラジエルは処理が終わったのか、上げていた手を下げて、少女に質問する。
 「では、最初からとある禁書の扉だけに、すれば良かったのでは?」
 「それでも良かったのですが、1つだけじゃ変に疑われますし、なにより、強制して「この世界に行け」とは無理強い出来ないので、
あくまで自分の意思での選択じゃあないといけません。」
 と言ってラジエルの顔を見る。
 「それに、わたしの管理ミスで、その世界の上条当麻さんが死ぬ寸前で、如何にもならないから、あなたを殺したので上条さんに成って
下さいなんて事、さすがに身勝手過ぎて、言うこと出来ませんよ。」
 そう言う少女の口調は、負い目があるのか表情とともに沈んでいた。
 「まあ、元気を出してください・・・でも珍しいですね?生まれた後から命の危機をさらしても、生まれる前から死にかけるなんて、
外部でも呪いの類なら、幻想殺しが打消すのに・・・」
 と疑問を零すが、少女は首を振って答えた。
 「その幻想殺しである右手が原因で、上条当麻が死ぬ寸前に陥ったのです。」
 やや苦笑しながら、上条当麻の『死』を説明した。
 「本来であればそのまま生まれる筈だったんですが、どうゆう訳か外部より魔術的な要素が加わってしまったんです。そのため
成長途中だった幻想殺しが殺されてしまい、その反動で右手が壊死してしまい、其処から毒素がまわってしまったんです。」
 少女は自分の右手を指しながら答える。と、ラジエルは理解できないのか首を傾げる。
 「しかしそれだと、なをさら幻想殺しで無効化出来るでしょ?なぜそんな事に?」
 「外部といっても、直撃的に受けてたのは上条詩菜さんで、当麻さんは間接的に受けてたようです。ちなみに、この魔術的な要素は
物質的に影響してるので、幻想殺しで対処しきれなかったらしいです。」
 「なるほど、母体に受けていた要素は、どうゆ訳かへその緒から胎児に移り、胎児の体内から幻想殺しを殺したと、ゆうことですか。」
 と納得したように頷くラジエル、少女は補足説明と、言わんばかりにラジエルに言った。
 「そのため、右手は腐り、幼子の命は消えかけた、本来共に生き行くであろう力と共に・・・しかしそれだと、この物語自体が無
くなってしまう、そうならない為に当麻さんの代役として、同じ色の魂を持っていた矢崎相馬に干渉しました。幸い、当麻さんの肉体は
、右手以外問題なくいたって健康体、脳への損傷も余りありませんから、相馬さんの魂と同化させて生命力を底上げすれば一命は取り止め
ます。ただ、幻想殺しは無くなってしまうので、別の力を付与する事に成りましたが、そのせいで不幸になることは無いでしょう。」
 そう言って、少女はラジエルから離れていく。ラジエルはまだ興味が有るのか、少女に質問する。
 「能力を持たない彼に、何を送ったんです?」
 「アンジェリカの指輪です。幻想殺しの様に異能の力を打消しますが、効果は其れだけです。あとは魔術なり超能力なり身に付ければ、
後は生活していけるはずです。」
 言って少女は、暗闇となった先に歩いていく。姿が完全に消えたとき、声が木霊した
 「そろそろ帰らなければ『あの人達』にどんなお仕置きされるかわかりません。ラジエルさんも早く戻らないと大変ですよ?」
 それきり、少女の存在が無くなった。
 「・・・・・」
 ラジエルも踵を返し、闇へと進む。不意に、ラジエルは1つの疑問を抱いた。
 (・・・仮にも神の奇跡も打消す力が、呆気なく消えるだろうか・・・ま、今となっては確認する事も無いですが。)
 言って、ラジエルもまた闇えと消える。


 とある禁書のとある夫婦にて

 「ただいま母さん。」
 扉を開ける精悍な男性。 
 「あらあら、刀夜さん。お帰りなさい。」
 出迎えるのは子を宿した女性。
 「しばらく居なかったけど、子供は順調そうで成りよりだ。」
 いって女性のお腹を撫でる男性
 「ええ。再来月には誕生すると、お医者さんが言ってましたわ。」
 女性もお腹を撫でて男性に言った。そうかと男性は返し。
 「なら、出産には立ち会えそうだな・・・そうだ、忘れない内にお土産を飾って置こう。」
 言って居間へ向かう男性。
 「あらあら、刀夜さん。ご飯よりもお土産を選ぶんですね。この子の名前もまだなのに。」
 言って男性の後を追う女性。
 「その事なんだが、飛行機に乗っている時に、ふと思いついたんだが。」
 男性はメモ帳を出し女性に見せる。
 「あらあら、素敵なお名前ね。やっと、あなたも名無しじゃなくなるわね。」
 女性はメモ帳を見てお腹の子に撫でながら言う。
 


           メモ帳に書かれた文字は「上条当麻」である。


 あとがき
  没プロローグ2話目にて。



[5495] とある転生者の願い事1-1
Name: 自爆者◆f730a957 ID:d98c521b
Date: 2010/12/26 22:58
オッス、矢崎相馬改め、上条当麻だ。前回・・・てか、15年と少し前に転生直後に死に掛けた死にぞこないだ。危うく窒息死に成るとこだった。何を言っているのか判らないと思うが、ようは世界の修正力がすごいと言う事だ。一応アレイスターの手もあったが、大部分が世界の修正力で成り立った。生まれた時に右手を失ったり、左手には変な力があったり、連続傷害事件の犯人として追われたり、00000号(フルチュ―ニング)や麦野沈利に出会ったり、幻想殺しが復活したりと色々あったんたが・・・今思い出してもろくな出来事しか無いな・・・ ま、そんな感じで世界の修正力に驚きながら人生過ごしていました。え?もう少し詳しく聞かせろって?まあ、気持ちは解るよ。不明瞭で具体的な話じゃない事は自覚している。もうちょっと詳しく話したかったが、残念ながらそうもいかない.




何故なら・・・


  

「おるぁ!! ちくしょうこのクソガキ止まりやがれこの逃げ足王!!」

  「ぜってー捕まえてサンドバックにしてやんぞおるぁ!!」

「ええい! くそっ! くそっ! あーもうちくしょうー不幸だーーーっ!!」


 ・・・現在進行形でチンビラと夜の追いかけっこに勤しんでいます orz


  とある転生者の願い事   第1話    


 「く、くそ……やっと撒いたか」
 
現在当麻のいる場所は、大きな川の上に立つ長さ一五〇メートルもある鉄橋の上にいる。車も明かりも無く、夜の静寂な闇が、無骨な鉄橋を静かに包んでいた。

 「なんで二度目の青春をこんな事で、浪費しなきゃあかんのじゃ……」
 
と、左手を上げて顔を覆う。その手には包帯が巻かれ、その上にグローブが嵌められていた。当麻は、おもむろに夜空を見上げて息を吸う。
 
 (……そういやあ、この後だっけか?御坂美琴のせいで大停電になるのは)

ふいに原作を思い出した当麻は、チンピラに喧嘩を売る直前の行動を振り返る。明日は待ちに待った夏休みであり、原作の始まる日でもある。明日に備え精を付けようと思いラーメン屋に直行したが、入った先に明らかに酔っ払ったチンピラ達と、それに絡まれてる眼帯隻腕の女性がいた。あまりの光景に思わずため息を吐く当麻だが、すぐさま起動してチンピラ達を宥めるが、トイレから出てきたチンピラ仲間にたじろぎ、そのままフルマラソンを決行した。後ろからはチンピラ達の罵声(ラヴコール)を受け、前方からはイラっとくる程の恋人達の営みを妨げ、行き着いたのは鉄橋の上、全力疾走で走ったのか、それとも思い返したせいかは定かではないが、当麻の顔に影が宿り、
かなり哀愁のこもった重いため息を吐く。と、当麻はおもむろに口を開き
 
 「つか、この場合はあいつになるのか?一応御坂には出会ってないから、来る事は無いと思うが……」
 
そう考えた当麻は、このまま帰ろうか思案していると、後ろから二人分の声が聞こえてきた。

 「「やっと追いついたわよ、無能力者(レベル0)!!」」

そう言われ後ろを振り向く当麻だが、確認して後悔した。ぶっちゃけ今すぐにも逃げたい気分である。後ろには二人の女性が立っているだけだが、不良集団(スキルアウト)より質が悪すぎる。左側の少女は、灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセータという格好をした中学生。右側の女性は夏物の服を着ており、右目を隠す様に眼帯をし、左腕は肩の所で途切れている。というか、ラーメン屋で絡まれてた女性である。それぞれの名前は、御坂美琴と麦野沈利。この学園都市で7人しか居ない超能力者(レベル5)の第3位と元4位だ。ちなみに二人は、それぞれの学校では動物委員と美化委員に勤めています」
 
 「「勝手に変な設定付けんな!!」」
 「勝手に人の思考を読んで欲し「「今声に出してただろうがゴルァ!!」」・・・つか、麦野はまだしも御坂は何で居るんだよ。お前はチンピラに絡まれちゃいないだろ?」
 
二人の息のあった突っ込みにたしろぎつつ、今思う疑問をぶつける当麻。そう言われた美琴が一息置いて返答する。
 
「仮にもあたし等を退けたアンタが、不良程度に情けなく逃げ回ってるのが癪に障ったのよ」
 
どうやら、逃げ回る最中に当麻の知らぬうちに見つかってしまったらしい。
 
 「ちょっと待て、つー事はあれか? 後ろの連中が追ってこなくなったのって…」
 「うん、めんどいから私が焼いといた」
 
バチン、という青白い火花の音が響いた。当麻はげんなりとした顔で、ため息を吐いた。
 
「で、一応聞くけど麦野は何で追ってきたんだ」

と、もう片方の女性に向けて、質問する。

 「建前は御坂と一緒、本音は1年前の雪辱と、左腕と右目の恨みを晴らすためよ」
 
と言って麦野は左半分の顔を歪ませて狂喜に満ちた笑顔を作る。それを見て当麻は、本当に心の底から逃げたい思いであったが、此処で逃げたら次に会ったとき何されるか判らない為、今度は美琴に向けて話をする。
 
 「もう一度聞くけど、美琴は何で追ってきたんだ?」
 「私は自分より強い『人間』が存在するのが許せないの。それだけあれば理由は十分」

これだけらしい。最近の格闘ゲームでもまだもっともな理由があると思う。
 
 「けどアンタも馬鹿にしてるわよね。何の力も無い無能力者相手に気張ると思ってんの?弱者の料理法くらい覚えてるわよ」

そう言って、かつて同じ超能力者(レベル5)だった4番目に顔を向ける。麦野は鼻を鳴らして顔を背ける。
 
 「あのな、お前らが32万8571分の1の才能の持ち主なのは解ったからさ、長生きしたかったら人を見下す言い方止めた方がいいぞ。これマジな話」
 
現に麦野は、無能力者(レベル0)である上条当麻に敗れ、左腕と右目を失っている。
 
 「うっさい。血管に直接クスリ打って耳の穴から脳直で電極ぶっ刺して、そんな変人じみた事してスプーンの1つも曲げられないんじゃ、ソイツは才能不足って呼ぶしかないじゃない」
 
呆れた様に喋る美琴だが、無能力者(レベル0)である当麻としてはいたたまれない。
 
 「そりゃあそうかも知れんが、スプーン曲げるならペンチ使えば良いし火が欲しければ百円ライター買えば良い。テレパシーなんて無くともケータイあるだろ。んなに珍しいモンか、超のうおぃ!?」
 
当麻の発言を遮る様に、純白の光が当麻の横擦れ擦れに通る、放ったのは右側にいる麦野である。当麻の言葉が気に入らないのか、左目で睨み付けながら言葉を紡ぐ。
 
 「次に私らの存在価値を根本から否定するなら、その頭と股間を同時に消すぞ上条」
 
言って右手に光が灯る、どうやら気に入らないんじゃなく癪に障ったらしい。その証拠に麦野の顔が、先程よりも禍々しくなっている。このままいけば現役超能力者(レベル5)顔負けの実力(パフォーマンス)がお目見え出来るが、残念ながら当麻は観る方ではなく受ける方である。そのため当麻は、謝罪の言葉を紡ぐ。

 「すいません、勘弁してください。……でも超能力はあくまで副産物に過ぎないんだろ? 俺たちの目的ってな、その先にあるもんじゃなかったっけか?」
 
その言葉に対して、学園都市の超能力者(レベル5)第3位は唇の端を歪め、
 
 「はあ? ……ああアレね。なんだったかしら、確か『人間に神様の計算は出来ない。ならばまずは人間を超えた体を手にしなければ神様の答えにはたどり着けない』だっけ」
 
はん!と鼻で笑う第3位だが、当麻は心の中で思う。
  
 (いや、俺の知ってる神様ですら全知全能と言うほど偉大じゃない。人間のように失敗するし、人間のように感情がある、特にあの子は……)
 
と思考していた当麻だが、美琴はかまわず話を続ける。
 
 「―――――は、笑わせるわね。一体何が『神の頭脳』なんだが。ねえ知ってる?解析された私のDNAマップを元に軍用の妹達(シズターズ)が開発されてるって話。どうやら、目的よりも美味しい副産物だったみたいじゃない。・・・ていうか。まったく、強者の台詞よね」
 「は?」
 
言われて現実に戻ってきた当麻、気付けば空気の質が変わっていた。
 
 「強者、強者、強者。生まれ持った才能だけで力を手に入れ、其処に辿り着くための辛さをまるで分かってない―――マンガの主人公みたいに不敵で残酷な台詞よ。アンタの言葉」
 
ざザザざザざざザ、と鉄橋の下の川面が、不気味なぐらい音を立てる。当麻とて努力をしなかった訳じゃあない。それでも美琴は当麻が気に入らなかった。超能力者(レベル5)に辿り着くまでにどれほど『自分』を捨てたのか分からない。それ程苦しんだのに、目の前にいる当麻が美琴の努力を、苦悩を、力を否定した。たったの一言で、たったの一度も振り返らなかった事で
。たったの一度も負けなかった事で。
 
 「―――おいおい、年に一度の身体検査見てみろよ?俺の能力(レベル)は最低でお前は最高だぜ?その辺歩いてるヤツに聞いてみろよ、どっちが上かは一発で分かんだろ?」
 言って惚ける当麻、確かに学園都市の計測機器の判定評価は『無』能力だったが、それで納得する美琴ではない。スカートのポケットからメダルゲームのコイン取り出し、
 
 「ねえ,超電磁砲(レールガン)って言葉、知ってる?」
 「あん?」
 「理屈はリニアモーターカーと一緒でね、超強力な電磁石を使って金属の砲弾を打ち出す艦載兵器らしいんだけど」
 
言ってコインを親指に載せて

 「―――こういうのを言うらしいのよね」

 言葉と同時。音はなくいきなりオレンジ色に光る槍が当麻の頭のすぐ横を突き抜けた。一瞬遅れて轟音が鳴り響き、オレンジの光は鉄橋の路面に激突し、アスファルトが吹き飛んだ。

 「こんなコインでも、音速の三倍で飛ばせばそこそこ威力が出るのよね。もっとも、空気摩擦のせいで五十メートルも飛んだら溶けちゃうんだけど」

 鉄とコンクリートの鉄橋が頼りないつり橋のように大きく揺らぐ。当麻は背中に悪寒が走ったのを感じた。

 「―――お前。まさか連中追い払うのにそれ使ったんじゃねーだろうな……ッ」
 「ばっかねぇ。使う相手ぐらい選ぶわよ。私だって無闇に殺人犯になりたくないもん」

 言いながら、美琴の髪が電極のようにバチンと火花を散らす。と、まったく会話に入ってこなかった麦野が口を開く。

 「あんな奴ら、追い払うだけなら本気なんかださないわ、よ!」
 

それは、ほぼ同時だった。左にいた美琴からの青白い電撃と、右にいた麦野の真っ白い雷撃が放たれ、当麻に襲いかかったのは。方や鉄骨を焼き焦がす程の、方や鉄骨を破壊する程の攻撃が、人の体程度では防ぐ事はおろか避ける事さえ出来ない。なにせ光の速さで落ちる雷が二本である。避けろと言う方が無理である。咄嗟に両手を出し、左右の雷撃に向けるが激突した二本の雷撃が、当麻の体を寸断し体内で暴れるのみならず、四方八方に飛び散り鉄骨へと火花を巻き散らした。




 ・・・・・・、ようにみえた。



 「「で、何であんたは無傷なのかしら?」」
 
異口同音に告げる気軽い声だが、二人が犬歯を剥き出しにして当麻を睨む。周囲に飛ぴ散った雷撃は橋の鉄骨を焼き、所久に穴をあけるほどの威力だった。にも関わらず、直撃を受けた当麻の両手は吹き飛んではいない、……どころか、火傷も欠損もしていない。

 「まったく何なのかしらね、その能力って、学園都市の書庫(バンク)にも載ってないんだけど。あたし等が32万8571分の1の天才なら、
アンタは学園都市でも一人っきり、230万分の1の大天災じゃない」

忌々しげに呟く麦野。

 「そんな例外を相手に喧嘩売るんじゃ、こっちもレベルを吊り上げるしかないわよね?」

忌々しげに宣告する美琴

 「……、それでもいっつも負けてる癖に」

 飽き飽きと告げる当麻、直後溜めなしの雷撃が当麻に迫るも、さっきと同様に防がれてしまう。………誤解のないように注意するが、この当麻とて人間であるし、両手も手首から先までしか効果がなく
、また身体も普通の人と変わらない為、二人の攻撃をまともに受ければ怪我では済まない。なので
 
 (あぶね~~~マジ死ねる!! 原作の上条さんじゃあ無いけどマジで死ぬかと思った~~~!!)
 
内心はかなり焦っていた。とりあえずばれない様に平静を装い、余裕綽々の顔で二人に

 「何つーのかな、不幸っつーか、ついて無いっつーか」

当麻は今日一日を、七月十九日の終わりを、たった一言で締めくくった。

 「オマエら、本当についてねーな」
 


    





               ――――づく・・・がみ―――                   
                                            ―――よる・・・ばけ―――
     ―――うち・・・こに・・・るな―――                 ―――きさま・・・ばよか―――
       ―――かな・・・ころして――― ―――あの・・・かえ―――          ―――きさ・・・せいで―――






                                                 ―――この死神が―――





 「・・・またあんた等かよ・・・」
 
当麻は自宅のベットの上で目を覚まし、先程の夢を思い返した。仰向けになったまま両手を挙げて見る。左手は、寝返りを打った所為か包帯が緩み弛んでいる。隙間に見える素肌は幾つも傷跡があり、包帯の中に所々見え隠れする。右手の方は、手には無いが手首から数センチ下の方に、縫い合わせた傷がある。不意に、台所から音と酸っぱい臭いがした。当麻は起き上がり、台所へと向かう、と
 
 「おや、目覚めましたか、とミサカは少し残念そうにあなたを見ます。しかし調理が終わってないので少し待って欲しい、とミサカはあなたにお願いします」
 
言って料理を続ける女性。彼女の名は00000号(フルチュ―ニング) 一年前、木原数多による実験に使われた最初の量産能力者(レディオノイズ)であり、その為だけに調整された天井亜雄製のミサカである。そのためか、髪の毛は腰まで届いており、身長も美琴より高く、一回り大き目の制服を着ている。

 「いや、ま、それ位なら待てるけど・・・何を作ってるんですか?」
 「疲労回復の為の野菜炒めと疲労回復の為の味噌汁です、とミサカは心もとない胸を張って教えます」
 「ちょっと待て! 昨日寝る前にクーラーボックス入れたのに何で腐ってんだよ!?」

と言って慌ててクーラーボックスを見る当麻だが、視界に入れた瞬間項垂れる。クーラーボックスはあった、フルチュ―ニングが開けた蓋もあった、ただ少し触っただけで中身が見えそうな傷が無ければ腐らずに
済んでいたが・・・因みにフルチュ―ニングは、この『上条当麻』の事情を知っている数少ない人物だったりする。なので

 「どのみち保冷剤が無いので結果は同じでは、とミサカはあなたに疑問を口にします」
 「……いや分かってるよ、所詮原作知ってても不幸である事に変わりないのは……でも避けれる不幸は避けたかったんだよ」

いまだに項垂れる当麻をフルチュ―ニングは励ます

 「何時までも落ち込んでないで、少しは前を見てください、とミサカは励ましますが、その前にあなたに伝える事が有ります、とミサカは蛙先生からの伝言を伝えます」
 「え?伝言?」

と言われて再起動する当麻。

 「『明日から三日間だけ留守にするから、今の内に君の容態と右手の様子を見たいんだけど?』との事です、とミサカはあなたがあの先生にまでフラグを立てたんじゃ無いかと危惧します」
 「それは絶対無いから安心してくれ、それよりも料理を止めてくれた方が上条さんはとても嬉しいのですが」

とお願いする当麻だが、フルチュ―ニングは知ってか知らずか、手を止めずに、

 「調理の方は後少しなので、布団でも干して待っててください、とミサカはあなたに動くように促します」

とサラリと流されてしまい落ち込む当麻だが、再び起動してベットの布団を持ち、ベランダへと向かう。

 「お空はこんなに青いのに人生お先は真っ暗闇♪」

歌って如何こうなるものでは無いが、無理に明るくなってかえって鬱になる当麻。

 「……つうか、原作では無かった夕立とか降って来ないよな...ん?」

軽く疑心暗鬼なってベランダに出た当麻だが、手摺の方に目を遣ると、白い布がはためいていた。その布には要所要所に金糸の刺繍が織り込まれており、フードと思しき布にも金糸の刺繍が織り込まれていた。さらに
布の持ち主であろう少女がいた。それらを認識した当麻はだた一言呟いた。




 「・・・やっと本編開始か・・・」



[5495] とある転生者の願い事1ー2
Name: 自爆者◆f730a957 ID:d98c521b
Date: 2010/12/26 23:17
「……やっと本編開始か……」

そう呟く当麻、その言葉は待ち焦がれた様にも、ウンザリとした様にも聞こえた。これから始まるであろう非日常に歓迎する様に、今までの日常に別れを惜しむ様にも聞こえた。目の前にいる純白の少女はまだ目覚めない。歳は当麻より一つ二つ年下という感じ。外国人らしく、肌は純白で髪の毛は白―――ではなく銀色に近い髪の毛である。かなり長いらしく、逆さまになった頭を完全に覆い隠している。おそらく腰ぐらいまで伸びてるんじゃないだろうか?と思うほどに。ピクン、と少女の綺麗な指先が不意に動いた。だらりと下がっていた首がゆらりと上がる。絹糸のような銀髪がサラリと左右に別れ、当麻の方を向いた少女の顔が長い髪の隙間から覗かれた。 少女の一つ一つの動作が、どこか神秘的な、それでいて上品であった。当麻はその光景にうろたえ、1歩づつ後ずさりし、焼きそばパンと財布を踏んづけた。
 
 (と、とにかく確認ぐらいはしないと。何時までもこのままじゃ不味い)
 
当麻は、下がりかけた足を前に置き、1歩づつ少女に近づく。と

 「は、―――――」

不意に、少女の口から声が漏れた。そばまで来た当麻は確認するように覗きこみ。

 「あー、と大丈夫か、お前なんか随分つら「腹へったー」・・・・・・あれ?」

一瞬思考が途切れた。なんか原作と違うと思いながら少女を凝視する。が


 「腹へったー」

どうやら幻聴ではないようだ。先程の光景が嘘の様に色あせた。

 「腹へったー」
 「・・・・・」

当麻は現実逃避をしているのか、眼が虚ろである。少女は無視されたと思ったのか、声を上げて言う。

 「腹減ったって言ってんだよ!!」

ガラガラと先程の光景が崩れ去った。当麻は泣きたくなったが、なんとか堪えて先程踏んだ焼きそばパンを持って、目の前の少女に差し出す、が

 「ありがと、そしていただきます」

ラップごと当麻の右手が食われた為、悲鳴と共に本編開始・・・


   とある転生者の願い事   第2話


 「まずは自己紹介をしなきゃいけないね」
 「いや、俺としてはまず右手を食った事を謝って欲しいのですが・・・」
 「あたいの名前は、インデックスって言うんだ。あ、因みにこれ偽名ね」
 「無視かよ、しかも宣言しちゃったし」
 「見ての通り教会のモンだよ、ここ重要だけどテストには出ないから。あ、それとバチカンじゃなくてイギリス清教だから」
 「もしかして先程スルーされた事根に持ってやがります?」
 「うーん、禁書目録の事だけど。あ、魔法名はDedicatus545だね」
 「もしもーし?せめてこっちの質問も聞いてくださーい」
 
当麻は何とかして会話の主導権を握りたいのか、インデックスの会話を止めようとするも、結局独走された。
 
 「それで、あたいに何か食い物をいっぱい食わしてくれると嬉しいんだけど」
 「料理でしたら直に出来るので待ってて下さい、とミサカは再度お願いします」
 
フルチュ―ニングは律儀に料理を作っているが、当麻としてはいい加減止めて欲しくて堪らない。処分するのが自分だからである。インデックスの方は、なぜかキョトンとしていた。

 「でだ、お前さんは何だってまたベランダにぶら下がってたんだ?」

一応その辺の事情を知ってはいるが、本編と違うためその辺も含めて確認する当麻。

 「別にぶら下がってた訳じゃないよ」

とインデックスは困ったように、

 「落ちたんだ。ホントは屋上から屋上へ飛び移るつもりだったけど」

と笑って言った。さも何でもないと言う様に。

 「・・・でも八階だぜ。一歩間違えれば地獄へ直行じゃねーか」
 「うん、自殺者には墓すら建ててくれないしね。でも仕方無かったんだよ。あの時はああするしか逃げ道無かったし」
 「逃げ道?」

思わず眉をひそめる当麻、インデックスは「うん」と言って


 「追われてたんだ、魔術師に」

 
台所から、カチャカチャとする音が止んだ。一年前に追われていたフルチュ―ニングには嫌な言葉だろ。とインデックスは何を思ったのか台所に向けて
 
 「ごめんね、落ちる途中で引っかかたみたい」
 
と謝罪した、あたかも自分が悪いかのように。気まずい不陰気が回りに漂おうとしていた時、不意にく~~~うと可愛らしい音が鳴った、それもインデックスの方から。
 
 「・・・ご飯」
 
インデックスは顔を伏せた為、表情が覗えない。と、そこへフルチュ―ニングが料理を持って来た。お盆には生ゴミ当然の野菜炒めと味噌汁が一人分と、肉の入った野菜炒めとコーンスープが二人分有る。フルチュ―ニングが、当麻とインデックスの間に座り、ガラステーブルの上に料理を置く。
 
 「口に合うかどうか分かりませんが、どうぞ食べてください、とミサカは自信満々に勧めます」
 
言いながら、生ゴミ当然の野菜炒めと味噌汁を当麻に、肉の入った野菜炒めとコーンスープを自分とインデックスの方におく。

 「……あの~フルチュ―ニングさん、何故に私めだけ疲労回復の為の野菜炒めと味噌汁なのでせう?」

質問する当麻にフルチュ―ニングが素っ気無く答える。
 
 「持ってきた材料が二人分しかなかったので、ミサカはこの部屋に有った物でその場凌ぎの料理を作りました、とミサカはタイミングの悪さに舌打ちしつつも、要点だけまとめます」
 「要点だけって、上条さんも人間なんですからもう少しまともな物が食べたいのですが」

愚痴を言う当麻にフルチュ―ニングはため息を吐きつつ

 「大丈夫です、とミサカは貴方の言葉を予想した上で用意したものが有ります」
 「あ…そ、そうか、さすがのフルも其処まで「どうぞ胃薬です、とミサカはいつも使う薬を貴方に出します」・・・・(ダバダバダバダバダバ)」

フルチュ―ニングの優しさ(?)に涙する当麻に、インデックスは物足りなさそうに

 「あんたが食べないならあたいが食べてもいいかい?せっかく作ったのに食べないのは勿体無いよ」
 
そう言って当麻の料理を見るインデックス、当麻はインデックスの方を見て、……見なかった事にした。
 
 (何で食べ終えてんだよ!?俺とフルのやり取りでも五分、いや三分も掛からなかった筈なのに!)
 
先程まであった料理がいつの間にか無くなっていたが、インデックスはお構い無しに当麻を見る、より正確に言えば当麻の料理に目が行っている。フルチュ―ニングは無表情のまま此方を見るだけで何も言わない。しかしその瞳は語っていた。
 

                    貴方が食べなきゃ彼女が下すだけですよ?

                    ......だったら作らないでください......
 
 
すっぱい味覚と悲しみを残しながら朝食を終えて、インデックスに顔を向ける当麻。インデックスは物足りなくビスケットをガジガジと食べていた。フルチュ―ニングは、食べ終えた食器を洗っている。
 
 「―――で、追われてるって、誰に追われてたんだ。」
 
涅槃から戻ってきた当麻は取りあえず、確認をとる事にした。

 「う~ん、何だろ?薔薇十字が黄金夜明みたいな集団だと思うけど。名前に意味を見出す人達じゃないし」
 「要は魔術結社とか」
 「……は、え、えと、アレ、そ、そう、その魔術結社に追われてたんだ」
 
何故かキョッドっていたが、当麻の質問を返すインデックス。と洗い物を済ましたフルチュ―ニングが質問する。

 「ではあなたは魔術師なのですか、とミサカは貴女に疑問を抱きます」
 「魔術師じゃ無いけど、それに近い存在かな?一応、魔力は在るにはあるけど、わ…あたい自身じゃ練れないんだ」
 
と説明するインデックス。当麻はその説明を聞いて疑問を持ったが、あえて追求する事を止めた。

 「じゃなんで追われてたんだ、見た所何も持って無い様に見えるんだが?」
 「……ううん、チャンと持ってるよ。十万三千冊の魔道書を……、奴等の目的もこれが目当てだから」
 「その魔道書と言うのは、どんな書物なのですか?とミサカは少し気になります」

と質問するフルチュ―ニング、本当に気になっているのか妙にソワソワしている。

 「えっと、エイボンの書。ソロモンの小さな鍵。ネームレス。死者の書とか、代表的なのはこういったやつかな。死霊術書『ネクロノミコン』は有名すぎて亜流、偽書が多いからアテにならないよ」
 「……あんま良いもんじゃ無さそうだな~、で、その魔道書は何処かに隠したのか?」
 「ううん。ちゃんと十万三千冊、一冊残らず持ってきてるよ」

だろうなと思いつつ、インデックスの顔を見ていると、不思議そうにこっちを見ているのに気付いた。

 「どうした?」
 「……あたいの話聞いても全然疑わないね。さっきもすんなり魔術結社って言ってたし、もしかしてこっち側(魔術)に詳しいのかい?」
 「ま、こっち側(学園都市)の一般人から見れば、俺たち能力者も化け物みたいなもんだからな。魔術があっても不思議じゃないさ」

と言って左手を見る。結局この手も、幻想殺しと一緒で解明できないでいた。

 「俺たちって、じゃ二人とも能力者なのかい。ねえねえ、二人はどんな能力が使えるんだい?」

無駄に興味津々なインデックス。フルチュ―ニングは、待ってましたと言わんばかりに話し始める。

 「ミサカの能力は、整体調整(フルチュ―ニング)と言います。とミサカは少し喜びながら説明します。と言うのも―――」
 
 
 ・・・・・・・・・本当に喜んでいるっぽい。


しばらく様子を眺めていたら、粗方言い終えたフルチュ―ニングは満足した様子でインデックスを見るが、残念ながら当の本人はテーブルに突起していた。疲れるんだよな~、フルチュ―ニングの嬉々とした時の説明って。

と、そんな事を思っていたらインデックスが俺の方を見ているのに気付いた。

 「どうしたインデックス?喉でも渇いたか?」
 「あんたはどんな能力なんだい?」
「……あ~、んとな……」

当麻は、一瞬悩んだ後左手を出し、インデックスに見せた。

 「この左手。あ、ちなみに俺のは合成着色じゃなくて天然素材なんだけど」
 「うん」
 「で、能力名は『幻想証明』、この左手で物を触ると……それが『世界』に在るものなら、核シェルター並みのビルだろうが手のひらサイズの石像だろうが、神の奇跡すら作り出せるんだ、コレ」

と言って、ヒラヒラと左手を動かす当麻、対してインデックスの表情は・・・

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「インデックスさん、そんな「何言ってんのこの人」的な表情は止めて下さい」
 
もの凄く胡散臭そうな表情で当麻を見るインデックス。

 「だってー、神様の名前も知らない人にー、神様の奇跡を作っちゃいま~す。って言われてもー」
 
言って小指で耳の穴を穿り、鼻で笑いやがるインデックス。当麻はわなわなと肩を震わせ
 「・・・・・ナメた口調ごと口を封じて構わねーか?」
 「ぼ、暴力には屈しないよ」
 
と言いつつ当麻から距離をとるインデックス。当麻は右手を前に出し腰を据えて左手を構える。フルチュ―ニングはそんな二人を見て呆れながら言う。
 
 「実際見せた方が早いのでは、とミサカは提案します。そもそもそんな大言はいても誰も信じません。とミサカはあなたの説明に幻滅します」
 
言われて落ち込む当麻、しぶしぶ左手を握り、ガラスのテーブルに乗せる、するとガラスの板が薄い光に包まれ、端から徐々に消えていき、かわりに当麻の手には四角いガラスが出来ていく。最終的にガラスの板が消え、ガラスの箱が出来上がった。
 
 「わあー、すごいすごい!もう一回、もう一回やって!!」
 
とせがむインデックスだが、当麻は苦しい表情でインデックスに告げる。

 「わ、悪いインデックス。これは日に何度も使えるって訳じゃないんだ。だから連続は無理」

言ってふと思い出す。

 「といけね。今日病院で検査するんだった」

慌ただしく荷物を用意する当麻。フルチュ―ニングはインデックスに向けて

 「貴女はどうしますか、とミサカは質問します。此処に居るならカギを預けますが。とミサカはカギを持って貴女に向けます」
 「……いいよ、あたいも出てく」

インデックスはすくっと立ち上がり、玄関へと向かう。

 「……なあ、インデック「うん、ちがうんだよ」」インデックスは振り返り
 「何時までも此処に居ると、連中此処まで来るから。二人だって部屋ごと燃やされたくないだろ?」

さらっと言うインデックスに当麻押し黙る。のろのろと玄関から出て行くインデックス、当麻は慌てて追い掛けて、ドア枠に足の小指が音速で直撃した。

 「ふぎゃ!?あ、ツウ~~~!!」

ビクンとインデックスが振り返る。足を押さえ、ゴロゴロと回る当麻のポケットからスルリと携帯電話が落ち、固い床に激突した液晶画面がビキリと嫌な音を立てた。

 「う、うううううう!不幸だ」
 「不幸と言うより、ドジなだけだよ。でも不思議だね、幻想証明があるのに不幸なんて」
 「……、どゆことでせう?」
「うん、魔術(こっち)の世界の話になるけど、神様の加護とか、運命の赤い糸とか。そういうのがあったなら、あんたの左手はそういうものを量産してると思うんだ」
 「……神様の加護はまだしも、赤い糸が量産されたら俺死ぬな」

言って立ち上がる当麻は、インデックスを見据える。

 「で、ここを出てどっか行く宛てがあるのか?魔術師がうろついてるならウチに隠れてたほうが・・・」
 「それじゃ無理、この服『歩く教会』って言うんだけど、魔力で動いているからね―――教会は神力って呼ばせたいみたいだけど、同じマナだし。要は『歩く教会』の魔力を元に、敵は探知かけてるんだよ」
 「だったら、なんでそんなの着てるんだ」
 「それでも防御力は法王級だから。・・・それに数少ない思い入れがあるし」

言って、インデックスは懐かしむ様に悲しい表情になる。そんなインデックスを見て、当麻は声をかける。

 「なあインデックス。お前がどう思ってるか分からないけど、少なくとも俺達は味方だ。だから『誰か』が追ってきてるって分かってんのにお前を外になんか放り出せない」

インデックスはきょとんとした。そして

 「・・・・・・なら、ワタシと一緒に地獄までついてきてくれる?」

にっこりと笑顔でいった。あまりにも辛そうな笑顔で、遠まわしに、それでも優しく言った。  こっちに来るなと。

 「大丈夫、とりあえず教会まで行ければ問題ないよ」
 「・・・教会ってロンドンとかが?」
 「うん、そうだよ」
 「遠いな、それじゃ匿ってもらう前に捕まっちまうだろ」
 「だから大丈夫だよ、日本にも幾つか支部があると思うし、英国式の教会を見つけるまでの勝負だから」
 「・・・・・」
 
当麻はフルチュ―ニングの方を見て、少しだけ考える。

 「わかった、なんか困った事があったら、また来て良いからな」
 「・・・うん、腹へってたらまた来るよ」
 
そんなインデックスの目の前を、避ける様に清掃ロボットが通り。

 「ひゃい!?」
 
思いっきり後ろにのげぞり、そのまま地面に倒れこみ、その拍子にフードが落ちた。
 
 「な、なんか、何か分かんないけど変なのがさり気なく登場してる……ッ!?」
 「お前が変なのを指差すな。あれはただの清掃ロボットだ」
 
言ってインデックスの手を持って、立たせる当麻。インデックスは、妙に感心して

 「……そっか。日本は技術大国って聞いたけど使い魔も機械化されてたんだ」
 「ここは学園都市だからな。こんなの街中に散らばってるよ」
 「がくえんとし?」
 「そ、東京の西地区の開発が遅れてた辺りを一気に買い取って作った『街』だよ。何十もの大学に何百もの小中高校がひしめき合ってる『学校の街』だ」

言って住人のことや建物の説明する。

 「だから外に行けば、少なくとも此処よりは探しやすいぜ」

 そっか、とインデックスは頷き、床にぶつけた頭の後ろをさすり

 「あ、あれ?頭のフードが無くなってる!?」
 「やっと気付いたのか。さっき落としたぞお前」
 「あっ、そうか! さっきの電動使い魔!」

と言って通路の角へ消えた清掃ロボットをダッシュで追い掛けて行ってしまった。

 「......ごほごほ!」

 
口を手で押さえ咳を防ぐ。離した手からは血痰がどろりとしてある。その様子を見てたフルチュ―ニングは溜息を吐いて呟く

 「あまり無理をしないで下さい、とミサカは貴方に告げます。いくら生命力が強くとも壊れたら意味がありません、とミサカは忠告します」
 「……ああ、そうだな。それより首尾は?」

当麻はクルッとフルチュ―ニングの方を向いた。手にはインデックスの落したフードが握っている。

 「これで、あの子はもう一度ここに戻ってきますね、とミサカは貴方を軽蔑しながら睨みます」
 「……別に恨んでも良いさ。原作通りならインデックスは、神裂火織に切られる。なら右手より左手の方が都合も利くし、何より切り札も増えるしな」

苦笑する当麻に、フルチュ―ニングは文句を言う。

 「そうじゃありません、とミサカは貴方にこの選択が正しいのか聞きたいのです。なぜミサカを助けに来たように、あの子を助けに行かないのか、とミサカは憤慨してるのです」
 「それは……」

言われて押し黙る当麻、少し考えて口を開く。

 「今追っても神裂火織に勝てない。ならインデックスの『歩く教会』は壊さない方が良い。それに」
 
当麻はインデックスが向かった廊下の方を向いて

 「その役は、『矢崎相馬』じゃなく『上条当麻』だよ」
 
と肩を落す。フルチュ―ニングはまだ言いたげだったが、無駄だと判断した。変わりに

 「貴方は、忘れる事を望んでいたのですね、とミサカは落胆しながら皮肉を言います」
 
皮肉を言われた『矢崎相馬』は

 「そうかもな」と短く返事をした。







[5495] とある転生者の願い事1ー3
Name: 自爆者◆f730a957 ID:acec52df
Date: 2010/12/30 00:23
「また能力を使ったね?」
 「……よく分かりましたね。見ただけで判断するなんて、これも医者の感ってヤツですが?」
 「それは君の顔中に彼女(フル君)の飼ってる猫の引掻き傷が有るからだよ。彼女は機嫌が悪いときは猫を使って君を攻撃するからね?」
 
言って鏡を差し出すカエル先生。言われて顔を映して見たが、思いっきり引掻かれたらしく、傷の無い箇所が無いほどである。

 「たく、何もあのタイミングで帰って来なくとも」
 「しかし、あまり苦しんでなさそうだね? 彼女が能力を使ったようだし、何かトラブルでも起きたかな?」
 「ベランダに女の子が居ました。後は疲労回復の為の野菜炒めを食って、ガラスの箱を作ったんです」
 「……随分奮発したね、あまり使うと彼女が泣くよ? とりあえず、検査室に行こうか」
 
言いつつカエル先生は椅子から立ち上がり、検査室に向かう様に指示した。

 「そういえば、彼女はどうしたんだい? 朝早くから君の部屋に行くと言っていたから、てっきり一緒に来るのかと思っていたよ?」
 「昨日の落雷のせいで食材がダメになったから、買出しに行ってます。だから夕方には戻ると思いますよ」
 
そうかい、と言いながら廊下を歩く二人。と

 「おっと、忘れていたよ。今日麦野君も検査があるから呼んでいたんだけど会うかい?」
 「いえ、昨日もフルマラソンやって戦闘したから。つか、会ったら会ったで何言われるか分からないし」
 「ま、会いたくないなら仕方が無いね。それじゃ話題を女性から友達に変えようか?」
 
え? と、当麻はカエル先生を見る

 「此処最近、君が来てないから神楽坂君達が寂しがっていたよ。いくら『お仕事』があるからって、見舞いに来ないのもどうかと思うよ?」
 
と、言うカエル先生にたいし、当麻はバツが悪そうに

 「すいません。最近補習やらなんやらで随分おざな「とうまくうううううううううううううううんんんんん!!」ぐぶぶう?!」
 
当麻の体が横にくの字に曲がったため、会話は中断した。



   とある転生者の願い事   第3話



 
 「で、行き成り突撃ボディーアタックをかまして、お前は何をしたかったんだ?」

現在当麻たちが居るのは、渡り廊下のすぐ手前ぐらいの場所、当麻は先程ボディーアタックをかました少女に聞く。

 「いやね。ここ最近当麻君が来ないもんだから、随分寂しい思いしたんだよ。来夢ちゃん寝てるし、透君も能力使ってここに居ないし、他の四人もリハビリで居ないからスキンシップ」
 「だからってボディーアタックをかますな。それに他の皆はお前と違って治ってないんだから、何時までも駄々をこねるな」
 
そう言う当麻の腕にしがみ付く少女の名は『虚樹真(うつきまこと)』 黄緑色っぽい短めの髪形と栗色の瞳が印象深く、方耳に耳宛をしている。
 「……当麻君冷たい。ボクのこと嫌いになったの?」
 
言って先程より強くしがみ付く少女の頭に、当麻は片手を乗せて

 「バ~カ、そんなんで嫌いになるなら話しかけたりしねーよ。ほら、同じ年なんだからそー落ち込むな」
 
とガシガシと乱暴に撫で回す、心なしか、少女の顔が嬉しそうに見える

 「それより真、今の話だけど透が能力で何処に行くって聞いてないか? 例えば何時もの公園とか第9学区に行くとか」
 「ゴミン聞いてない。一緒に遊ぼうとしたら行き成り消えて……って、大丈夫当麻君?」
 
その場に項垂れる当麻に、真が心配そうに見守る。そんな中カエル先生はやれやれといった感じに

 「ま、いいんじゃないかい?透君も久しぶりに鬼ごっこがしたいと言っていたし」
 「だからってノーヒントは勘弁してくれ、あの常時迷子。今度は何日逃げるつもりだ」
 
未だに立ち直れずに愚痴を零す当麻。その様子を見ていた真は心配そうな顔で

 「大丈夫だよ。当麻君だって見付けるのが上手いし、透君だって、そんなに遠くには行かないよ」
 「・・・・・・・・・・」

溜息を吐きながら、立ち直る当麻。その様子を見てカエル先生は

 「じゃ、そろそろ検査室に向おうか? ここで会話してると、他の患者さんに迷惑だからね」

言って当麻に指示すると、真の方に向き

 「君はどうするんだい? 今日の検査は終ったから、このまま病室に戻ってもかまわないけど?」
 
カエル先生は真にそう伝えると、真は少し考えてから

 「まだ当麻君と一緒に居るよ。いろいろ話したい事が沢山あるし」
 
そういって、真は当麻の横に移動し、抱きつく。それを見てカエル先生は

 「そうかい、なら一緒に検査室に向おうか」
 
 


 「はい、これで今日の検査は終了です。お疲れ様、麦のん。あとは服を着て待合室に待ってて下さいね~」
 「・・・・・・・・・」
 「にしても、何時見てもいい肉付きしてますね~麦のんは……無駄に贅肉ないし、胸も前回計った時より若干大きくなってるし」
 「・・・・・・・・・」
 「それに髪の手入れも確りしてるし、肌だってみずみずし~し、ファッションだって……」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・ねえ、麦のん」
 「・・・・・・・何?」
 「・・・・・・今からお嬢様ってブルゴキ!!?」

とある検査室では、そんな会話?が聞こえてきたが、直後患者が看護婦にハイキックをかまして黙らした。

 「ったく、ただでさえあいつの事で気が立ってんのに、これ以上煩わせるなこのレズ看護婦」

言って衣服に手を伸ばす麦野だが、先程撃墜された看護婦が、何事もなかったかのように不敵に笑いながら立ち上がる。

 「チッチッチ、生憎ウチは唯のレズじゃありませんよ。何せ被虐の看護婦と呼ばれるほどのM属性でフグゥ!?」
 
科白の途中でアッパーカットをかまされ、床に転がる看護婦。それを見届けてフッと息を吐く麦野は

 (ホント、何で私がこんな変態看護婦と居るのよ。昨日も結局逃げられたし、超電磁砲には切れられるし……)
 
と、心で毒づく麦野だが、看護婦にはそんなのは関係なく。

 「そんなに怒っちゃ折角の肌が台無しになっちゃうよ、麦のん。唯でさえカミやんは鈍感だから、これぞ『お姉さん』と思われるようにせんと」
 
いつの間にか復活を果たした看護婦は、麦野の背後から襲い掛かる。麦野は裏拳で迎撃をするも、看護婦には当たらず空振りしてしまい、そのまま麦野は若干大きくなった胸をわし掴みされる。

 「ほら、麦のんはまだ成長期なんだから、身長もコレもまだまだ大きく成っちゃうよ~」
 「成っちゃうよじゃな、んあ!ちょ、まっ、揉むんじゃ……





 「さて、やっと検査室に着いた訳だけど、心の準備はどうだい?」
 「……準備も何も、いままでと同じ事するのに身構えたりしませんよ」
 
検査室の前まで来た当麻達は、そんな取り止めのない会話をしていた。そんな中、真だけは検査室のほうを凝視していた。その様子を見て当麻は、真に質問する。

 「どうした真?扉なんか見て。少なくともお前の能力じゃ扉は動かないぞ」
 
と言う当麻だったが、真は首を横に振り

 「違うよ当麻君。この中で誰かが揉み合ってるみたいなんだ。なんか抵抗してる人と襲ってる人が居るんだよ」
 「何!?じゃ手遅れになる前に仲裁しねーと!!取り合えず真は離れてろ!」
 「えっ、……てあ!ま、待って!揉み合ってるってそういう意味じゃ!!」

慌てて当麻を止めようとする真だが、時すでに遅くドアノブに手を掛けた当麻

 「おい手前等!仮にも此処は病院だぞ!!そういうことは他所で……」
 
勢い良く扉を開け、けんかを仲裁しようとした当麻だったが、目の前の光景を眼にして言葉が止まる。目の前には上半身裸の麦野と、その麦野の胸を現在進行形で揉んでいる看護婦がいた。その光景を見た当麻は一瞬で顔が熱くなったのが分かり、麦野も顔が真っ赤に染まっていた。部屋の外では真の両目を覆う様に手で隠すカエル先生が、申し訳無さそうに俯向いている。気まずい不陰気が流れる中、当麻は身の危険を感じつつ、言葉を述べる。

 「・・・・・・・・・・・・えーっと、間違えまし」

言い終わる前に原子崩しの光が部屋中に溢れた。
 



 
 「く、くそ、無駄に時間をくっちまった」
 
あの後、麦野は連発して原子崩しを放し、当麻はそれを右手で打ち消す作業が3、4回行われ、その間に検査用機材に原子崩しの残滓が飛び散り、機材が使用不可能になってしまった。そのため、新しく検査用機材を用意するのに手伝わされ、設置するのに時間が掛かり、暇つぶしに他の皆の病室に顔を出したが、何故か其処でも肌と肌の触れ合いが行なわれ、神楽坂に氷と炎をぶつけられ、設置が終わり、いざ検査しようとしたら型が古いため、体に取り付けるのに時間が掛かり、その全てがやっと終ったのは三時過ぎである。あまりの不幸ぷりに泣きたくなって来た当麻である。と、不意にカバンの中にある携帯が鳴り出した。カバンから携帯を取り出し、罅の入った画面を見ると非通知となっていたが着信が有る。

 「いたいたこの野郎! ちょっと待ちなさいっ」
 
しかし、突然携帯の画面が消えてしまった。どうやら充電が消えたらしく、ためしに起動ボタンを長押しすると、画面に光が付くものの直ぐに落ちてしまう。

 「……ま、そんなに焦る必要は「ちょっと止りなさいよ!! 人を無視して歩いて行くなコラァ!!」ん?」

突然真後ろから大声で呼ばれた当麻は後ろを振り返る。其処には御坂美琴がいかにも不機嫌ですと言わんばかりに睨んでいる。

 「……あ~、どうしたビリビリ? そんな目くじら立てて。クレープ屋のおまけで貰えるゲコ太が無くなったか?」
 「っざけんな、ゲコ太は何とか手に入ったわ! それとビリビリ言うな! ちゃんと名前で呼べコラァ!!」
 
言いながら地団駄を踏む御坂に、当麻は

 「やだ」
 「なんでさ!?」
 「ビリビリのお陰で、家の電化製品が駄目になったんだ。これ位のあだ名位は我慢しろ」
 「そ、それは悪かったわね! だったら少しぐらい反撃しなさいよ。アンタ、私には何もしないし麦野にもちょっと応戦しただけて、殆んど逃げてたじゃない!」

昨夜、橋の上でのやりとりに不満を言う御坂。対して当麻は疲れた様に

 「そりゃ麦野の方が本気だったし、ビリビリのは猫の様に可愛げがあるからな。つかお前だけだぜビリビリ、麦野はまだしも暴力紳士共は文字通り切り掛かって来る。そこは感謝してるぜ。いやマジで」

何故か遠い目で感謝する当麻に、御坂は複雑そうな顔で当麻を見る。と、

 「そういやビリビリ。この学園都市で英国風の協会か何かなかったか?」
 「は?」
 
質問の意味がよく分からなかったのか聞き返す御坂。
 
「いや何学区かに宗教関係の学校が在るのは知ってるけど、ここ数年建った話も無いからいまいち判らなくてな」
 
インデックスの事を考えつつ嘘を付く当麻に、何も疑わずに宗教学校の事を教える御坂。そんな二人の側に数台の清掃ロボットがゴミなどを片付けている。

 「……と言う訳だから協会に行きたいならここ(学園都市)じゃなくて、外に行かないと入れないわよ」
 「……だよな? 俺も学園都市に来てからもそういうのは聞かないし、外の情報も規制されてるから何処に何があるのか分からないしな」
 
そう言ってカバンを持ち直す当麻に、御坂は得意そうな顔で当麻を見る。 

 「じゃありがとなビリビリ、こんな事おいそれと言えないし聞けないし散々だよ」
 「そんな事気にしないの、じゃ私は帰るから」
 
そう言って別れる二人。しかしふと、上条当麻がその場に止まる

 (あれ? 確かこの後に何かイベントがなかったか?)

原作の事を思い出し首を捻る、すると道の端に清掃ロボットが目に入りこの後の事件(アクション)がフラッシュバックする。

 「...って、この後じゃねえか!! 御坂による電磁「ってこらそこ止まれ―――――!!」うお!」

突如後から激しい電気音と共に少女の怒声が響く。その音に驚いたのか当麻はその場に尻餅をついてしまう。

 「ふふん、これで頭の回転が切りかわ―――って、えちょ!?」
 
当麻は脇目を振らず全速力でその場から逃げだす。なにせバレればこの場に居る全員に、携帯の弁償と清掃ロボットの修理費を支払わなければいけなくなるから、バレる前に逃げたのである。

 「ちょ、ちょっと、待ちなさいよアンタ!」
 
御坂も、当麻のあまりの早業のため一瞬ひるんだがすぐに当麻の後を追った。その後では清掃ロボットが警報音を発していたが、その音を聞く者はその場に居なかった。



 「......で、あの場にいた全員に弁償はしなかったものの、逃げる途中に財布をなくしたと?」
 「そんなにってか、所持金は分割して持っていたから大事には成らないけど、それでも落とした事が痛い」
 
現在、当麻達はとある空き地で休息をしていた。当麻は疲れているのかその場に座り込み、御坂はやれやれといった感じで当麻を見ている。

 「そんで、御坂はなんで此処まで追ってきたんだよ。...あ、いや何も言わなくていい。どうせ地獄の果てでも追って、白黒つけると思っていたんだろ?」
 「同然じゃない! 何のためにわざわざ逃げるアンタを追って来たと......ってちょ、ちょっとアンタ。何でそんな黒い陰を背負ってんのよ」

御坂には訳が分からないが、当麻にとっては戦いにくい相手である御坂とは戦いたくないのが本心である。

 「......一応言っておくけど、俺が真面目に戦ってその後の事って考えているのか?」
 「そんなの決まってるじゃ......」

そう言いかけて言いよどむ御坂、次第に顔色が険しくなる。

 「ま、そんな顔が出来るんなら俺から喧嘩をふらんし、わざわざ買う必要も無いしな」
 
当麻は立ち上がり御坂を見る。御坂は何も言わず顔を伏せていたが、体が少し震えていた。当麻は心で『不幸だなー』と思いながらその場を後にしよと歩き出す。

 「朝から電気製品は壊れるし、ヤサグレ魔術師は居るし、麦野から攻撃されるし、しまいはビリビリとの逃走劇ときたもんだ」
 「......ま、魔術師ってなに?」

当麻のやや自嘲じみた言葉に御坂は反応した。

 「......さ、何だろうな」

御坂の問いに、当麻は少し考えてから返答し寮へと帰る。空は夕焼けとなり、町を真っ赤に染めていた。






[5495] とある転生者の願い事1-4
Name: 自爆者◆f730a957 ID:4c197ae8
Date: 2011/04/24 09:34
『ここ最近幻想御手(レベルアッパー)と呼ばれる物が広まってるので、それを解決してください。実体は音楽ソフトのような物で聴くことにより、自身のレベルが上がるそうです。おそらく聴くことは無いと思いますが気を付けてください』

御坂に出会う前に来たメールを見た当麻は内心ため息を吐く。充電切れだった携帯電話の充電が満タンなのは、御坂による電波の余波によって自動的に充電したのである。黙って携帯を見ていたが、サッと携帯をしまい今度は実際にため息を吐く。当麻は寮の玄関で立ち止まっているが、きょろきょろと周りを見る。
 
(さすがに居ない・・・か。ま、さすがにそんなヘマはしないか)
 
なにせこの時間帯は学生達の帰省時間である。少なくとも一回は学生寮に戻る必要があるのだが、今の玄関でさえガランとしている。現在時刻は6時を過ぎたころ。なのに学生と思しき人はおろか、管理人と思しきものも居ない。いつもなら談笑している者も居なければ、座り込む者も群がる者たちも居ない。仮にいれば寂しいなと思う者さえ居ないため玄関先も中も沈黙している。
 
「やっぱりステイルの人払いの法が効いているのか?」
 
そう言うと、当麻はエレベータに向かう。・・・言う必要は無いと思うが、そんな中で当麻が居るのは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』のお陰である。人払いの法が何処までの範囲に広がっているのかは分からないが、学生寮を中心にしてる訳ではなさそうである。おそらくはこの寮から少し離れた場所で効果を発揮しているかもしれない。何処に在るかまでは判らないが、探したところで見つかるはずも無い。そんな魔法も『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の売り文句である『神の奇跡を否定』すら出来る力の前では、暖簾に腕を押すようなものである。
 
「原作を知らないと俺でも分からないだろうけど、こんな奴が居るとは奴さんは分からないだろうな」

誰に聞かせるでもなく当麻はそう呟く。それは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を持っていることなのか、自分は違う世界の人間なのかは、言葉からは分からないが、当麻にとっては重要なことなのかもしれない。

「……とりあえずは、インデックスの事に集中した方が良いな。原作とは違って歩く教会は壊れていないんだ」

言ってエレベータに乗り込む当麻はまだ気付いていない、世界の修正力(運命の選択)は朝の時点で決まっている事を・・・



   とある転生者の願い事   第4話


エレベータが当麻の部屋があるフロアーに到着する。学生はもう部屋に戻っているのか、そのフロアーにも誰も居ない。当麻は一階と同じく辺りを見渡してから、エレベータから下りる。今の時点では何もなくまだ静かであるが、当麻は原作を思い出す。

「……ここじゃないって事はまだ先の方か、本来のインデックスが倒れている場所は?」

廊下を歩きながら呟く当麻の耳に、機械音が響いてくる。よく聴けば人の声も聞えてくる。かなり焦ってるように聞えるし、罵声が混じってるようにも聞える。当麻は耳を澄まして聞き取ろうとする。

「あっちへいけ電動使い魔(アガシオン)! あっちいけってば!」

声はインデックスの様である。声が聞えるのだから神裂からは逃げられたのだろう、しかし清掃ロボットが集まってる理由は潰したはずである。そう思いながらインデックスの居る方へ向う。と、たしかに清掃ロボットが3台がなにかにぶつかってるように見える、そのぶつかってる物を見てみると、フルチュ―ニングが倒れいた。

「なんだフルチュ―ニングか、てっきり誰か着いて来たかと思ったぞ」

内心息を吐く当麻。顔は向こうを向いているので見えないが、特徴からフルチュ―ニングであることが伺える。周りには二人しかおらず、インデックスはなおも清掃ロボットと格闘している。当麻はそんな二人が微笑ましそうだったが、なぜフルチュ―ニングが倒れているのかが分からなかった。

「今朝の会話の意趣返しか何かが?」

だとしても倒れている理由にはならない。当麻は原作を思い返し考えてみれば、神裂に斬られてしまったインデックスがここまで来て力尽きたとしか思えない

(じゃあ結局何やって……)

そう思った直後に、一瞬だけ左手に痛みが走しる。その上で誰かの声が聞えたような気がした。

(お、い、待てよ待てよ。待ってくださいよ。インデックスが神裂に斬られて無いんだったら……)

もはや嫌な予感しかない中で当麻は別の可能性を探そうとしたが、清掃ロボットの隙間から赤い液体が垂れるのを見て顔を引きつる。

「フッ、フルチューニング!!」

慌てて駆け寄るが、清掃ロボットが邪魔をしているため近づきにくく半ば蹴っ飛ばして間に割り込む。

「・・・・・・・・・・」
「おいフルチューニング!俺の声が聞えるか!?」

そう言って抱きかかえる当麻は、フルチューニングの顔を見えるように向けた。顔色はそれ程悪くはなさそうだが、やはり青ざめてはいる。斬られた箇所は右の下腹部付近で傷はそれだけである。

「あ、あの……」

キッ、と睨み返してしまった当麻だが、すぐに顔を伏せる。インデックスも一瞬こわばるも、当麻が顔を伏せたので緊張をといた。

「……とりあえずインデックス。こいつが誰にやられたのか教えてくれ。もしかして、今朝お前が言っていた……」

そうインデックスに問いかける当麻だが。

「うん?僕達(魔術師)だけど?」

少々幼い声が、当麻の後で響いた。当麻は恐る恐る声のした後を向いて、誰が発したかを確認した。マントをなびかせ、タバコを吹かしながら此方に歩いてくる。身長の割りに幼さが残る顔で、赤い長髪で右目の下には、バーコードのタトゥーが彫られていた。

「わざわざアミにかかりに戻って来るとはね。ま。余計な獲物もかかってしまったようだけど」

そう言って、フルチューニングの方に顔を向け、飽きた様にインデックスに向ける。インデックスは怯えるように一歩下がる。

「うん?これまた随分と派手にやったね。神裂が斬ったって話は聞いたけど…… ま、誰が傷ついたにせよ、死に掛けにせよ回収はするけどね」

タバコの煙を吸い、タバコをインデックスに向けて

「ソレの持ってる十万三千冊の魔道書は」

吐出す

「……お前が魔術師なのは分かった。で、なんでその魔術師は関係の無い人間を巻き込んでまで、この少女を追い掛け回すんだ?」

当麻はそう問いかけ、睨みつける。一方、魔術師・ステイルは吐き捨てるように舌打ちし。

「関係あるかどうかは分からないけど、ソレから話は聞いてないのかい?『十万三千冊の魔道書』を持ってる自分は、魔術師に狙われていると」

そう言いながら近づく魔術師・ステイル。インデックスは少し後ずざる

「何も知らない彼女が、ただ目の前の凶事からソレを守ろうとして代わりに自分が犠牲になっただけの話だね」
「……犠牲……」
「そう、君にも彼女にも分からない、意味も知らない事だけど、ソレは使える連中の手に渡ると少々厄介な代物なんだ」
「……だから、こうやって手荒いやり方で保護してるのか?」
「そうさ、保護だよ」

そう自信あり気に告げる。

「それにいくら良識と良心があっても拷問と薬物には耐えられないだろうしね。そんな連中に女の子の体を預けるなんて考えたら心が痛むだろ?」
「テメェ……!」

強く奥歯を噛み締める。体の何処からか震えだす。今現状では倒さないといけない『敵』なのに、どうしてもフルチューニングの傷が気になってしまう。

「そう睨まないでくれたまえ。僕たちとて好きで騒ぎを起こしたいわけじゃないから、此処で手を打たないかい?」
「手を……打つ?」
「そう手を打つんだよ。彼女と君を見逃してあげるからその子を置いていってもらうんだよ」

魔術師・ステイルはインデックスに指を刺しそう告げる。

「……ッそんなもんNOに決まって……ッ!!」

そう言い掛けた当麻だがフルチューニングの方を見て躊躇する。傷口は深く今も血が流れている。此処でインデックスを見捨てればフルチューニングは助かるかもしれない。しかしもしステイルと戦って敗れたときは……そんな思いが当麻の頭を掻き乱す。

「どうだい?悪い話ではないと思うけどね」

魔術師・ステイルはそう催促する。あたかも君たちには関係の無いことだと言いたげに告げる。当麻は苦しそうにインデックスの方に顔を向ける。インデックスはどこか諦めたような顔をしていた。どうすればいいのか当麻は思案していたが、不意に胸を掴まれた。掴んだ相手はフルチューニングである。

「どうだい?もう決心は付いたかい?」

ステイルは煩わしそうに問いかける。

「……ああ、もう決めたぞ」
「そうかいだったら「テメェを打ん殴ってさっさととんずらこくぜ」ッ!!」

当麻はフルチューニングを離し、その場に立ち上がり魔術師・ステイルに向き直る。その言動に魔術師・ステイルは驚き、インデックスも驚愕する。

「……いいのかい?そんなことよりも彼女を病院に連れっていかないといけないんじゃないかい?」
「ああそうだな。早く医者に見せないとこのままじゃ出血多量で死ぬかもしれないな」
「そうだよ、だったら」
「だったら速くテメェを倒してからこいつを病院に連れていく!!」

当麻は魔術師・ステイルに弾丸のように体を丸め、一気に駆ける。

「……こんな所で魔法名を名乗るとはね」

魔術師・ステイルはめんどくさそうにタバコを吸い、肺に満たす。

「Fortis―――日本語では強者と言った所か。僕達の間では、魔術を使う際に名乗るんだけど、自分の名前としてではなく……」

当麻と魔術師・ステイルの距離はあと数歩だけである。にもかかわらず魔術師・ステイルは笑みを崩さない。

「殺し名として、かな?」

魔術師・ステイルは吸っていたタバコを手に持って投捨てた。

「炎よ―――」

そう呟くとオレンジの軌跡が爆ぜ、一直線に炎の剣が生み出される。当麻は炎の剣を視認し思わず立ち止まる。

「―――巨人に苦痛の贈り物を」

魔術師・ステイルは笑いながら、灼熱の炎剣を当麻に叩き付けた。それは触れた瞬間に形を失い、火山の奔流のように辺り構わず全てを爆破する。

「やりすぎたか、な?」

どこか他人事のように呟く魔術師・ステイルは、ぼりぼりと頭を掻ぐ。辺りは熱波と閃光と爆音と黒煙が吹き荒れる。目の前の光景を見ていた魔術師・ステイルは退屈したような表情で言った。

「ご苦労様、お疲れ様、残念だったね。君のそれは勇気じゃなくて蛮勇だよ」

そう目の前の光景に告げる




「その台詞はせめて死体を確認してからほざけ」





ギクリ、と。発声出来ないはずの声を聞いて魔術師・ステイルの動きが凍結する。目の前の惨劇が嘘のように、しかし呆気なく吹き飛ばされた。飴細工のように金属の手すりはひしゃげ、床や壁の塗装はめくれ、蛍光灯は高熱で溶けて滴り落ちる。そんな灼熱の地獄を何事もなかったかのように当麻は佇んでいた。

「……ビビるなよ、上条当麻……!」

当麻は臆しながらも、それでも吼えた。

「これしきの炎がなんだ。コレよりも悲惨な現実を経験したはずだろ!」

吹き飛ばされた真紅の火炎は、当麻を中心に綺麗な円を描いて取り囲む。が。

「消えろ!」

取り囲んでいた炎の一部を殴り、全ての火炎をかき消した。

「――――――、な!」

当麻の行動を魔術師・ステイルは唖然とする。自身の魔術がコレほどあっさり消えた事を信じられずにいた。そんな魔術師・ステイルを当麻は知ってかしらずか、一歩一歩前に出る。

「チッ!!」

魔術師・ステイルはもう一度灼熱の炎剣を生み出し、当麻に叩きつけるも先程と同じく吹き飛ばされ、何事もなく佇んでいた。

「!!」

魔術師・ステイルは静かに佇む当麻に、一瞬だけ畏怖した。その感情をごまかすように、再度炎剣を生み出し、叩きつける。今度は爆ぜる事なくかき消された。

「手品はもう終わりか? 魔術師!」

気付けば魔術師と当麻の間合いは零に等しい距離にいた。
「―――――世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」

魔術師・ステイルは当麻から距離をとり、祝辞を歌う。

「それは生命を育み恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ―――――ッ!!」

祝辞を歌い終えた魔術師・ステイルの体が膨れ上がり、内側から炎が酸素を吸い込む音と同時に、巨大な炎の塊が飛び出した。それはただの炎ではなく、人間のカタチをしていた。その人形の名は『魔女狩りの王(イノケンティウス)』。その意味は『必ず殺す』。必殺の意味を背負う炎の巨人は両手を広げ、砲弾のように当麻へ突き進む。

「邪魔……だ!!」

裏拳気味に右手を振り、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』を消し、体勢を抱え込んだ状態で魔術師・ステイルに突撃する。しかし最後の切り札が辺り一面に飛沫となって飛散ったにもかかわらず、魔術師・ステイルは笑っている。

「だッ、ダメだよ!そのまま突っ込んじゃッ!!」

当麻の後ろで、インデックスが騒ぐ。

「後ろに飛んで!!」
「ッチ!!」

当麻はすぐに足を止め、ステップを踏んで後ろに飛ぶ。すると当麻が立ち止まった場所に黒い飛沫が集まりだし、また人の形に戻っていく。戻った『魔女狩りの王(イノケンティウス)』はカタチを変え、両手に剣を持つような形に変る。『魔女狩りの王(イノケンティウス)』に当麻は右手を振るい消し飛ばすも、また人のカタチに戻っていく。

「―――ルーンだよ」

後にいたインデックスが告げる。

「『神秘』『秘密』を指し示す文字であり、ゲルマン民族によって二世紀から使われた魔術言語で、古代英語のルーツだよ」

インデックスはそう淡々といい、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』の解説をする。

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』の『ルーンの刻印』を消さない限りは、何度でも蘇ってくるんだよ」
「インデックス。そのルーンがある場所ってのはお前でも分かるのか?」

当麻はインデックスに『ルーンの刻印』のことを聞く。しかしインデックスは何も言わずに首を横に振る。

「残念だけど分からない。けど恐らくだけどこの建物の中にはあるはずだよ。魔術は距離が近ければ近い程準備が簡単なはずだから」
「そうか」

そう言って当麻は『魔女狩りの王(イノケンティウス)』の後にいる魔術師・ステイルの方に目を向ける。

「―――塵は塵に―――」

そう詠唱が聞えた。魔術師・ステイルは両手に灼熱の炎剣を携えていた。

「――――――吸血殺しの赤十字!」

力強い言葉と共に灼熱の炎剣が巨大なハサミのように交差して、当麻に襲い掛かる。二本の炎剣は当麻と魔術師・ステイルの間にいた『魔女狩りの王(イノケンティウス)』に激突し、一つの巨大な爆弾へと化し大爆発を引き起こした。

炎と煙が晴れてみれば、辺りは地獄だった。金属の手すりは飴細工のようにひしゃげ、床のタイルさえも接着剤のように溶け出している。壁の塗装は剥がれてコンクリートが剥き出しになっている。そんな光景の中に当麻はいなく、代わりに下の階から廊下を走る音が魔術師・ステイルに届く。

「……イノケンティウス」

ささやくと、辺りに散らばっていた炎が集まりだし、また人のカタチに戻っていき手すりを越えて足音を追う。

「……しかしま」

ステイルはそっと微笑む。インデックスの十万三千冊の知識によってルーンの弱点は突かれたがそれだけであった。

「それがどうした」

ステイルは余裕の表情で

「君には出来ないよ。この建物に刻んだルーンを完全に消すなんて、君には不可能だよ」

そう言ってインデックスの方を向く。インデックスもステイルの方を向き体が強張る。

「さて邪魔者がいなくなったところで、僕たちと一緒に付いてきてくれるかな?」

そうインデックス告げる。インデックスは観念したかのよううな垂れる。

「……せめて、私の代わりに怪我を負った彼女に最後の言葉を掛けさせて……」
「……まあ、それぐらいなら構わないよ」

そう言ってインデックスの方に近寄るステイル。インデックスはフルチュ―ニングに向けて神に祈るように手を組んでいた。

「ごめんなさい。私が貴方たちに関わったばかりにこんな大怪我を負わせてしまって、ごめんなさい……」

それは謝罪の言葉。自分の所為で彼女は大怪我を負い、今も彼はイノケンティウスに追われている。自分は逃げるだけでいい、逃げ切るだけの実力だけなら持っていた。にも拘らず二人に要らぬ災難を振りかけてしまった。インデックスは二人に関わった事を悔いていた。

「さあ、もういいかい?」

ステイルはそうインデックスに問いかけ、インデックスは祈りが終わったかのように組んでいた手を解き、ステイルの方に向おうとして足元の布を掴まれた。何事かと思い掴まれたほうを向くと、フルチュ―ニングが布を掴んでいた。いやそれだけじゃない、命があやぶい怪我を負っているはずなのに、その眼には微かに光が点っていた。

「どうしたんだいインデックス?」
「な、何でもないんだよ……!」

フルチュ―ニングが掴んでいた手を強引に離そうとして、今度は力強く握ってきた。

「だ、だめだよ!これ以上私に関わったら……!」
「やれやれ、まだ息があったんだね」

ステイルはフルチュ―ニング方を向く。フルチュ―ニングは僅かに口が動くが、声は聞えない。ステイルはややめんどくさそうに忠告する。

「君が眼を覚ましたところでどうにもならないよ。あの能力者も今じゃ頼れないし、それとも死に掛けの君が僕と戦うのかい?」
「……そうだよ私を見捨てれば、あなたは助かるんだよ……」
「       、        。」

フルチュ―ニングは僅かに口が動くだけで、声は聞えない。いい加減煩わしくなったのかステイルはやや強い口調で話す。

「いい加減にしたどうだい。そんななりじゃ僕には勝てないよ」

そう言ってインデックスの手をとり、強引に連れて行く。その拍子に力強く握っていた手が離れた。

「(……確かに、今の私では、貴方には勝て、ませんね)」

フルチュ―ニングは思う。

「(ですが、このままでは、終わりません。と私は、思います……ッ!)」

フルチュ―ニングは怪我をしたところに手を当てて、出血量を確認する。

「(何せ、彼は……)」

直後、雨のようにスプリンクラーが作動し、ステイルもインデックスも思わず天井を見上げる。

「(彼の、一度付いた火は、なかなか、消えませ、ん)」

フルチュ―ニングはそのまま、意識を手放した。

ステイルは今、頭の血管が切れるかと思った。一応、消防隊を呼ぶと面倒なのでイノケンティウスには警報装置に触れないように命令文を書いてある。となると、彼が火災報知器のボタンを押したんだろう。馬鹿馬鹿しくて笑う気も起きないが、そんな事でびしょ濡れにされたと思うと頭にくる。ステイルは壁に取り付けられた、火災報知器を忌々しげに睨む。インデックスは何が起こったのか分からないまま辺りを見渡す。

「……フム」

目的はインデックスの回収であり、彼を抹殺をするのが目的ではない。どうせ消防隊が来るまでのタイムラグで、自動追尾のイノケンティウスに抱き締められて真っ黒な炭か真っ白な灰に成っているだろう。

(・・・・・・というか、エレベーターが止まっているなんて事はないだろうね)

緊急事態にはエレベーターは停止するように作られているらしい、という話を聞いたことがある。ステイルとしてはそっちの方が憂鬱だった。ふいに背後からキンコーンと電子音が聞えた。何事かと思いエレベーターの方に視線を向けると、イノケンティウスに抱かれているはずの彼が佇んでいた。

「……よぉ、今帰るところか?」
(……なんだ?自動追尾のイノケンティウスは一体どうした?)

ステイルの頭の中でぐるぐると思考が空回りする。

「悪いなインデックス。少しルーンの方に集中してた」
「しゅ、集中してたってルーンはそんなに速くなくなる筈はないんだよ!?」
「そッそうだよ、僕のルーンは簡単には消せないし、イノケンティウスもこんな雨じゃ……」
「ば~か炎の化け物じゃなくルーンの方だよ。正直コピー用紙じゃなきゃ勝ち目があったか分からないな」

そう言って紙を数枚床に落とした。一枚一枚の紙にはそれぞれに文字が書き込まれていた。

「――――――は、あはははははははははは、イノケンティウス!!」

叫んだ瞬間、当麻の背後か―――エレベーターのドアをアメ細工のように溶かしながら炎の巨人が通路に這い出た。

「あはははは、何を言い出すかと思えば―――ははははは、コピー用紙はトイレットペーパーじゃないんだよ。たかが水に濡れた程度で、完全に溶けてしまうほど弱くはないのさ!」
「ッ!お願い!もう逃げて!!」

インデックスは逃げてと叫び、ステイルは殺せと言う。イノケンティウスは、その腕をハンマーのように当麻に目掛けて振り下ろす、が。

「邪魔だ」

イノケンティウスを見ずに右手で裏拳をかますと、炎が呆気なく霧散した。

「な!?」

その瞬間、ステイルの時間が一瞬だけ凍り付いてしまった。インデックスも驚きのあまり声を失う。復活するはずのイノケンティウスが復活しない。重油のように黒い肉片はあたりに一面に飛散ったまま、蠢くだけである。

「イ……イノケンティウス?ば……馬鹿な!僕のルーンはまだ死んでないのに……ッ!!」

そう言ってうろたえ出すステイル。インデックスも何が起きて何があったのか分からなくなっていた。確かにコピー用紙は水に濡れても破れたりはしないし、水を受け取れる程の強度がある。そう思案していたインデックスだったが、当麻が不意に指を投げ捨てたコビー用紙に刺し、インデックスは落ちていたコピー用紙を拾い紙を広げてみる。

「あ、あれ?コレって……」
「さすがに見れば分かるか。どうだ、自慢の魔術が破れた感想は」
「は、え?」

もぞもぞと動く炎の肉片が一つまた一つと消えてゆき、辺りには火の粉さえ無くなった。

「い、のけんてぃうす……『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」
「さて、と」

たった一言。当麻の言葉に魔術師は体全体を振るわせる。当麻は一歩踏み出し、また一歩踏み出した。

「い、の……けんてぃうす」

魔術師は告げる―――しかし世界は変らない。当麻の足が次第に速くなり、一気に駆け出していた。

「い、――――――灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの赤十字!」

魔術師は吼える。しかし何も起こらない。炎の巨人も灼熱の炎剣も生まれない。当麻はついに魔術師の懐にまで潜り込み、左右両手の手を握る。




その両手は何の変哲も無い、ただの異能力があるだけの、ただの両手だ。

ただ神様の奇跡を、否定し、肯定するだけの両手。

不良の一人も倒せず、テストの点も上がらず、女の子にもてる事もない、ただの両手

だけどもその両手には、感謝してもしきれないほどの恩がある。

少なくとも。



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「ヒィッ!! ガハッ!!」



目の前の魔術師を本気で打ん殴れるんだからッ!!








あとかき

......どうしよ、話の便宜上当麻を暗部に入れたけど話が練りヅライ......

感想お待ちしております。


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