有権者の政党不信や地方議会批判の受け皿として党勢を広げてきた首長政党の勢いに陰りが出てきた。河村たかし名古屋市長の率いる「減税日本」は、24日に投開票された衆院愛知6区補選で公認候補が落選。東日本大震災の復興ムードの中で減税政策に支持が集まらず、統一地方選では公認候補を立てた静岡、平塚(神奈川)、田原(愛知)の3市長選で全敗した。
「とりあえずは力不足」。河村市長は24日夜、愛知県春日井市の候補者事務所で、補選敗北の弁を語った。
減税日本は統一地方選後半戦で、東京都の区長・区議選などで70人を超える公認・推薦候補を立てた。愛知6区補選では、菅直人首相を批判する民主党の小沢一郎元代表のグループと連携。19日に愛知県小牧市を訪れた松木謙公前農水政務官は、政府が復興財源として増税を検討していることについて「2年前の衆院選は増税を約束して戦ったわけではない。復興増税には全く反対だ」などと述べ、政権批判を展開した。
だが、復興財源の確保が政治課題に浮上するなか、減税の訴えはかつてほど有権者の理解を得られなかった。河村市長は「日本中が増税、増税と言っている時に、減税から震災復興を進める主張を掲げたことは大きな挑戦だった」と強気の姿勢を崩さなかったが、国政参画のあり方も含め、戦略の見直しが求められそうだ。
一方、橋下徹大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」は、大阪府吹田市長選で公認候補が現職を破り初当選。前半戦の大阪府議選、大阪・堺両市議選に続いて好調を維持し、減税日本とは対照的な結果となった。
維新の会は前半戦の3選挙で、大震災の自粛ムードの中、新人候補がトップ当選を果たすなど躍進。自民からの離脱組が大半とはいえ、3議会で第1党を確保し、大阪での最大の政治勢力となった。今後は、府と両市を解体・再編する「大阪都構想」の実現に向け、3議会の他会派への働きかけを強める構え。12月に任期満了を迎える大阪市長選では、知事自らの市長選くら替え出馬も含めた「知事・大阪市長ダブル選」にも言及している。
首長政党の躍進の背景には、民主、自民など既成政党に対する有権者の不満があった。だが、河村市長が国政志向を強めて既成政党への接近を図るのに対し、橋下知事は既成政党と距離を置く構えを崩さず、路線の違いが表面化。減税日本幹部は「橋下知事は河村市長に距離を置き始めている」と漏らしており、両党の今後の連携の行方にも不透明感が増している。【福田隆、丸山進】
毎日新聞 2011年4月25日 2時30分(最終更新 4月25日 3時49分)