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原子力防災について

 原子力発電所では、異常が発生したときも、原子炉を「止めて」、燃料を「冷やし」、放射性物質を「閉じこめる」ことにより、安全を確保することとしています。
 そのために、原子力発電所は、多重防護の考え方を基に設計を行い、運転員や保修員の厳しい教育・訓練を行うなど、設計、建設、運転の各段階において、厳重な安全対策がとられています。このことにより、周辺に影響を及ぼすような大きな事故を未然に防ぐことが出来るものと考えておりますが、原子力発電所の防災対策は、万一、原子力による災害が発生した場合でも、その影響を最小限に抑えて、地域住民の方の安全を確保するように講じられるものです。
 ここでは、原子力発電所の防災対策についてQ&Aの形で解説しています。

原子力発電所の多重防護と防災計画


 原子力発電所は、

  1. 異常の発生を防止する
  2. 異常の拡大を防止する
  3. 事故の影響を緩和する

という多重防護の考え方による設計となっています。

 更に安全性を向上させるため、起き得ないような事故が発生した場合にも事故の拡大防止や影響の緩和をはかる対策(アクシデント・マネージメント)を実施し、万全を期しています。

 このように安全対策に万全を期しているものの、さらに防災計画を作成し、地域の皆さまの安全確保をはかるものです。

 原子力発電所では「多重防護」の考えを基本に、念には念を入れた安全対策が講じられています。加えて安全運転に万全を期するため「人間と機械の調和」に配慮し、機械面からだけでなく人間側にたった「ヒューマンファクター研究」への取り組みも行われています。

Q1.原子力防災の仕組みは、どう変わったのですか?

 JCO臨界事故を受けて、従来からの原子力防災を強化するため、新しい法律(原子力災害対策特別措置法)が制定され、新しい原子力防災体制が整備されました。(平成12年6月16日施行)
原子力発電所では、これを受けて「原子力事業者防災業務計画の作成」「原子力防災組織・管理者の設置」「放射線測定設備等の整備」などを行います。

Point 1・・・・・・
万が一事故が起こった場合、国と自治体が一体となって、迅速な初期対応ができる体制をつくること。

Point 2・・・・・・
原子力発電所立地地域などに緊急対策の拠点(オフサイトセンター)を整備すること。

Point 3・・・・・・
原子力防災において、原子力事業者の役割を明確化すること。

原子力防災に係る事業者間協力協定

 9電力会社並びに日本原子力発電、電源開発、日本原燃は、「原子力災害時の原子力事業者間協力協定」を締結し、災害時の周辺地域の環境放射線モニタリングや汚染検査等を行うための協力要員の派遣、資機材の貸与など万が一の事故の際は、電力業界全体で対応する体制を整えています。

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Q2.万が一、放射性物質が原子力発電所から外部に放出された時は、住民の安全のために電力会社は、何をするのですか?

 もし原子力発電所で放射性物質の大量放出のような異常事態が発生した場合は、電力会社はまずは事態の拡大防止に努めるとともに、速やかに、国や自治体等の関係機関に通報します。
また、国、自治体、電力会社、関係機関は一体となって、地域の方の安全を確保するための対策にあたります。

 万が一、放射性物質の大量放出のような異常事態が発生した場合に備え、国、自治体、電力会社などが一体となって迅速に対応できるように、「オフサイトセンター」が原子力発電所のある地域の近郊に設置されます。
 「オフサイトセンター」では、国・自治体等が協議し地域の方々の防護対策などが決定され、これを受けて自治体から注意事項や防護対策などの具体的な指示が住民のみなさまに出されます。

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Q3.原子力発電所で、放射性物質が放出された時には、どうやってわかるんですか?

 排気筒に電力会社が設置している放射線モニタの他、発電所の敷地境界や発電所周辺に自治体と電力会社が設置しているモニタリングポストやモニタリングステーションにより、発電所からの放射性物質の大気中への放出量の変動を連続的に把握しています。

モニタリングポスト

 原子力施設の敷地境界付近では、環境放射線を継続的に測定。

モニタリング・ステーション

 住民の居住地域の代表的な地点で環境放射線を継続的に測定。

モニタリング・カー

 放射線や放射能の測定装置を積んで、広い地域で測定。

ダスト・モニター

 大気中のチリを採取し、放射能を測定。

原子力災害が発生した場合は、緊急時モニタリングが行われます。

■緊急時モニタリングでは、

  1. 原子力施設周辺の空間放射線量率や大気中の放射性ヨウ素などの濃度の把握
  2. 放射性物質の放出により影響を受けた環境試料中の放射性物質の濃度の把握
  3. 周辺環境における予測線量の推定
  4. 周辺住民の方々が被ばくしたと考えられる線量の評価・・・・・・などが行われます。

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Q4.原子力災害が起こった時には、原子力発電所からどのような放射性物質が外部に放出されるのですか?

 原子力発電所において原子力災害が発生した際に、外部に放出される主な放射性物質としては、気体状の「放射性希ガス」や揮発性の「放射性ヨウ素」が想定されています。

種類 性質 どのように被ばくするか
放射性希ガス 大気中に気体状で放出され、農作物や地上に沈着しない。 放射性希ガスが風により大気中を移動する際、ガンマ線を放出するので、それにより身体の外部から放射線を受ける。(外部被ばく)
放射性ヨウ素 大気中に放出され、地上や物に沈着する。 大気中の放射性ヨウ素によって身体の外部から放射線を受ける(外部被ばく)並びにヨウ素を含んだ食物及び飲料水を呼吸や飲食によって身体の内部から放射線を受ける。(内部被ばく)

放射線ってどんなもの?

放射線と放射能の関係

 放射線とは、空気中を飛び回っている光のようなもので、この放射線を出す物質を放射性物質と言い、放射線を出す能力のことを放射能と言います。例えば電球に当てはめてみると、電球が放射性物質にあたり、電球から出る光が放射線ということになります。放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線、宇宙線など、いろいろ種類があり、レントゲン撮影のエックス線も放射線のひとつです。
 なお、放射線や放射性物質は、人が原子力の利用をはじめたことで初めて生まれたものではありません。放射線や放射性物質は、大地や食物、そして宇宙からと、太古の昔から私たちの身のまわりに存在しているのです。

放射線豆知識

放射線と放射能の単位

グレイ(Gy):吸収線量 放射線の量がどれだけ物質に吸収されたかをあらわす単位。
シーベルト(Sv):線量当量 放射線によってどれだけ人体に影響を与えたかをあらわす単位。
ベクレル(Bq):放射能 どれだけ放射線がでているかという放射能の強さをあらわす単位。

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Q5.外部に放出された放射性物質から、どうすれば身を守れるのですか?

 身体の外から放射線を受けることを防ぐためには、「屋内への退避」や「避難」が有効です。また、放射性物質を体内に取り込むことを防ぐためには、屋内へ退避し建物の窓を閉めたりして、放射性物質を吸い込まないようにするとともに、自治体の指示で飲食を制限されているものを避けることが重要です。

予測線量(単位:mSv) 防護対策の内容
外部全身 甲状腺
10〜50 100〜500 住民は、自宅等の屋内へ退避すること。その際、窓等を閉め、気密性に配慮する事。
ただし、施設から直接放出される中性子線又はガンマ線の放出にたいしては、現地災害対策本部の指示があった場合は、コンクリート建家に退避するか、又は避難すること。
50 以上 500 以上 住民は、指示に従いコンクリート建家に退避するか、又は避難すること

出典:原子力安全委員会「原子力施設等の防災対策について」

放射性ヨウ素による「内部被ばく」対策

  • 屋内退避(窓を閉めたり、換気扇を止めたりして気密性を保つ)
  • 飲食制限(自治体の指示で飲食を制限されているものを避ける)
  • ヨウ素剤の服用 ※等

※ヨウ素剤の服用
 ヨウ素は身体の中に取り込まれると甲状腺に集まり、一定量たまると新しく取り込まれたヨウ素は甲状腺にはとどまらず排出されます。そのため、災害が発生した場合、放射性でないヨウ素(安定ヨウ素)をあらかじめ甲状腺にためておくため、ヨウ素剤を服用することも有効です。ただし、服用にあたっては、専門家の指示に従うことが必要です。また、ヨウ素剤は自治体が配布することになっています。

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Q6.万が一被ばくしてしまったら、どうなるのですか?

 放射線の健康への影響は放射線を受けた量によります。私たちが日常受けている放射線でも、身体の中の細胞に変化が生じますが、回復能力によりすぐ元にもどり特別な障害は現れません。なお、災害発生時には緊急時モニタリングと緊急医療が行われ、受けた放射線の量の推定、それに基づく医療措置が的確にとられます。

※自然放射線の量についてはラドンによる効果(世界平均1.3ミリシーベルト程度)を除いている。

放射線の身体への影響

 放射線の影響は、放射線を受けた本人だけにでる身体的影響と子孫にでる遺伝的影響が考えられます。身体的影響は受けた放射線の量により様々な症状がでてきます。ただし、受けた放射線が100ミリシーベルト以下ならば、これまでの様々な調査・研究から臨床症状はでていません。また、いままでに人間で、放射線による遺伝的影響が発生したという事実は、詳細な調査では確認されていません。