脂質異常症

LDLコレステロールが診断基準に

●図表3 日本人の総コレステロール値分布
図表
図を拡大
 
●図表4 脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
図表
図を拡大
 
●図表5 総コレステロール値と死因(J-LIT)
図表
図を拡大

従来は、総コレステロール値220mg/dL以上が「異常」とされてきました(図表3)。しかし、心臓病などのリスクが高いのはLDLコレステロール値の高い人で、逆にHDLコレステロール値は低いと良くないことが明らかになってきました。

総コレステロール値だけではリスクを正確に把握することができないため、5年ぶりに改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、診断・管理は総コレステロール値ではなく、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、そして中性脂肪(トリグリセライド/TG)値を用いて行うべきだと変更されました。また、広く普及している「高脂血症」という名前は、低HDLコレステロール血症の場合に適当でないことから、「脂質異常症」に改められました(図表4)。

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」での変更は、近年、「日本脂質介入試験J-LIT/Japan Lipid Intervention)」や「MEGA」と呼ばれる日本でこれまでに類をみない大規模臨床介入試験の結果が発表され、脂質異常症とその治療薬のエビデンス(科学的根拠)が高くなったことが背景にあります。

高純度EPA製剤で世界初の大規模無作為化試験となったJELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)では、総計18,645例の患者を対象に、スタチン剤のみとスタチン剤とEPA製剤を併用投与した二つの群で5年間追跡調査が行われ、EPA製剤を併用投与した群で主要冠動脈疾患の発症率が低下し、EPA製剤の効果が明らかになっています。

総コレステロール値は下げれば下げるほど心筋梗塞の発症は減るとこれまで考えられていましたが、J-LITでは総死亡リスクとの関係で、総コレステロール値の低い方が相対危険度がかえって上昇するという現象や、総コレステロール値の低い群の死因に悪性腫瘍が多いことなども判明しました(図表5)。

コレステロールは高めの方が長生き!?

コレステロール値と総死亡率を追跡したさまざまな調査結果から、日本脂質栄養学会会長で富山大学和漢医薬学総合研究所の浜崎智仁教授や、大櫛陽一・東海大学医学部教授などは、「コレステロール値は低いと危険」「コレステロール値は高めの方が長生きする」という意見を発表しています。
海外では、超高齢者でコレステロール値の高い方が寿命が長いという調査も報告されています。老年学が専門の柴田博・桜美林大学大学院教授は「高齢者がコレステロール値を気にし過ぎて、卵や牛乳、魚、肉を控えてしまうのは、かえってよくない」と述べています。

記事一覧 ページ1ページ2ページ3ページ4 次のページ

ニッスイアカデミー トップにもどる
ページのトップへ戻る