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きょうのコラム「時鐘」 2011年4月25日
数字に弱いので、原発事故の記事で時々、頭が痛くなる。20キロ圏内の放射線量は毎時100マイクロシーベルトを超えた、とあった。海に流出した汚染水の放射能は5000テラベクレルと報じられた
マイクロは100万分の1、テラは1兆倍。日々の暮らしでは無縁の単位だから、数字に実感は伴わない。加えて、微量でも立ち入り禁止となり、途方もない量が流出しても政府は慌てふためかない。あべこべのようで、訳が分からなくなる 数字に強いと、一目置かれる。田中角栄元首相もその一人で、かつて北陸での遊説でも速射砲のように数字を並べ立て、「そうでしょ、皆さん」と熱弁を振るった。今思うと、都合の良い数字を巧みに選んで聞かされたのかもしれない 使う人次第で、数字は便利な武器にも冷徹な物差しにもなる。マイクロという量の放射能で家や職場を失う人がまた増えた。新たに避難を迫られる住民の数は、万単位で膨れていく 必要な仮設住宅は約7万2000戸。完成は400戸足らず(20日現在)。数字に弱くても、事態の深刻さは痛いほど分かる。口は達者な為政者の力量も、もう十分に分かった。 |