27話アリーナの私闘と死闘
「そ、それは本当ですの!?」
「う、ウソついてないでしょうね!?」
月曜日の朝、悠里とシャルル、一夏は廊下まで聞こえる声に目をしばたたかせた。
「なんだ?」
「さあ?」
「何かあったのか?」
「本当だってば!この噂、学園中で持ちきりなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君か色城君と交際でき-----」
「俺らがなんだって?」
「「「きゃああっ!?」」」
悠里が声をかけた途端、取り乱した悲鳴があがった。
「えっと・・・何の話だ?」
「俺たちの名前が出てたみたいだけど」
「う、うん?そうだっけ?」
「さ、さあ、どうだったかしら?」
鈴とセシリアは話を逸らそうとする。
「じゃ、じゃああたし自分のクラスに戻るから!」
「そ、そうですわね!私も席につきませんと」
二人はその場を離れ、集まっていた女子も同じように解散していった。
SIDE 箒
(な、なぜこのようなことに・・・)
箒は表情上平面を装いつつも、心の中では頭を抱えていた。
『学年別トーナメントの優勝者は色城悠里か織斑一夏と交際できる』
近頃流れている噂だ。
(そ、それは私と悠里だけの話だろうっ!なぜか一夏も含まれているし)
「・・・・・・」
(これは非常にまずい・・・と、とにかく、優勝だ。優勝さえすれば問題ない!!!)
箒は強い決意を胸に秘めていた。
SIDE OUT
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なぜこんなところで教師など!」
「やれやれ・・・」
「んお?」
悠里が一人で廊下を歩いていると、ふと曲がり角の先から声が聞こえてたので、ちょっと注意を向ける。
声からしてラウラ、千冬で間違えないだろう。
「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」
ラウラが千冬の現在の仕事についての不満や思いをぶつけているようだった。
「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」
「ほう」
「大体、この学園の生徒など教官が教えるにたる人物ではありません」
「なぜだ?」
「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。そのような程度の甘いものたちに教官が時間を割かれ----」
「-----そこまでにしておけよ、小娘」
「っ・・・!」
(相変わらずの覇気だな・・・さすがと言うべきか)
凄みのある千冬姉の声にラウラもすくんでしまったようだ。
「少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」
「わ、私は・・・」
「さて、授業が始まるな。さっさと教室に戻れよ」
「・・・・・・」
ラウラが黙ったまま早足で去っていった。
「ヒドい言われようですね、織斑先生」
悠里が姿を隠すのを止め、出てきた。
「盗み聞きか?気配を感じなかったが」
「そりゃ、気配を殺して潜んでましたから」
「この平和な時代にそんなスキルをもつお前が不思議だよ・・・」
千冬姉は呆れた表情をうかべた。
「じゃあ、俺も教室にもどります」
「おう。急げよ-----ああ、それと色城」
「はい?」
「廊下は走るな。・・・とは言わん。ばれないように走れ」
「了解。それでは」
くるりと悠里に背を向ける千冬。
悠里は教室までの道のりを忍びの如く気配を消しダッシュした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
放課後の第三アリーナ。
「「あ」」
「奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」
「奇遇ですわね。私もまったく同じですわ」
鈴のセシリアの間に火花が散る。
「ちょうどいい機会だし。この際どっとが上かはっきりさせるのも悪くないわね」
「あら、同感ですわ。この場ではっきりとさせましょう」
「では-----」
二人が対峙した時、いきなり声を遮って超音速の砲弾が飛来する。
「「!?」」
緊急回避をした後、二人は砲弾の飛んできた方向を見る。
機体名『シュヴァルツェア・レーゲン』、登録操縦者-----ラウラ・ボーデヴィッヒ。
「・・・どういうつもり?いきなりぶっ放すなんて」
「甲龍にブルー・ティアーズか。・・・ふん、データで見たときの方がまだつよそうではあったな」
「何?ああ・・・スクラップがお望みなわけね。-----セシリア、どっちが先やるかジャンケンしよ」
「ええ、そうですわね。私としてはどちらでも-----」
「はっ!ふたりばかりで来たらどうだ?下らん種馬を取り合うようなメスに、この私がまけるものか」
自分の好きな人を馬鹿にされ、完全に二人は堪忍袋の緒が切れた。
「とっとと来い」
「「上等!」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「悠里、今日も放課後訓練するんだよね?」
「ああ、一夏も大丈夫か?」
「もちろんだ。今日使えるのは、ええと-----」
「第三アリーナだ」
「「わあっ!?」」
「チャオッス、箒」
一夏、シャルルは揃って声を上げ、悠里は気にせず挨拶をした。
「・・・そんなに驚かなくても」
「お、おう。すまん」
「ごめんなさい」
「あ、いや。別に責めているわけでは・・・」
謝る一夏とシャルルを見つつ悠里は言葉を話す。
「いいから、第三アリーナに向かうぞ。」
「「「おう(ああ)(うん)」」」
四人がアリーナに向かっていると何やら慌ただしい様子が第三アリーナから伝わる。
「なんだ?」
「何かあったのかな?」
「観客席で様子を見に行くか?」
「誰かが模擬選をしてるらしいな。だがそれにしては様子が-----」
ドゴォン!
「「「「!?」」」」
突然の爆発が発生、視線を向けると・・・
「鈴!セシリア!」
鈴とセシリアがラウラと戦闘をしていた。だが鈴とセシリアのISはかなりのダメージを受けていて、アーマーの一部は完全に失われてい
る。
「あのやろっ!!」
悠里はすぐさまアリーナのバトルフィールドへと駆け出し、一夏、シャルル、箒も後に続いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「くらえっ!!」
鈴が衝撃砲『龍砲』を最大出力で放つが、ラウラは回避しようとしない。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな」
ラウラは右手を突き出しただけで衝撃砲を完全に無力化し、攻撃へと転じる。
ワイヤーで接続されたブレードが複雑な軌道を描きながら鈴の右足を捕える。
「そうそう何度もさせるものですかっ!」
セシリアが鈴の援護のための射撃を行うが、それらをかわしながら、ラウラは先刻捕まえた鈴をセシリアにぶつける。
「きゃああっ!」
空中でぶつかり一瞬姿勢を崩したふたりにラウラが突撃をしかける。その速度は弾丸並みだ。
瞬時加速-----一夏の十八番、格闘特化の技能だ。
間合いをわずか一秒で詰めたラウラは両手首に装着した袖のようなパーツから超高熱プラズマ刃を展開、鈴に切りかかる。
「このっ・・・!」
鈴も幾度となく凌いでいたが、今度は両肩、腰部左右のワイヤーブレードとあわせて六つの攻撃が迫る。
接近戦に慣れている鈴であってもそれらをすべてを捌くことは出来ない。
「くっ!」
「さあ、そろそろ止めを-----」
ラウラが言いかけた瞬間、
「離れろ・・・」
氷の如く冷たく鋭い言葉が聞こえ、ラウラはすぐさま後方に回避。刹那、今までラウラがいた場所に双剣が振り下ろされる。
「貴様・・・」
視線の先にはセイリオスに搭乗した悠里がいた。
「てめえ、よくも二人にここまでやってくれたな・・・沈める」
「ふん、貴様も所詮は有象無象のひとつでしかない」
悠里は双剣を構えラウラに突っ込んだ。
「やはり敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前ではな。-----消えろ」
そう言ってラウラは右手を突き出し、対象を任意に停止させることができる能力-----AIC(慣性停止結界)を発動させたが・・・。
「どこを狙っている?」
「なっ!?瞬時加速を連続で行うだと!?」
悠里はすぐさま瞬時加速を繰り返し、ラウラの背後に回った。
「俺は規格外だからな。じゃあ・・・喰らえよっ!!」
そして連続で双剣を使い、切りつけてそのままケリを放った。
「がっ!?」
ラウラはなんとか体制を立て直した。
「てめえには天国への片道切符をくれてやる。あまりに居心地よくて戻ってこないかもしれねえがな」
悠里は双剣を合体させ大剣レヴァンテインを振りかざす。ラウラもプラズマ刃を展開して応戦するが、大剣の衝撃を受け止められずよろけてしまう、すかさずがら空きのラウラにもう片方の腕で殴りつける。
「ぐっ・・・き、貴様などに」
「さあ、ショータイム(処刑)の始まりだ」
二人が睨み合い、動こうとした瞬間、声が響いた。
「双方、そこまで!!模擬選をやるのは構わん。-----が、アリーナを破壊する事態になられては黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「・・・教官がそう仰るなら」
「・・・構いません」
素直に頷いてラウラ、悠里はISを解除した。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。