しかし本書では、地球温暖化によって人類(ガイアではない)が危機に瀕すると主張している。この種の終末論には疑問が多いが、地球が温暖化していることは事実である。したがってエネルギー問題を考えるときは、少なくとも次の4つの制約条件のもとで問題を解かなければならない。
- エネルギー価格
- 安全性
- 供給の安定性
- 環境への影響
この4つの条件をすべて満たす理想のエネルギーはなく、これらはトレードオフになっているので、どう優先順位をつけるかは国民の選択である。目的関数の取り方はいろいろ考えられるが、著者やビル・ゲイツのように1と4を重視する立場からは原子力が望ましいという答が出る。
著者が警告するのは、「放射能の恐怖」が極端に誇張されているということだ。チェルノブイリ事故で数十万人が癌で死亡したという人がいるが、WHOによれば死者は50人以下である。最悪の推定でも、チェルノブイリによって欧州に住む人々の寿命が2~3時間短くなる程度だが、タバコで寿命は7年短くなる。
もう一つの答は再生可能エネルギーだが、著者はこれについては否定的だ。太陽エネルギーのコストは高く不安定で、風力発電は環境を破壊する。私が著者にインタビューしたころから、再生可能エネルギーの効率はほとんど上がっていない。もちろん環境省のいうように技術的な「ポテンシャル」はあるので、技術開発を続けることは必要だが、ポテンシャルがビジネスとして実現するとは限らない。
ドイツが「脱原発」に舵を切ったと賞賛する向きがあるが、ドイツの電気料金は欧州で(原発ゼロの)イタリアに次いで高く、もっとも安いのは原発80%のフランスだ。「国際競争力が落ちる」という批判に配慮してメルケル政権は原発の延命を決めたが、福島事故でそれを撤回した。しかしドイツはフランスから電力を輸入するので、フランスの原発が増えるだけだ。
エネルギー政策は、資源の枯渇や環境問題や地政学まで含む複雑な制約条件のもとで解かなければならない連立方程式であり、「安全」とか「エコ」とか一つの条件を絶対化するのは間違いのもとだ。再生可能エネルギーの開発は必要だが、それが商業的に成功するには発送電の分離などの制度改革が不可欠だ。物理的なエネルギー効率では原子力をしのぐものはないので、多くの欠点はあるがそれを捨てるべきではない。
著者が警告するのは、「放射能の恐怖」が極端に誇張されているということだ。チェルノブイリ事故で数十万人が癌で死亡したという人がいるが、WHOによれば死者は50人以下である。最悪の推定でも、チェルノブイリによって欧州に住む人々の寿命が2~3時間短くなる程度だが、タバコで寿命は7年短くなる。
もう一つの答は再生可能エネルギーだが、著者はこれについては否定的だ。太陽エネルギーのコストは高く不安定で、風力発電は環境を破壊する。私が著者にインタビューしたころから、再生可能エネルギーの効率はほとんど上がっていない。もちろん環境省のいうように技術的な「ポテンシャル」はあるので、技術開発を続けることは必要だが、ポテンシャルがビジネスとして実現するとは限らない。
ドイツが「脱原発」に舵を切ったと賞賛する向きがあるが、ドイツの電気料金は欧州で(原発ゼロの)イタリアに次いで高く、もっとも安いのは原発80%のフランスだ。「国際競争力が落ちる」という批判に配慮してメルケル政権は原発の延命を決めたが、福島事故でそれを撤回した。しかしドイツはフランスから電力を輸入するので、フランスの原発が増えるだけだ。
エネルギー政策は、資源の枯渇や環境問題や地政学まで含む複雑な制約条件のもとで解かなければならない連立方程式であり、「安全」とか「エコ」とか一つの条件を絶対化するのは間違いのもとだ。再生可能エネルギーの開発は必要だが、それが商業的に成功するには発送電の分離などの制度改革が不可欠だ。物理的なエネルギー効率では原子力をしのぐものはないので、多くの欠点はあるがそれを捨てるべきではない。
コメント一覧
スリーマイル事故の方がチェルノブイリ事故より今回の原発事故に近い(専門家談)ということで → http://bit.ly/epymby
その他原発関係でまとめてます。 → http://bit.ly/gmvZLu
PS 今回の地震対策の有意義な情報を流せる様に心がけてます。
http://togetter.com/id/dotcom07 http://twitter.com/dotcom07 http://www.facebook.com/dotcom07
20013年に加州のBright Source社がモハビ砂漠に建設中の太陽熱発電所が完成します。140Mの高さのタワーに数千の鏡で集光、ボイラーでスティームタービンを動かし392MWの発電をするものです。米政府が1600億ドルの融資をしてGoogleが168億ドル出資します。Googleは6%のリターンが期待出来るとしています。
更に4月18日には加州にドイツの会社が建設する太陽熱発電所に米政府は2500億ドルの融資を行うことを発表しています。太陽熱発電は夏のピーク電力需要期に最大の出力を出しますので理にかなっています。技術も既存の実証済み技術の寄せ集めで実現できます。Googleは既に種々のクリーンエネルギー開発に250億ドル出資しています。日本での有望なクリーンエネルギーの商用化は電力事業の自由化が徹底しないと不可能でしょう。
電気料金で気になっていたのですが、フランスの電気料金が安い理由がいくら調べても分かりません。フランスはウランの産出国でもあり、国営の電力会社だったはずです。原発の建設コストは日本とほぼ同じだと言われています。
イタリアは慢性的な電力不足になっており、15%は国外から輸入しています。
日本では、関西電力の原発比率がかなり高く(約5割)全国一だったはずですが、電気料金が特別低くはなっていません。
米国は原子力の比率が2割なのですが、日本よりも電気料金が全国平均では低いのです。
電力自由化を行った各国では、自由化の前後では、電気料金は、むしろ高くなっています。
発電コスト、構成比と電気料金は連動しないのでしょうか?
どこかの論文か何かで見かけたのですが、発電コスト、料金の国際比較は単純にはできないという記述があったような気がしますが理由が分かりません。
訂正:
米政府融資 16億ドル
Google出資 1.68億ドル
米政府融資 25億ドル
「Googleは6%のリターンが期待できる」というのに疑問をお持ちの人もいらっしゃると思います。NPRradio
の記事Google Gives Mojave Solar Project a Boostの原文ではexpecting something like a six percent return on their investmentとなっています。これが現実的な数字かどうか根拠は示されていません。ITのみでなくEnergyの分野でもMicrosoftよりGoogleの方が有利なのではないでしょうか?
原発事故の被害(リスク)については現状では予測不能というべきではないでしょうか?
チェルノブイリ事故の被害については私は以下の理由からまったく信用していません。
1.発表した政府が末期のソビエト連邦である事。
2.たった1回のサンプルであること。
放射性物質が広範囲に飛散した原発事故の被害についてはソ連末期のたった1回の事故のサンプルしか存在しません。
ソビエト連邦の末期がどういう政体であったかは、各人の考えにまかせますが、私はまったく信用していません。
原発事故の被害のリスクについてはデータ不足で予測不能というのが現状の認識として正しいと思います。
よって現状で経済的に原発のリスク/リターンを予測する事は不可能です。
放射線被害は年月を経て出てくるものですし、通常の病気に紛れるので、わかりにくいものだと思います。
現在までのチェルノブイルと福島の事故の被害を原発のリスクとするのはあまりに無責任な意見ではないでしょうか?
タバコの害との比較などは現状ではそのサンプル数の違いからできないものだと思います。
将来のポートフォリオの一環としての原発であれば小規模な運用でデータを取り続けるのが賢明な選択でしょう。
他の国の人々には悪いですが、大規模な事故データの提供は原発を肯定する国々にまかせるべきです。
事故処理の能力がない日本が大規模にデータを提供するのはもうまっぴらです。
わからない事はわからないという勇気が必要だと思います。
もし原子力を捨てずにいく方針を目指すということであれば、まずは国民の信頼を取り戻すことからはじめる必要があります、実際に原発を運用するのは「人」であり、その人が集まってできた「組織」です、この部分をすっ飛ばして机上の空論で議論しても、導き出される結論は説得力が乏しいものになってしまうと思います。
現状、原子力は、環境問題、技術的な設計、リスクやコスト、安全性の尺度以前に、まずそれを運用する組織や人が信用されていないのです、責任の所在の曖昧さや設計ミス、対策のミスを生み出す組織の構造的な欠陥、原発利権や原発の背景にある様々な闇はもちろん、それを生み出すに至った日本の歴史的な背景まで遡って膿をだしきらなければ今後原発が支持される可能性は薄いと言わざるを得ません、原子力を捨てないエネルギー政策をとっていくために今すべきことは原子力のポテンシャルを語ることではなく、原子力が信頼され、支持されるためにはどうすればいいか?ではないでしょうか?
その辺りをきちんと片付けなければとても原子力に将来的な展望は望めません、それすらできないようであれば、現時点においてはあらゆる尺度から見た時に再生可能エネルギーのほうが完成度が高かった、ということではないでしょうか、少なくとも再生可能エネルギーは現時点で一定の支持を得、今後の開発次第ではさらに支持が拡大される可能性があるのですから。
kazukiv, poteto99 さんらの意見に一票。
加えて、今回の事故の大きな問題は「発電施設の設計」なんかではなく、事故が起こる前の合意方法にあったと思います。
つまり、安全性には限界があることを説明せずに絶対安全と言って合意を取り付けていため、今回の事故は信頼関係を回復できないまでに壊してしまったことです。
しかし、事故が起こって結果的に推進派が悪で反対派が善だったという構図も正しいのか分かりません。今にして思えば、事故が起こる前に反対派は反対することが目的のようになり、推進派はその反対派への説得をあきらめて推進していたように感じます。反対派と推進派のコミュニケーションが壊れていたまま、それが見過ごされていたとすれば反省すべきかと思います。
電気料金という点からすると、今回のように事故が起こった場合のコストがあまりにも高すぎて結局ペイしない。(少なくない人がそう思ったと思う)安全保障上、原子力技術を保有するために原発は捨てるべきではないとは思うが、少なくとも日本のような地震国で、電力の多くを原発に依存するのは拙いと思う。福島原発もさらなる爆発は運よく避けられたが、下手すると関東でも太陽が見れない状況になったことを考えると大変危うい状況だった。(余震でどうなるか分からないが)ただクリーンエネルギーも結構だが、国はまず国内規格の統一で東西間の電力融通を可能にする体制作りに本気で着手してほしい。
ヨーロッパでは電気の輸出入は頻繁に行われているようです。今までの傾向では、冬場の需要が高いときは、どちらかというと、輸入よりも輸出傾向にあると、グリーンピースの方は言っていました。反原発じゃないか、と言うかも知れませんが、双方の主張をみておくのは重要で、想定外のモノトリアムではあるが、かりにこのまま使わなくても5年以内に供給不足は解消できると言うことでした。価格も今より大幅に上がることは先ずないとのこと。本ブログは影響力があるので、決めうちではなく、ある程度多角的な情報収集をしているとは思いますが、知らない読者のために・・・英語はつたないかんじでその上逐次なのでテンポは悪いですが。
http://www.ustream.tv/recorded/13962611
いくら原発のコストが安くても、一度暴走すれば人が近づくことすら出来ないものを生理的に受け付けないのは、生物として当たり前のことではないでしょうか?
池田さんのご発言を拝見していると、膨大なデータを集め、理性的なロジックを構築することで、ご自身の「根源的で直感的な感性」を無理矢理封じ込めようとしているように感じてしまいます。
人は本来直感的に「好き」「嫌い」「安全」「危険」を決めています。
その「直感」を弱さとみて左脳優位で封じ込めようとするのは、さながらブレーキをかけながらアクセルを踏んでいるような行為ではないでしょうか。
どんなに安全でコストが安価だというデータを積まれても、私は「原発」をイメージすると心が萎縮してしまいます。
(私はそういう臆病な部分を大事に生きています)
「絶対に事故を起こさない原発」を作るのは不可能であり(これぐらいは物理、数学、哲学ですでに証明されています)、一度事故になれば、それまで削られたコストに天文学的な数字を掛け合わされた甚大な被害が出てしまうのが原発の怖さです。
結局、今ではなく未来に視点を移せば、おのずから「大変危険」になり、短いスパンでロックオンすれば「かなり安全」となります。
稼働させるだけなら「安くて安全」。
稼働させてからは、時間が経過するごとに「高くて危険」なもの…。
結局、創ってスイッチを押すまでは安くて安全!それから先は神のみぞ知るでしょ!といっているように感じます。
一度稼働したら誰も責任をとれないんだったら、もう新たに創るのはやめましょうということ。
電力が不足してもライフスタイルは個人が決めればいいのですから。