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 だれからも文句のでない投票方式

イメージP. ダスグプタ/E. マスキン
 
 候補者から1人だけを選んで投票する方式では,多数派の意思が正しく反映されるとは限らない。しかし,ちょっとした工夫を加えれば,この問題を解決できる。
 完全な投票方式は存在しない。どんな方式にも何らかの欠陥がある。近年,フランスと米国で実施された大統領選挙ではいくつかの問題が生じた。2002年のフランス大統領選挙では,予想に反して,極右政党のルペンが上位2人の候補者で競う決選投票に進んでフランス国民を愕然とさせた。2000年の米国大統領選挙では,最も人気のあったアル・ゴアがジョージ・W・ブッシュに破れ,多くの米国民を驚かせた。
 これに対し,いわゆる「真の多数決方式」を採用すれば問題点を解決できる。この方式では,投票者はすべての候補者について選好順序を示す。これに基づいて候補者どうしを1対1で比較したとき,他の候補者をすべて打ち負かした者が当選者となる。また,他の候補者をすべて打ち負かすほどの多数の支持を得た候補者がいなかった場合は,1対1の比較で最も多くの候補者を打ち負かした者を選び,さらにその中でも最も多くの順位評点を獲得した者を当選者とすればよい。
 この方式も完全ではないが,泡沫候補が選挙戦の行方を左右するといった矛盾を避けられる。候補者をどの順で好ましいと評価するかという情報を投票に取り入れることにより,投票者の意思をより正確に反映させることができる。この方式は世界中の国々で容易に実施可能であり,その点でも重要だ。

キーワード:得票率/ボルダ方式/パレート原理/匿名性/中立性/推移性/コンドルセの逆理/価値制限性
著者  Partha Dasgupta/Eric Maskin
2人はしばしば共同で研究しており,最近ではオークション理論に関する共同研究がある。ダスグプタは英ケンブリッジ大学フランク・ラムゼイ記念経済学教授で,王立経済学会の前会長。マスキンはプリンストン高等研究所のアルバート・O・ハーシュマン記念社会科学教授で,国際計量経済学会の前会長。

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