機器の点検・検査

定期検査

 運転を開始した原子力発電所では、日常的に機器の点検を行うとともに、電気事業法に基づき定期的に原子炉を停止して発電所の健全性を確認しています。その内容は「定期検査」「定期事業者検査」「燃料などの消耗品の交換」「改良のための工事」の4つに大別されます。

1.定期検査

 運転中の原子力発電所では電気事業法第54条によって定期検査の実施が要求され、電気事業法施行規則第91条においては13か月を超えない時期で定期検査を実施することが定められています。54条にはただし書きがあり、使用の状況によりあらかじめ経産大臣の承認を受けた場合には13か月を超える運転が認められています。定期検査においては、プラントを構成する各機器の定期点検(機器によって点検頻度は異なる)及び、施設の信頼性向上・機能維持のために行う改造・修理工事の作業量を考慮して実施期間を定めています。

2.定期事業者検査

 これまで事業者が実施してきた自主検査が、法令上「定期事業者検査」として明文化され、検査の実施にあたっては、技術基準への適合性を確認し、結果を記録・保管することが義務づけられました。2003年10月に発足した独立行政法人「原子力安全基盤機構」が検査の実施体制などを「定期安全管理審査」という形で審査し、国はその審査結果に基づいて総合的に評定する仕組みになりました。

設備の健全性評価

 「定期事業者検査」で発見された設備のき裂(ひび割れ)等の不具合について、事業者はその進展を予測し、安全性の評価(設備の健全性評価)を行い、その結果を記録・保存・報告することが義務づけられました。

定期検査の厳格化

 定期検査では施設の健全性に関する検査結果に加え、事業者の検査プロセスの適切性についても確認を行います。さらに抜き打ち的な手法により、事業者の実施する検査の適切性や信頼性を効果的に確認します。

品質保証体制の確立

 事業者は安全に係る品質保証に関する事項を原子炉等規制法に基づく保安規定のなかで定めることが義務づけられました。さらに国は保安検査において、品質保証体制が確立され適切に機能しているかどうか、確認します。

定期安全レビューの義務化

 これまで任意で行われてきた原子力発電所等の運転経験や最新の技術的知見の反映状況等を評価する「定期安全レビュー」が原子炉等規制法に基づく保安規定に定められました。また、国は保安検査において事業者が定期安全レビューを保安規定に従って実施しているか確認します。

規制制度の運用の明確化・透明化

事故・トラブル報告基準の明確化

 これまで、事故・トラブルの報告については法律および通達により求められていましたが、法令に基づく報告基準が整備され、その報告対象範囲が明確化されました。

工事計画認可・届出対象の明確化

 国の工事計画の認可・届出を要する工事の内容について、安全確保上の重要性の観点から見直しが行われ、明確化されました。

事故・トラブルや軽微な事象を含む情報の共有化

 事故・トラブル等について、電力会社・原子力施設メーカー・大学などの研究機関、規制当局において情報の共有化を図ります。電力中央研究所にアクセスポイントとして設けた「原子力発電情報公開ライブラリー(NUCIA)」を活用していくことで、トラブルを未然に防止し効果的な安全確保対策を実施します。

罰則の強化

 技術基準適合命令違反や国の検査忌避、報告命令違反等の重大な違反事項については、法人重課(罰金刑を100倍)を導入するなど、罰則が強化されました。

 ほかにも法改正により、国は電気事業者に対し報告徴収を行った場合において、安全確保上特に必要な場合には、保守点検を行った事業者(協力企業)に対しても報告徴収を行うことができるようにしたことや、原子力安全委員会の機能の強化などが新しい制度として導入されました。