家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の発生確認から20日で1年。この日、未曽有の災害を検証する「4月20日の口蹄疫1年を振り返るフォーラム」(口蹄疫被害者協議会主催)が、川南町のトロントロンドームで開かれ、畜産農家ら約250人が参加した。【川上珠実】
冒頭、吉松孝一会長は「経営再開した農家は49%。なぜ復興が遅れているのか。あの時の苦しみ、悲しみを再認識して防疫体制を考え直したい」とあいさつした。
第1部では、畜産システム研究所長の三谷克之輔・広島大名誉教授が家畜伝染病予防法の問題点を指摘。この中で三谷教授は「過剰な予防的殺処分が畜産関係者の生活を破壊した。遺伝子検査で陽性と確認された家畜だけを殺処分すべきだ。家伝法と防疫指針の抜本的見直しが必要」と提言した。
第2部はパネルディスカッション。吉松会長は「私は2月半ばに経営を再開したが、今の経済状態で元の頭数まで増やせるのか。台湾や韓国で口蹄疫が出る中、水際対策は大丈夫なのか。不安は多い」と語った。養豚農家の遠藤威宣(たけのり)さんも「経営再開が進まないのは、ふん尿処理のための設備投資にお金がかかるから。県の示す防疫基準に農家がどう合わせたらよいのか」などと不安を口にした。
また獣医師からは「口蹄疫は日本にはないものだと思っていたことが拡大した要因ではないか」。「初発の発表があった時に既に感染は広がっていた。第一発見者が通報しやすい環境にすべきだ」などの意見が出た。
参加した都農町の繁殖農家の男性(60)は「4月20日は牛養いとしては忘れられない日。まだ経営再開を迷っている。防疫対策について話し合う場を作ってほしい」と話した。
県庁では河野俊嗣知事が報道陣の質問に答え、「あの日から1年。高千穂で牛の競り市が県内で初めて再開した時など節目の場面を思い出す」と語った。防疫については「アジアで口蹄疫が発生しており、現在も大変な状況。新たな防疫マニュアルも作成し、万が一に向けた対策にも取り組んでいる」と力を込めた。
ただ、家畜を殺処分した1270農場のうち49%しか経営を再開していないことに触れ、「再発への不安、TPP問題、飼料高騰などいろいろな事情があってのことだろう。意欲のある農家が不安なく再開できるようサポートする」と語った。【小原擁】
毎日新聞 2011年4月21日 地方版