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[27038] 【習作】 魔法少女試作機その他の物語 :三号機追加 (SF・オリジナル・二次短篇集) 試作一号機
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/23 20:08
「あっ♥ あっ♥ もう駄目ッッ、逝くッ♥♥ イッちゃうぅぅーーーーーー♥♥♥!!!!! 」

『敵』の嬌声と自らの血飛沫を浴びながら、彼は落下していった。
彼の脳裏に走馬灯がカラカラと巡り出す。



魔法少女試作一号機




守護竜である彼、ヴァールハイトは今日も今日とて丘の上に立つ、領主の城の中庭で惰眠を貪っていた。
最近はこの地域の住民が「王国」と反発しており、小競り合いが頻発していたが守護竜である自分が出るほどのことは未だ無かった。
だが、その日は違った。

ザワザワと兵士たちが騒ぐので鎌首をもたげて門の前の広場を覗き見る。
そこには、マントを羽織った長身の女性が二人と案内役らしい原住民が一人立っていた。
女性のうち一人は髪を短く切り揃え、両目を包帯でグルグルと覆っていた。
もう一人は包帯の女性より背が高く、背中まである髪を頭の後ろで一括りにしていた。
竜特有の優れた聴覚で聞き耳を立てる。

「ほ、本当に二人だけで……? 」

と原住民が聞くと、

「出来る。巻き込まれないように下がっていろ」

と長髪の女性が答える。

「あら、もしかして異世界の人間は信用できない? 」

包帯の女性がからかう様に問う。

「い、いえ。そのようなことは…」

「なら、見物していなさい」

原住民が下がるのと同時に二人の女性はマントを脱ぎ捨てた。
マントの下はヴァールハイトが見た事も無い服装であった。
(ヴァールハイトは知らない事であったが、それは異世界ではブレザーと呼ばれている服装であった)
二人は何かアクセサリーのようなものを懐から取り出すと、頭上高く掲げて呟いた。

「「変身」」

アクセサリーから光が溢れ出ると、兵士たちは思わず目を瞑った。
だが、ヴァールハイトだけはその優れた視力で一部始終を目撃していた。
女性たちの服が光の帯となって解け、その下の裸身が光の粒子となって分解したのだ。
同時に、アクセサリーから黒い影が飛び出てくるとこちらも黒い粒子となって分解。
光の粒子と闇の粒子が複雑に交じり合い人型を成すと、たちどころにそれが物質化。
新たな人影となって大地に舞い降りた。

それは、異様な風体の人型であった。
長髪の女性だったとおぼしき者は、顔まで含む全身がアメジストから削り出したかのような鎧で覆われている。否、関節部から僅かに内部が露呈しており、パイプや金属の骨格がそこから覗いている。あの者は鎧を纏っているのではなく、鎧そのものになったのだ!
もう一人の女性は真っ当に鎧を纏った人間となり、露出した肌も人間のものであった。ああ、だが、しかし! その眼。瞼を開いたそこには本来ある筈の眼球が無かった! 虚ろなる虚無の眼差しがゆっくりと周囲に視線を彷徨わせる。

「魔法少女No.02、山崎 京香である。突然ですまないが、この城塞には壊滅してもらう」

「魔法少女No.05、藤森 瞳よ。ねぇ京香、早く始めましょうよ」

と長髪と包帯の二人だった人物が言い放ったときには、ヴァールハイトも城の兵士たちも唖然としてしまった。
突然変身したこと。たった二人でこの城を堕とすと言ったこと。全てが彼らの理解を越えていた。
そして、次の光景を目撃した瞬間にはあまりのことに思考が停止してしまった。

「んっ♥ やっぱり追加装甲は私には合わないわ」

と盲目の女性が呟くと、頭部・腹部・大腿部・上腕部を覆っていた鎧が次々に脱落。しっとりと汗に濡れた柔肌が露になった。

「あん♥ 感じるわ、私のことをねっとりと嘗め回す視線を♪ ああ、そんなに見られると、私、んぁぁ♥ 」

「ほう、見られるとどうなるんだ、瞳? 」

「んぅ♥ 京香の意地悪ぅ。ほら見て」

盲目の女性の右手と左手にそれぞれ空間から滲み出すように武装らしきものが顕現する。
右手にはまさかりの刃に直接太い鎖が付いたような武装。左手にはなにやらカラクリのついた小型の盾が装着される。

「私のココも♥ 」

すると、鉞が蛇のように独りでにその鎌首を持ち上げた!

「アソコも♥ 」

ぶるり、と身を震わせると、その背中から棘で構成された蛇のようなものが四本這い出てきた。

と、鉞と見えた物が突然二つに割れ、獣のようにガチガチとその顎(あぎと)を咬み鳴らし始めた。
棘でできた四本の触手が激しくスピンしながらのたくりだした。

「はぁぁぁぁ♪ ほらぁ、もうこんなにエレクトしてるのぉ♥ あのむさ苦しい男どもの嫌悪と恐怖の視線を浴びると、私、私ぃ♪ 」

「まったく、どうしようもないな。瞳? 」

「あぁ、そうなのよ。私、見られるだけでこんなに感じちゃうの♥ 実際に闘って血を流すと考えちゃうだけで、あひぃ♥
あぁんもうだめ♪ 京香ぁ早く闘わせてぇ♥ 私の純粋ピュアな殺戮衝動がもう痛いくらいギンギンにエレクチオンしてたまらないのぉ♥ 焦らさないで早くらせてぇ♥♥ 」

「ふふん? よくもそこまではしたなくおねだりできるものだな? いいだろう」

アメジストの戦士の右手に機械仕掛けの槍のようなものが空間から滲み出すように収まった。
二人の鎧の各部が展開し何か筒状のものが顔を出した。
剣呑な武装を見た兵士たちがようやく我を取り戻し、剣を抜き放ち槍を振りかぶり二人に殺到する!

「闘いのゴングは鳴った。殺せ」

その時、まるで地面が爆発したかのように二人が急加速した。
地面を蹴っているのではない。鎧の各部から突き出した筒状の物から炎が噴き出し、それで加速しているのだ。ヴァールハイトは驚愕した。一体こいつらは何者なのだ?!



京香は右手に構えた機甲槍ヴュシールをメガ・ランチャー・モードに変更。魔力チャージを開始。レーザー/魔力照準波でロックオン。ヴュシールが三叉に展開、内部のエネルギー場が砲身を形成。チャージ完了。

「メガ・ランチャー発射」

ヴュシールの砲口から魔力が破壊意志そのものへと変換されて発射される。射線上にいた兵士たちがジュッと音を立てて蒸発する。閃光が閉じられた城門へと突き刺さりこれを爆砕、勢い余ったエネルギーの奔流はその内部をも焼き尽くし蹂躙し尽した。

シャァァアアァァァァアアアアァァァァァァァ!!! 」

瞳が砲撃で抉じ開けられた城門から城塞の内部へと侵入したのを確認した京香は、ヴュシールを携行サイズへと縮小させると腰にマウント。新規に小型ガンポッドとマイクロミサイル・ランチャーを召喚。
各部のスラスターを盛大に噴かすと城塞の中へ飛び込んでいった。





城塞内部は阿鼻叫喚の地獄となっていた。

「あぁぁっっっはははははははははははははあああああぁぁぁぁぁ!!!!!! 」

飛び込んできた盲目の魔法少女が巨大な鎖鉞であるガルムガンを縦横無尽に振り回すと、そのたびにプレートメイルが紙屑のように切り裂かれ兵士たちが案山子のように切り飛ばされていく。
怯えて逃げ出す兵士に対して、小型の穿孔機ドリルの連結体であるドリル・センチピードがその背後から容赦無く襲いかかり、その名に恥じず戦闘能力を喪失した兵士に巻きつき穿孔ドリルし挽肉に変えていった。

「ほらほらぁ! どうしたのよぉ私を殺して見なさいよぉ!! 剣を突き立てて槍で抉って噛み付いて引き裂いてズダスタの八つ裂きにして見せなさいよぉぉぉ!! あなたたちが私を殺せないなら…私があなたたちを殺してあげる! 抉って潰して引き裂いてズタズタにして八つ裂きにしてハラワタを撒き散らしてあげるぅ!!♥ 」

狂乱のままに鎖がジャラジャラと振るわれ抵抗するものにも降伏するものにも逃げ出すものにも等しく刃が振り下ろされる。
ドリル・センチピードがチュイィィィンと歯医者のドリルさながらの音を立てながら獲物を求めて鎌首をもたげる。



兵士が絶望の呻きを上げる。

「悪魔……」

「化物め…」

「この、人殺しめ……! 」

生き残った兵士たちの憎悪と嫌悪の篭った罵声を浴びても魔法少女は怯むどころかむしろ何か感じ入っていた。

「あぁぁ凄いぃ♪ 私への憎しみと怒りと嫌悪がビンビンに突き刺さってくるぅ♥ そんなに憎まれて蔑まれると私、わたしぃぃ♥ んほおおぉぉぉぉ♥♥ 」

その瞬間、魔法少女の姿が消えた。
否、眼にも留まらぬ高速で移動したのだ。
次の瞬間、魔法少女の立っていた場所にヴァールハイトの鋭い尾が突き刺さっていた。

「無事か?! 」

「ああ、ヴァールハイト様…」

「ヴァールハイト様が来てくれた……」

「助かった、俺たち助かったぞ! 」

頼もしい援軍の到着に生き残った兵士たちが歓声を上げる。

「皆、こいつは私が相手をする。急いで避難するのだ」

「わ、分かりました」



≪無事か? 瞳≫

≪あら京香♥ 私は無事よ。それより…あのタフガイさんの相手は私が勤めたいのだけれど♪ ≫

≪……10分以内に片を付けろ。出来るな? ≫

≪10分も楽しませてくれるなんて………京香、愛してるわ♥ ≫

≪私もだ。生き残りはこちらで片付ける≫

≪……え、ちょっと待って。今私もって…≫

≪もう切るぞ≫

≪あ、ちょっとまっ…切れちゃった。もう、京香のバカ! 鈍感! …素直クール♥ ≫



中庭にて両者は対峙していた。
ヴァールハイトは戦慄していた。敵の恐るべき残虐さに。そして決意した。このような悪辣なる者を生かしておくわけには行かない。
瞳は興奮していた。血が滾り吐息が艶かしく色を帯びる。召喚した武装が瞳の精神状態を反映して活発化する。

先手をとったのはヴァールハイト。口吻から十八番のドラゴンブレスを放射、敵を焼きつくさんとする。
対して瞳は右手のガルムガンをドラゴンブレスに向けて振り被ると魔力を注入。ガルムガンに注入された魔力が熱量に変換される。

「ギシャアアアァァァァァ!! 」

気合一閃。
振り抜かれたガルムガンがドラゴンブレスを真っ二つに引き裂くがヴァールハイトに至らない。一方ドラゴンブレスは僅かに剥き出しの瞳の肌を焼いたが、同じく致命傷には至らない。
だがその時、ドラゴンブレスの残滓を突き破って伸びてきたガルムガンがヴァールハイトに切り掛かった。

「むうっ?! 」

さっと鋭い爪で切り弾くが、ざっくりと爪の付け根を切り裂かれてしまう。
顔を上げて宙を見上げると、魔法少女がスラスターで浮遊しながらこちらを見下ろしていた。

(急上昇して転回する事で第二撃を繰り出したのか?! )

両者、しばし睨み合った後再び互いの牙と刃で激突する。



その激突の音を聞きながら生き残りの兵士たちは避難して仲間と合流しようとしていた。
だが。
爆発音と共にガラガラと前方の壁が崩れると、滑らかな円筒形の外殻カウルに包まれた3銃身ガトリング・ポッドを持った京香がぬっと現れた。

「後は貴官らが最後だ」

その言葉を証明するかのようにアメジストの装甲のあちこちには返り血が点々とこびり付いていた。
兵士たちが絶望の叫びを上げるより速くロックオン。引き金を引いた。
ヴヴヴヴヴと連続した低い重低音とともにガンポッドから銃弾の嵐が降り注ぐ。狭い廊下にひしめいていた兵士たちは避けることも出来ず文字通り将棋倒しのように次々と撃ち倒されていった。
銃声が止んだとき、そこにはズタズタに引き裂かれた死体と血の海だけが残っていた。

(瞳の方もそろそろ終わるか? )

ひょいと首を巡らせた京香は中庭へ向けて歩きだした。



「はははははははははは!! いいざまね、タフガイさん☆ 」

「グガァァァァアアアアアアァァァァァァ!!!! 」

ドリル・センチピードで仰向けになったヴァールハイトの両腕を地面に串刺しにした瞳。
そのまま何度も腹部へガルムガンを叩きつける。
絶叫と共に腹膜が切り裂かれ、血飛沫が飛び散り小腸やその他内臓がでろりとはみ出る。

「いいこと教えてあげる。ガルムガンとドリル・センチピードは私と感覚が繋がっているの♪ 」

その言葉と共に傷口へとガルムガンをさらに叩きつける。と、まるで生きているかのようにガルムガンが傷口から内部へと潜り込んでいった。
ヴァールハイトの悲鳴が1オクターブ上がる。

「ちょうど溜まってた事だし、あなたでスッキリさせてもらうわね♥ 」

残りのドリル・センチピードがヴァールハイトの口吻を抉じ開けて潜り込む。

「んひぃ♥ ドラゴンのお口しゅごいいぃぃぃ♥ ぬるぬるで舌長くて♪ んああぁぁ♥ 」

使用者である瞳が興奮するとドリル・センチピードも魔力を供給されて活性化する。回転数を上げたドリルがヴァールハイトの口腔と食道を抉り、引き裂く。

「ひゃあんんん♪ な、内臓も凄ぉおい♥ ギュッギュッって締め付けてきて、ぬるぬるなのにぷりぷりしてて♥ イっ、逝っちゃいそうぅ♥ 」

体内に潜り込んだガルムガンが蛇のようにのた打ち回り、鋭い刃で散々に柔らかい内臓を蹂躙する。

ヴァールハイトは自らの血で溺れながら、ただひたすら絶叫し続けた。

「あっ♥ あっ♥ もう駄目ッッ、逝くッ♥♥ イッちゃうぅぅーーーーーー♥♥♥!!!!! 」

絶頂の絶叫と共に体内深くまで潜り込んだガルムガンとドリル・センチピードが内側からヴァールハイトの肉体を食い破りバラバラに引き裂いた。
引き千切られたヴァールハイトの首は最後まで音無き絶叫を叫び続けていた。





「終わったか」

「あら京香。いつから見てたの? 」

「『んひぃ♥ ドラゴンのお口しゅごいいぃぃぃ♥ 』の当たりからだな」

「いやん、エッチ♪ ……ねぇ、興奮した? 」

「いや、別に」

「もう、京香のバカ! 鈍感! 」

「それほどでもない」

「ふん! 」

「さっさと還るぞ。もう1ラウンド出来るだけの体力は残っているだろう? 」

「え? それって……」

「お前の想像している通りだよ。私だって木石で出来ている訳ではない」

「きょ、京香ぁぁぁ♥ 」

「こら抱きつくな。ああここ火傷しているじゃないか」

「あひぃん♥ 舐めちゃらめぇ♪ そこ敏感なのぉ♥ 」



こうして今日も魔法少女たちは闘いを終えた。
だが、この世界から戦いが止まぬ限り魔法少女たちの闘いもまた止むことはない……





あとがき

サイバーパンクが進まずついカッとなってヤってしまった。
反省はしているが後悔はしていない。

キャラ補足
山崎 京香…女ターミネーター。でなきゃアントン・シガーかハイテク仕様ジェイソン。でも最近は少し丸くなった。
藤森 瞳…昔はドSのバーサーカーで京香を執拗に狙っていた。京香に負けてからは京香専属のドM剣奴(自称)に。



[27038] 【習作】 魔法少女試作ニ号機:前日譚 (オリジナル)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/07 20:51
これは、山崎京香が魔法少女になる一年前の出来事である。





夕日が差し込む校舎の廊下。
茜色に燃え上がる光の中で二人の女子中学生が対峙していた。

「ふふっ、すっぽかさずによく来たわね。京香」

「お前か、瞳」

「そう、私よ」

藤森 瞳は手に持っていた鞄から手を離すと中から細い鎖を取り出した。その左端には文鎮が括り付けてあり、右端には分厚い肉切り包丁が取り付けてあった。

山崎 京香も背負った竹刀袋から武装を取り出す。
二本の無骨な鉄パイプを手早くネジ回して連結させると、その先端の器具に錆びが浮いているが頑丈そうな大きな裁断鋏を取り付け、ぶんっと素振りした。



しばし睨み合う両者。



最初に動いたのは瞳。
肉切り包丁の柄を鉄板を仕込んだ上履きでガンと蹴飛ばすと、剛速球宜しく京香へと空気を裂いて殺到する。
長大な鉄パイプの石突で軽く包丁を弾くと、瞳へ向けて駆け出す京香。
きりっと唇を吊り上げた瞳が手元をクイっと捻る。
京香の後方に弾かれた包丁が、繋がれた鎖から与えられた運動エネルギーで蛇のようにのたうち跳ね踊る。
壁に当たって跳ね返った包丁が死角から京香に襲い掛かる。
風切り音で察知した京香。さらに加速。重戦車のように突撃する。
肉切り包丁が斬り付けるより早く鉄パイプの射程まで詰める気だと察した瞳。左手に文鎮を握り込む。指出しのグローブに打たれた鋲がギリギリと引き絞られて浮き上がる。

ひゅひゅひゅひゅひゅと背筋の寒くなるような音を立てて鉄パイプ先端の裁断鋏が突き込まれる。
五段突きが瞳に降り注ぐ。
瞳、左手の文鎮およびきつく締めた左半身で五段突きを受ける。
ぶずぶずぶずと水音を立てて鋏が女子中学生の未成熟な肉体に突き刺さる。
にいっと口端を吊り上げる瞳。
左半身を犠牲にして守った右手がバレエのようにしなやかに躍動し、鎖が新体操のリボンのように渦を巻いて京香と瞳に巻き付く。

「 ! 」

「捕まえた。やっと貴女を捕まえたわ、京香」

ぐいっと引かれた右手に従って鎖が京香と瞳をきつく締め上げる。
ぴったりと密着する京香と瞳。

「この距離なら”槍”は使えまい! 」

自由な左脚を使って鉄パイプを蹴り上げる瞳。蹴り上げられた勢いで天井に突き刺さる鉄パイプ。
右手の鎖をさっと動かし京香の背後から肉切り包丁を襲い掛からせる。
だんと踏み込んで角度をずらす京香。その左肩に肉切り包丁が深々と突き立つ。
そのまま鎖を引いて切り裂こうとするが。

「う、動かない?! 」

京香の締め上げられた背中の筋肉ががっちりと包丁を咥え込み放さない。
一瞬動揺した隙を突いて無防備に伸ばされた右肘をがしりと掴む京香。
そのまま握力に物を言わせて肘を握り潰しにかかる。

「くぅっ! 」

たまらず右手から鎖を放す瞳。
文鎮を握り込んだ左手で零距離から京香の肋を殴りつける。
だが、京香は眉一つ動かさず右肘を捻り続ける。

(こいつ、痛覚が無いの?! )

頭突きを喰らわせる瞳。
脳が揺さぶられ、京香の握力が緩む。
その隙に右肘を脱出させると背中にテープで貼り付けておいた大型カッターを剥がし折れない程度の長さに刃を出して京香の右乳房に突き立てた。
どすり。

「ぐふっ」

瞳が自分の腹部を見下ろして見ると、京香の人差し指の無い右手が折り畳みサバイバルナイフを握り締めて自分の臍の上ぐらいの所に突き刺していた。

「ぐぅぅぅ」

灼熱の激痛と凍り付く様な悪寒に耐えながらブラジャーごと右乳房から左脇腹まで一気に大型カッターで切り裂く。
脇腹の血管を傷付けたらしく盛大に出血する京香。
それに比例するように瞳の腹部に突き刺さったサバイバルナイフも上へと切り上げられ鳩尾まで切開されてしまった。
幸い動脈は傷つかずに済んだ。

「京香ぁぁぁ…」

「…………」

「貴女はいつもいつもぉぉ……何でよぉ…どうしてなのよぉ…」

「………………」

互いの肉体に刃を突き立てたまま膠着状態に陥った女子中学生たち。
と、おもむろに京香が瞳の右眼にがぶりと噛み付いた。
舌を伸ばして眼球と眼窩の隙間に潜り込ませると強烈なバキュームで眼球を吸引する。

「きゃあああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!! 」

突然のショックに手足をじたばたとあがく瞳。
ずぽっと眼球を吸い出した京香はごくりと瞳の右眼を飲み込むと再び右眼窩に唇を密着させて舌を伸ばし今度は瞳の脳髄をバキュームで吸い出しに掛かった。

「がぁぁぁああああぁぁぁぁ! 」

獣の様な絶叫を上げて京香に頭突きを喰らわせ振り切ると、京香の左手に噛み付く瞳。
そのまま左手の薬指と小指を喰い千切る。
左手の断面からぎざぎざの折れ砕けた骨が飛び出す。
意趣返しとばかりに京香の目の前でばりばりと噛み砕き飲み下す。
その様子を平然と眺める京香。

自分たちを縛る鎖が緩んだのを察知した少女たちが束縛を振り解きばっと距離を取る。

「よくも幼馴染にこんなマネが出来たわね! 」

残った左眼で京香を睨む瞳。

「どうせ小さい頃の約束なんて憶えていないんでしょう?! 」

脇腹と肩、左手から止めど無く出血しながらいつも通りの無表情で答える京香。

「いいや、憶えている」

「え、それならなんで……」

心底不思議そうな表情で首を傾げる京香。

「お前が私を好きだからと言って、何故私がお前の気持ちに応えなければならないんだ? 」

「きっ、京香ァァァァァァァあああああああああぁぁぁぁぁぁ!! 」

激昂して京香に殴りかかる瞳。
自然体で迎え撃つ京香。
瞳が腕を振り下ろした瞬間、すっと腰を落とした京香が瞳にカウンターを放つ。
どすり。

「あ……? 」

京香の右手が瞳の腹部の傷口に突き刺さる。
そのままみぢみぢみぢと傷口を押し開き瞳の胎内に右手を挿入する。

「がはっ」

胴体に右手を埋めたまま瞳を高々と持ち上げる京香。
瞳自身の自重で内臓が押し潰されより深々と京香の右手が胎内に突き刺さる。
そのまま右手一本で突き刺した瞳を振り回し廊下の壁や天井、窓枠にやたらめったら叩き付ける。
そのたびに瞳は人形のように振り回され血と肉片を飛び散らせる。
ぐったりした瞳を最後に一度大きくアルミサッシの窓枠が歪むほど叩きつけると、窓枠に押し付けてしげしげと眺めた。
と、その瞬間。
瞳の上履きから仕込みナイフが飛び出し京香の肺に突き刺さった。
顔を上げた京香の眼に映ったのは、自分の顔面目掛けて迫ってくる靴裏だった。

京香の顔面を蹴り付けて右手を胎内から引き抜くと、大きく吐血した瞳。
ごぼごぼと血の泡を吹きながら迫ってくる京香。
揉み合った二人はそのまま窓ガラスを突き破ると校舎の3階から真ッ逆さまに落下していった。





あとがき

ヒロインがまじで外道にしか見えない…
大問題だッ!!



[27038] 【習作】 魔法少女試作三号機:vs恐るべき子供たち編 (オリジナル)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/24 15:43
大人は子供に対して容赦しないが、子供は大人に対してさらに容赦しない。
そして、子供は子供に対して大人に対するそれ以上に容赦しない。



―――――二時間前

小学4年生から6年生くらいの子供たちが制服を着た中学生たちに無理矢理壁際へ並んで立たされている。
暴れる者は殴りつけられ大人しくなった所で壁に整列させられた。
中学生たちはSM機関Gで武装しており、小学生たちを壁際へ並ばせるとジャッと銃身を持ち上げて小学生たちへ狙いを定めた。
中学生たちのリーダーと思しき少女が後方の高校生らしき年長者に目で確認する。
こくりと頷く高校生。
中学生たちのリーダーが号令を掛ける。

「構え! 」

小学生たちがしくしくと泣き出す。

「たすけてぇぇ……」

「おかぁさぁぁん……」

「だれかぁぁ……」

カチカチカチと安全装置を解除する音が響く。

「おねがいやめてぇぇ」

「いやぁぁぁしにたくないぃぃぃ」

後方の高校生の手が持ち上げられ、さっと振り下ろされた。
号令が放たれる。

「撃て! 」

ずらりと並んだワルサーMPLからスタッカートのように軽快な銃声が迸る。
カタカタカタとボルトの前後する音に合わせて小学生たちがよろよろよたよたと手足を振り回しながら9mm弾とワルツを踊る。
大人の腰までしかない様な小さな子供たちの肉体を突き抜けたホローポイント弾が後ろのコンクリートに着弾し血と肉片と熱い鉛で前衛芸術を描く。
超音速の9mm弾ですだれの様にずたずたにされた小学生たちがぼろ雑巾のようにどちゃりと崩れ落ち、はみ出した内臓が熱い湯気を立てる。
チリンチリチリチリリンと終幕フィナーレを飾るように薬莢がコンクリートの上で踊りジュッと血溜まりを焦がす。
焼けた銃身の冷える微かなシューーという音と共に死の静寂が廃ビルの一角にたちこめた。


ざっと銃を下ろし整列した中学生たち。
その時、ぶう゛う゛う゛と携帯の着信音が低く響いた。
そっと携帯を取り出し耳に当てる高校生。
そのまま携帯の向こうの相手からの報告に耳を傾ける。
しばしのち、取り出したときと同じくそっと携帯を仕舞うと、鈴を転がすような可憐な声で中学生たちに語りかけた。

「出撃よ」





あとがき

4/23 15:00
続きは今夜up予定



[27038] 【習作】 サイバーパンク番外編 (vsリリカルなのは)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/08 07:16
##-クロスオーバーは蹂躙だとのご指摘があったので、板を分けさせていただきました。
不快に思われた皆様。大変申し訳ありませんでした。

#-以前とあるスレで「アルカンシェル最強! 」「アルカンシェル最強! 」としつこかった事があったので、ついカッとなってやってしまいました。そろそろ本気で反省するべきかもしれない。
(注 : ここの管理局は話の都合上少し改変してあります。こうしなければ話が進まなかったとは言え、不快に思われたら申し訳ありません)



vsリリなの編



もしかすると、あり得たかもしれない遥かなる未来……

そう、これもまた「人類」と言う概念を立体的に浮かび上がらせるために必要な選択肢。



「提督! 大質量物体が転移してきます! 」

「なにぃ! 」

時空管理局第3艦隊旗艦「クシュリナダ」にて驚愕の叫び声が上がった。

「奴らも次元航行船を所持していたのか?! 」

「はい、いいえ、お待ちください…………ち、違いますッ。生体反応確認! あれは生物です! 」

「なんだとぉぉお?! 」

「そんな馬鹿な! 」

「何かの間違いだッ。確認しなおせ! 」





強襲空母型航宙生物【レギオン群なす者級Ver.73-D5】はその400mにも達する巨体をギャリギャリと転移ゲートから引っこ抜いた。
転移ゲートが次々と開き、【レギオン群なす者級Ver.73-D5】が、機動砲艦型航宙生物【モス・バトラ雷焔の黒蛾級B-6型】が、突撃殲滅戦艦型航宙生物【ゼクトール・デストロイヤー角兜の剣皇級0079/96】がその威容を現す。
最終的にその総数は3000匹近くに達した。
数千、数万の人造ドラゴン【Mk-609】がその周囲を羽虫のように飛び回る。
羽虫と言っても、一人一人が40mから60mはあるが。

≪こちら人造ドラゴン/フラグシップ、ネオ・ドラゴン。Mk-609全機に告ぐ。P事象N正常化フィールドを戦闘宙域に展開せよ≫

≪こちら先遣艦隊旗艦【ホワイト白きバング破烈のドール人形】。時空管理局へ勧告を行う。各電子戦機は全帯域にて発信せよ≫



≪こちらは汎多重地球連邦加盟知性集団、【営巣ハイヴ連結体ネクサス】。貴文明は違法な魔力エネルギーを用いた文明を連邦の許可無く発展進歩させている。これは連邦法に於ける重罪である。直ちに魔力エネルギー及び魔導テクノロジーを破棄せよ。繰り返す、貴文明は違法な魔力エネルギーを用いた文明を連邦の許可無く発展進歩させている。これは連邦法に………≫





「提督! 」

「分かっておる! 戯けおってぇぇ……!! 返信! 」

「了解! 」



「こちらは時空管理局である。貴世界は危険な質量兵器を所持している。これは次元世界法に於いては極めて違法であり厳罰に処せられる。直ちに質量兵器を放棄し時空管理局の管理下に入れ。繰り返す、貴世界は危険な質量兵器を所持している。これは次元世界法に於いては………」





≪予想通りとは言え、遣る瀬無い≫

≪魔法使いは皆、敵だ。あの保守派どもを排除しなければ、改革派である我々拡張オーグテット人類ヒューマンに未来は無い≫

≪侵略の手先としていい様に使われている気もするがな……≫



≪基幹艦隊へ通達。交渉は決裂。艦隊決戦要請≫





「転移反応確認! 」

「奴らまだ増援が?! 」

「違いますッ。せ、戦艦ではありません! 全長50000m?! 」

「なにぃぃ?! 」



次元を押し割り円筒形の巨大な物体が莫大なエネルギーを浪費しつつ転移してきた。
その数93!!



「あ、あれはシリンダー型スペースコロニーですッ」

「違います! 高エネルギー反応検出。装甲、武装を確認。あれは、アサルト戦闘要塞化コロニー群巣とでも称すべきものです! 」

「馬鹿な! 聖王のゆりかごより巨大な戦闘兵器だと言うのか?! 」

「全艦隊へ通達! アルカンシェル発射準備! 」

「提督?! 」

「うろたえるな! 見掛け倒しだ、アルカンシェルで時空の果てへ吹き飛ばせ! 」





GooooooooooooOOOOOOOOOOOOooooooooooooooOOOOOOOOOOOooooooooooooooooo

時空域に不気味な重低音の波動ウェーヴが響き渡る。
その波動ウェーヴは木霊し幾重にもさざ鳴り宙域に響いて行く。

ネオ・ドラゴン。戦闘宙域のP事象N正常化フィールド強度が安定しません≫

≪仕方無い。あの御方・・・・が来られる前にけりを付けよう。Mk-609第1~第112大隊に通達。合体せよ! ≫



藪蚊のように艦隊の隙間を飛び回っていたMk-609人造ドラゴンたちが艦隊前方に集結し始める。
やがてそれらはある一つの形を取り始めた。

≪集結! 集結! 集結! ≫

変形トランスフォーム! ≫

Mk-609たちの肉体がギヂギヂと変形し出す。
パズルのピースのように変形した人造ドラゴンたちが次々と連結。各々がある種のパーツとなって一つの生命体へと変貌していく。
やがて、中心にエネルギーコアが形成され脈動を始める。
エネルギーラインが縦横に奔り、咆哮を上げる。
ここに一人のドラゴン、否、一つの生命体を一つの細胞とした全長150000mにも及ぶ超マクロサイズの巨大生命体が誕生した。

合体チェンジ! トゥルース・ドラゴン・Mk-609!! ≫



トゥルース・ドラゴンがその膨大な出力を用いてP事象N正常化フィールドを安定させていく。

≪頃合や良し。トゥルース・ドラゴン、全アサルト戦闘要塞化コロニー群巣。空間無効化フィールドサプレッサー、時間整流フィールドレクティフィケーターを展開せよ≫





「ててて、提督ぅ! 大変ですぅ! 」

オペレーターが動転して口ごもりながら報告を上げる。
眼前の光景に自らの常識を破壊され、反射的にヒステリックに返す提督。

「今度は何だッ?! 」

「しゅ、周辺宙域から魔力素が消失していきますぅ! 」

「………………………………何? 」



『こちらL級次元航行艦77号「アレサ」! 魔導炉心が不調、今にも止まりそうだ! 』

『こちらL級次元航行艦63号「シェスタ」! 艦内から魔力素消失! デバイス、艦内機器共にコントロール不能! 指示を、指示を願います! 』



艦隊の周辺に陣取っている艦から次々と悲鳴のような報告が上がってくる。

「バカな……AMF対策は全艦に施されているのだぞ、一体…」



彼らは知る由も無かったが、P事象N正常化フィールドとは物理法則の異常を正常に戻すフィールド。故に魔力結合を分解するAMFと違って、不自然である魔力素を消滅させて空間を自然な状態に戻しているのだ。



「こちらは旗艦「クシュリナダ」である! アルカンシェル発射可能な艦船は直ちに全艦とも「クシュリナダ」と発射タイミングを同期、アルカンシェルを一斉砲撃せよ!! 」

「提督! 艦船の2割が戦闘不能に陥りました、後退させるべきです! 」

「黙れ! こうしている間にも次々と船が脱落して行っている! 戦闘可能な船が残っている内に敵を叩くのだ! 」

「提督ッ! 転移反応が?! 」

「ぬぅッ! 」




脈打つ赤黒いオーラを発しながら、巨大な、何か途方も無く巨大な何か・・がゆっくりと転移してきた。

≪早過ぎる。もう来られたのか?! ≫

アサルト戦闘要塞化コロニー群巣各群は位置を空けろ! 親王殿下の御前ぞ! ≫



営巣ハイヴ連結体ネクサス】が第170代女王の姉、レメラニク親王の旗艦。
難攻不落
強大無比
絶対暴力
戦闘惑星ダハク・ゾマ要塞フォートレス形態モードが7機の近衛アサルト戦闘要塞化コロニー群巣群を引き連れて戦闘宙域に降臨した。



≪親王殿下! 何故殿下がここに?! ≫

≪何、戦闘惑星ダハク・ゾマが退屈しておってな。折り良く暴れられそうな戦場いくさばを見つけたから乗り込んで来ただけのことよ。のう? ≫

≪…はッ! 了解いたしました! 全艦隊に通達! 至急戦闘惑星ダハク・ゾマの射線を空けよ! これは最優先命令である!! ≫

≪ふふ、命が惜しければ、我が戦闘惑星ダハク・ゾマと敵との間には立たぬ事だ……≫





「な、な、何だあれはぁッ?!! 」

「信じられませんッ。少なくとも質量センサーはアレが同サイズの惑星の2倍から3倍の質量を持っていると計測しています! 」

「ハッタリだ! 幻術魔法に決まっている! あんなものが存在する筈が無い!! 」

「提督! 残存艦隊128隻のアルカンシェル発射タイミング同期しました! 」

「良し! セーフティ解除! 」

「セーフティ解除! 」

「セーフティ解除! 」

アルカンシェルの発射キーが箱状の火器管制機構ファイアリングロックシステムに差し込まれる。
さっと紅く染まっていく火器管制機構ファイアリングロックシステム
ほぼ同時に残存艦隊全てで同じ動作が行われ、未だに作動している制御機器、デバイスがタイミングを同期させていく。

「発射準備完了! 」

「発射準備完了! 」

「アルカンシェル、発射ぁッ!! 」





≪敵艦隊、相転移砲斉射! ≫

≪ハハ。さて、どうするかね? ≫

≪こういたします、殿下≫



時空管理局最大火力であるアルカンシェルがその名の由来通り虹色に光り輝きながら、時空管理局残存艦隊の夢と希望をのせて【営巣ハイヴ連結体ネクサス】へ迫る。

だが、しかし。

ああ、なんということか。

トゥルース・ドラゴン、アサルト戦闘要塞化コロニー群巣群が予め展開して置いた空間無効化フィールドサプレッサーによってまず空間歪曲が封じられ。
時間整流フィールドレクティフィケーターが相転移反応を掻き乱し引き裂き。
最後にトゥルース・ドラゴンの暴力的なまでのP事象N正常化フィールドがアルカンシェルを構成していた魔力を消滅させた。

結果、128発のアルカンシェルはその名の通り、時空域に盛大かつ華麗に虹を咲かせただけに終わった。



≪ほほ、何と美しい華か。良い物を魅せて貰った。これはお返しをしなければいかんのぅ≫

≪…? ………!! 戦闘惑星ダハク・ゾマ砲撃ジェノサイド形態モード変形トランスフォーム?! 全艦対ショック防御! ≫

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

Vovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovo

戦闘惑星ダハク・ゾマが電子の叫びを上げながら変形トランスフォーム。惑星コアが露出。ハイパー大規模メガ量子クァンタム時間子タキオン機関エンジンが惑星コア直接ダイレクト接続リンク。装甲化地殻プレートが捲れ上がり展開。灼熱のマントルが合成ダークマターと共に噴出し砲身を形成。

Xyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy

形容し難き轟音で空間をつんざきながら砲身がライフリング開始。エネルギー充填。あまりのエネルギー圧力に戦闘惑星ダハク・ゾマ周辺の時間流が歪み始める。

≪エネルギー充填率67%で御座います。殿下≫

≪ふむん。まぁ今回はこのようなもので良かろう≫

≪では? ≫

≪うむ。戦闘惑星ダハク・ゾマ砲撃ジェノサイド形態モード、撃てェ! ≫

ハイパー大規模メガ量子クァンタム時間子タキオン機関エンジンと直結した惑星コアが充填した全エネルギーを開放。
マグマとダークマターの砲身が雷光を走らせながら灼熱。閃光と共に砲口から凄まじいまでの破壊的エネルギーが発射された。



宙を駆ける閃光。
切り裂かれる時間。
それは、次元そのものを破壊しながら突き進むエネルギーの奔流。



時空管理局残存艦隊は最初空間歪曲場で防御しようとし、次に回避しようとした。
だが、破壊エネルギーは防御も回避も許さぬほどの破滅を艦隊にもたらした。
描写するほどのことは起こらなかった。何も。光に飲み込まれた艦隊は灼き尽され破壊し尽くされ、完全なる無、0次元へと消滅していった。

後に、この攻防戦で生き残ったのは、たまたま直前になって故障して後方の次元世界で修理を受けていた数隻だけだと正式に判明した。





≪ふ、口ほどにも無い≫

≪それは酷と言うもので御座いましょう。この戦闘惑星ダハク・ゾマに並び得るのは、かの時空管理局本局だけかと≫

≪ハハハハハハハ。ならば早く時空管理局本局とこの戦闘惑星ダハク・ゾマをぶつけて見ねばならぬなぁ。今から楽しみで仕方無いわ! ≫

≪ははッ。仰せのままに≫





あとがき

ネタに詰まってパロディに走るのはマズいと思いつつ筆が止まらない今日この頃。
お眼汚し申し訳ありませんでした。

……ダハクとゾーマって分かる人いるのかな?





追伸

うーむ、管理局艦隊が弱過ぎる気がする。
本当は原作で不憫な最後を遂げたレギオン、バトラ、ゼクトールが1/4マクロスばりに大活躍したり。
ホワイト・ドール×バング・ドールで"白き破烈の人形"だったり。
アサルト・コロニー93基がコロニー・レーザーに変形したり。
真ドラゴンと新ドラゴンでダブル・シャインスパークしたり。
戦闘惑星がダハクっぽいアサルトモードに変形したり、ドゥーズミーユのようなバスターモードに変形したり。
色々したかったのに、魔力とアルカンシェル封じただけで片がついてしまった。
幾らなんでも弱すぎだろjk........



[27038] 【習作】 サイバーパンク番外編 (vsネギま)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/07 19:43
特異点。

様々な意味があるが、ここでは確率的なものを意味する。

結局の所、タイミングが悪かった。ただそれだけに尽きるのだ。



麻帆良上空。
午後11時。

ある一人の魔法生徒が欠伸を噛み殺しながら巡回飛行していた。

「うぅー、さぶさぶ。今日は”闇の福音”が出張っているんだよなー。くわばらくわばら」

(もっとも、高畑先生と新入りの魔法先生もいるから心配は要らないと思うけど。それにしてもあの新入り、いきなりネギ先生の副担任に抜擢って、学園長は何を考えているのかしら………)

まだ彼女は知らなかった。この直ぐ後に、あのようなことが起こるなど……





営巣ハイヴ連結体ネクサス、第4無限追撃艦隊所属特務艦「ブラッディ血塗られたショルダー右肩
午後11時。

無限追撃艦隊とは、営巣ハイヴ連結体ネクサス外に逃亡した犯罪者、暴走兵器、魔法使いなどを無期限無制限に追撃して撃滅することを目的として結成された特務艦隊である。
が、国外に逃亡した標的を追跡すると言う性質上艦隊を組んでのノロノロとした追跡は出来ず、どうしても単艦での任務遂行となる。
そのため無限追撃艦隊には通常の艦船ではなく自動修理工場、特務憲兵隊、大量破壊兵器などを搭載した規格外の特務艦が与えられる。が、下手な正規軍より戦闘回数が多く、設備・人員が充実していると言う実情からか、試作兵器やコンペに破れて主力兵器に成り損ねた新兵器の実験艦と言う側面もある。
そういった事情のせいで血の気の多い、喧嘩っ早い艦隊としても有名である。



ブラッディ血塗られたショルダー右肩」艦橋。

≪こちらブラッディ血塗られたショルダー右肩*。諸君、2週間前に起こった転移ゲート襲撃事件を覚えていると思う。あの犯人の追撃が今回の我々の任務だ≫

おおッ、声にならないどよめきが艦橋に、格納庫に、兵員カーゴにさざめく。
(*:営巣ハイヴ連結体ネクサスでは艦船は生体兵器であり、従って艦長は艦船そのものである)

≪敵は転生者。肉体年齢は20前後。インストールされた人格の年齢はおそらく12前後だ≫

≪犯人の転生者は逃亡中に幼虫の乗ったスクールバスを攻撃。53人の幼虫が死亡。さらに転移ゲートを操作していた非武装のオペーレーター5人を殺害している≫

≪ランダム・ジャンプされたせいで座標の特定に時間が掛かったが、ついに割り出しに成功した≫

≪気を引き締めていけよ。前人未踏の未接触の「地球」だ。何がいるか分からん。この前の様に転移後突如として生体レーザー砲撃の集中砲火を浴びる可能性もある≫

≪もっとも、領空内に事前通達無しで転移したこちらに非があるのだがな。ま、いつものことだ≫

≪転移まであと0023。総員ワープに備えよ。以上≫





「あら、こんばんわ」

巡回中に噂の新入りの魔法先生と出くわした魔法生徒。

(おや、中々の美形じゃない。ていうか女みたい。魔力は多いし出自不明の魔法は使うし、何か胡散臭いわね)

「こんばんは。今日は………」

その時、空が割れた。



<学園長! 何か大質量の物体が突如として結界内部に転移して来ました! >

<何じゃとぅ?! 至急警邏の者を現場にiiiii…..>



P事象N正常化フィールド最大出力で展開! 対空監視データ解析、地表走査サーチ急げ! ≫

≪暖機がまだ終了していません! 最大出力到達まで後000021! ≫

ブラッディ血塗られたショルダー右肩! 標的を発見、前方1時方向俯角20度! 至近距離です! ≫

≪何たる行幸! 特務憲兵隊全機出撃! 迅速に撃滅し、この世界への影響を最小限に抑えよ!! ≫

≪了解≫





麻帆良上空に突然出現した謎の戦艦に向けて無数の魔法が放たれる。
轟々とした重低音の羽音と共に悠然と佇む黒塗りの戦艦。
パニックに陥りながらもつい釣られて反射的にぶっ放してしまう魔法生徒。

「あわわわわ………い、一体アレは?! 」

「まさかアレは、いやまさかそんな、ここはネギまだぞ。あり得ない。(ブツブツ」





≪何てこった! ここは魔法使いどものネストか?! ≫

≪地表構造物より魔力確認! 魔導フィールドでここいら一帯がすっぽり覆われています! ≫

≪クソがッ! そこいらじゅう魔法使いだらけだ! 囲まれてやがる!! ≫

≪暖機終了。P事象N正常化フィールド最大出力! ≫

≪対空砲開けぇ! 弾幕を形成しろぉ! ≫

ブラッディ血塗られたショルダー右肩! これはケース211に該当するのでは…? ≫

W.M.D.大量破壊兵器を?! ぐッ、やむをえんか……?≫





ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ

魔法生徒・魔法先生と空中戦を繰り広げていた特務憲兵隊が羽音も甲高く母艦へと帰還していく。

残された魔法関係者たちはボロボロだ。
無理も無い。
こちらの攻撃魔法は全て直撃する前に消滅し、あちらの刀は障壁をまるで存在しないかのように切り裂くのだ。いまだ死者が出ていないのは僥倖と言えた。
否。

「私たち、遊ばれていた……? 」**

次の瞬間、ぶわっと何か力場のようなものが広がったかと思うと、空中にいた魔法使い達は全員墜落していた。

母艦から展開されたP事象N正常化フィールドによって麻帆良がすっぽりと包まれたのだ。

ほとんどの魔法使いは訳も分からず落下して逝った。
中には必死になって魔法を詠唱している者もいる。

赤毛で眼鏡を掛けた、小柄な10歳ぐらいの魔法先生が何度も何度も飛行魔法を詠唱するが、P事象N正常化フィールドによって魔力そのものが無かったことにされているので当然発動しない。
そのまま体勢を変える事も出来ず頭から落下し頚椎をへし折って即死した。

ある金髪の少女にいたっては肉体が維持できずに崩壊していく。
肉体を魔力で維持しているもの、例えば悪魔や吸血鬼は不自然を自然へと矯正するP事象N正常化フィールドによって分解されてしまうのだ。
少女は絶叫しながら完全に崩壊し、まるでその後を追うようにガイノイドのスクラップが落下してきた。

(**:特務憲兵隊は遊んでいた訳ではなく、「この世界への影響を最小限に抑えよ=死者は出すな」と言う命令と「標的を迅速に撃滅せよ=障害は排除せよ」と言う命令の板挟みになっていたため本気を出せなかっただけである)




P事象N正常化フィールド最大出力を維持! 気を抜くなよ、ここが魔法使い達のネストなら直ぐにでも破られるぞ! ≫

≪ああッ! 標的がP事象N正常化フィールド外へ向けて逃走しようとしています! 現在橋へ移動中! ≫

W.M.D.大量破壊兵器橋に照準! 戦術核選択セレクト! 爆圧で囲め! ≫

≪戦術核発射準備完了! 何時でも撃てます! ≫

≪撃てぇ! ≫





ブラッディ血塗られたショルダー右肩から放たれたクラスター生体戦術核砲弾はちょうど橋の中間を走っていた魔法先生の上空で三角形を描くように3つに分離。魔法先生を囲むように落下し、起爆した。





魔法先生=転生者:王の財宝ゲート・オブ・バビロン、SS級ユニゾンデバイス、無と有を操る程度の能力、文殊、サイヤ人の能力を持った標的コード135-983267は、P事象N正常化フィールドによってその所持する能力全てを封じられ、混乱と恐慌の内に核の焔で蒸発した。



麻帆良学園を覆い尽くすほどのキノコ雲が吹き上がる。
衝撃波と熱線が建築物を襲い、巨大な可燃物である神木・蟠桃がごうごうと炎上する。
壮麗な図書館島は衝撃波によって薙ぎ倒され倒壊。
造りがやわだったのか地下空間まで巻き込んで崩れ、最深部に至るまで崩壊した。
学生寮も衝撃波と爆風で倒壊し、何人も死者が出た。野太刀を背負った少女が瓦礫の中から掘り出した死体を胸に抱いて慟哭する。その近くでは眼鏡を掛けた教師が少女の死体の傍らに呆然と立ち尽くす。口に咥えていた煙草が少女の顔のすぐ横に落ちる。そのオッドアイの瞳はもう何も映すことは無い。





≪標的の消滅を確認! ≫

任務ミッション完了コンプリート! ≫

≪うぅむ、いつもの事ながら現地の住人に被害が出過ぎの様な……≫

≪毎度の事ならば、毎度の様に気にする事はありません。どだいあちらから撃って来たのですから、ね? ≫

≪しかしだな、もし今回の死者の中にこの世界の要人がいたとしたら……≫

≪お言葉ですが、一人や二人の要人が死んだ程度でどうにかなるほど世界は柔ではありません。もしどうにかなってしまうとしたら、そちらのほうが異常です≫

≪む、まぁ、そうか。そういうことにしておこう。P事象N正常化フィールドoff。転移ゲート開け。座標入力。これより帰還する! ≫







彼らにとっては、いつものようにさっと侵入して標的を始末したらさっと戻る、ただそれだけのありきたりな任務。これまでと同じ、特筆すべき事も無い任務であった。
故に、某所においては「ネギま」と呼称されているこの世界が今後どうなるかには全く関心が無く、港へ、家へ帰還する事だけが目下のところ最大の関心事であった。





あとがき

こ れ は ひ ど い 。
ネギまファンの方々申し訳ありませんでした。
…でも誰が誰とは名前を出していないからもしかするともしかすると何ですよ?






追伸

元々この作品の設定は、高校生時代の「ありとあらゆる多重クロスに介入するにはどうしたらいいのか? 」という命題の名残から生まれたものなのです。
その一つがいまだ未完の「SF微ホラー」の実体の存在しない主人公であり、「魔法少女試作機」の機械化魔法少女であり、「サイバーパンク」の対クロスオーバー用にわざわざ設定を起こしたオリジナル文明なのです。
で、あるからして。
対ファンタジー・クロスオーバー用に創造した文明を本当にファンタジーとクロスさせれば蹂躙になってしまうのは必至。
ぶっちゃけ遅かりし厨ニ病。

…………読者の皆様本当に申し訳ありませんでした。



[27038] 【習作】 リリカルなのはの幻覚 (プロローグ)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/09 22:09
うぅげぇろぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ…………

『大丈夫か? 』

「ああ、平気だ……いや、平気じゃない」

「ねぇ、どうしたの? 」

「あ、ジェーン。今電話中だからチョット待ってね」

「はーい」

『何かあったのか? 』

「アア、そうなんだ。聞いてくれよ健。ついこの間ジェーンと一緒にリリカルなのはをStSまでマラソンで見ただろう? 」

『ああ』

「あの中にリインフォースっていう不憫キャラが出てきたじゃないか」

『出てきたな』

「今、ボクの、目の前に、初代リインフォースの妖精にしか見えないものが浮いているんだ」



『oK..落ち着け。クスリは飲んだのか? 』

「まだだ。これから飲むところ」

『よし、よく聞け。それは脳腫瘍が産み出した幻覚だ。いつもと同じヤツさ。クスリを飲んで、15分から20分くらい仮眠すれば消えてなくなる』

「ほ、本当に? 」

『ああ。クスリの効果はよく知っているだろう? 』

「実を言うと、最近効きが悪くなっているような気がするんだ」

『何だって? 』

「この前はボクのお腹に女性器そっくりの裂け目が出来てついそこにDVDを突っ込んじゃったし先週の金曜にはTVが砂嵐になったと思ったら「服従しろ」「消費しろ」とかツィートし出して掴みかかって来たし一昨日バーミヤンでスペシャルを頼んだときは手が勝手に食い滓の骨と軟骨でグリッスル・ガンを組み立てちゃったし昨日はベッドのスキマに棲んでいるヤツらが机の引き出しに棲んでいる連中と戦争していたしああしかも今朝なんか吐き戻した反吐がボクに挨拶して鍵を開けて玄関から出て行ったんだ!! 」

『落ち着け落ち着けよ。腹に挿入したDVDは? 』

「あ? ああ、えぇと。確かエクスペンタブルズとリベリオン」

『Good..それならどうにかなる。グリッスル・ガンはどうした? 』

「れ、冷蔵庫にラップしてそのまま..」

『良し、すぐにそれを持ってくるんだ』

「あ、一寸待って。リインフォースが何か言おうとしている」

ぱくぱくと口を開閉させながら周囲をぐるぐると飛び回っていたリインフォースが手を伸ばして額に触れる。

〈眼を醒まして! 今貴方が話している相手は幻覚よ! 〉

「何だって?! 」

〈携帯電話を見て。電源が入っていないわ! 〉

ばっと携帯電話の画面を覗き込む。
真っ暗で何も映っていない。
電源ボタンを押す。

【バッテリーが切れています。充電してください】

再びリインフォースの声が入ってくる。

〈お願いです。私たちを助けてください! 〉



ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

携帯電話の着信音が頭に響く。
そっとバッテリーの切れた携帯電話を耳にあてがう。

「……もしもし? 」

『急に電話に出なくなって心配したぞ。どうした? 』

「健? リインフォースが、君は幻覚だって」

『おいおい、何をバカなことを。だいたいリリカルなのはの登場人物が現実に居る訳が無いだろう? あれはアニメ、作り物、ただの映像なんだぞ』

「うん、そうだね。でも健。今この会話だってただの音声だって言うことも出来るよ? 」

『それがどうした? ここは現実で、俺は実在している。その証拠にこうしてお前と話しているじゃないか』

「あのね、健。この携帯電話のバッテリーは切れているんだ。………健? もしもし? 健? もしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもし? 」



「ねぇ、電話終わった? 」

「ジェーン。健って知ってる? 」

「貴方の友達じゃないの」

「じゃあここのリインフォースは? 」

「リインフォース? 貴方また幻覚を見ているの? 」

「そうだよね。アニメのキャラが現実に居る訳が無いよね? うッ」

〈彼女の方こそ幻覚です! 早く眼を醒まして!! 〉

「ジェーンを幻覚だなんて言うなッ! ジェーン、君はちゃんとそこに実在しているよね? 」

「当然じゃない。どうしたの? 情緒不安定なの? 」

「じゃあ実在している証拠としてパンツ見せて」

「何、ヤりたくなったの? それだったら早く言ってくれれば良かったのに」

〈彼女の本名は? 何時付き合い出したの? 彼女の出身国は? 全てデタラメです! 〉

「うるさいッ! 彼女の名前はジェーン・ドゥ。出身国は、………あれ、えぇと、そう、カナダ、カナダのピッツバーグだ。うん。付き合いだしたのは、あれ、そう、付き合いだしたのは……………………ジェーン、ボクたち何時からこう言う関係だったっけ? 」

「貴方に脳腫瘍が出来てからよ」

「あ、そっか。………え? 」



「ちぇっ、気付いちゃったわね。でも私が実在するのは本当よ。貴方のことが好きだって言うのもね」

「ジェーン? 」

『ジェーンの言う事は本当だぜ』

ふと見下ろすと、携帯電話に脚が生えてカサカサと机の上によじ登っていた。

『俺たちは実在している。ちゃんと肉体もある。ただし、お前には見えないがな』

「健? 」

『鏡を見てみな』

言われたとおり鏡を覗き込む。
そこには。
頭蓋骨が内側から押し上げられ片側だけ歪に膨らんだ顔と骨肉腫によって変形した左肩が映っていた。

『それが俺たちだ』



「つまり私は文字通りの脳内嫁と言うわけ」

『俺はお前の左肩の骨肉腫だ』

「そんな、でも、……どうして? 」

『お前の肉体で向上心を持っているのは俺たち悪性腫瘍だけだった』

「まったく、不甲斐無い連中よ。だから私たちが孤独な貴方の恋人に、友人になった。そして、貴方の脳髄は特別なの」

「特別? 」

『お前は現実を変えることが出来る。お前が見た幻覚は全て現実の物になるのさ』

「じゃあ失くしたエクスペンタブルズもバーミヤンのお土産も……」

「みんな現実よ。冷蔵庫にはグリッスル・ガンがちゃんとあったわ」

「じゃあ、君は? 」

『幻覚さ。お前の脳に直接幻覚を見せ、幻聴を聞かせている』

「そしてそれが貴方の脳髄によって現実になる」

「そんな………」

『さて、グリッスル・ガンは? ジェーン? 』

「もう持って来てあるわ」

「ねぇ、ジェーン。健。ボクが今居るこの世界もボクの脳腫瘍が産み出した幻覚なの? 」

『そうだとも言えるし、違うとも言える。幻覚は現実となり、現実がさらに幻覚を産む。もう俺たちにもどちらとも言えん』



そっとジェーンが粘液の滴るグリッスル・ガンを差し出す。

「さ、決めるなら早くした方が良いわ」

「決める? 何を? 」

『この現実と言う幻覚とおさらばするかどうかだ』

「このグリッスル・ガンはビデオドロームのワルサーPPKも混じっているの」

「……あぁ、そういうこと」

『さて、どうする? 』

「うん、試して見るよ。ねぇ、ジェーン、健、もし失敗してもボクに付いて来てくれる? 」

『もちろん』

「ずっと一緒よ。ずぅっと、ね? 」

「ありがとう。二人とも」

グリッスル・ガンをジェーンから受け取る。
冷蔵庫に入っていたせいかとてもひんやりしている。
すっとグリッスル・ガンを持ち上げてこめかみに冷たい銃口を当てる。
周囲を飛び回っているリインフォースに苦労しながらウィンクする。

「やっぱり決め科白はこれだよね。「新人類よ、永遠なれ…」」



引き金を引く。

銃声。

暗転。





あとがき

クローネンバーグとバーホーベンをはしごしたらふと思いつきました。
ちなみにグリッスル・ガンとはイグジステンズのあの骨と軟骨で出来た銃の事です。



[27038] 【習作】 SF 微ホラー (文章練習)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/04/07 19:44
 異界より凶気/凶器/狂気が来たる。
ゲタゲタゲラゲラと楽しそうに笑いながら来る。

「あぁぁっっっはぁっははははははははははははははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ!!」

 チュュイイィィィィーーーンンンンと歯医者のドリルの様な音を立てて現在が穿孔される。
バリバリガリガリボキボキと現在を噛み砕きながらそれ・・がこちらに侵入してくる。
狂女の様に金切り声で
チンピラの様に下品に
子供の様に純粋無垢に
笑いながら哂いながら嘲笑いながら泣笑いながらそれ・・が此方側にやって来る。

ようやく還って来たと泣きながら
帰って来るべきでは無かったと泣きながら

これから先繰り広げられるであろう狂宴を想いながら、唯只管泣きながら笑いながら、それ・・があちら側からこちら側に侵入してきた。



1.そして、現実がようやく始まった。



 それ・・は初め臭いとして手触りとして感覚された。
それ・・はどこか青臭く、それでいて化学薬品のような人工的な臭いだった。しかし、同時に生ゴミの様な金属臭も漂わせていた。
 それ・・はねっとりとしていた。ねとねとしていた。手に執拗に絡み付いた。それ・・はまるで油泥の様な、固まりかけた血の様な、白濁の様な、不快な感覚だった。
 質量のある実体は未だ無い。しかし、嗅覚と触覚に知覚できる部分においてのみ実体があった。

 それ・・は決して焦らなかった。少しずつ少しずつ自分自身をこちら側に侵入させた。まるで工業廃水が少しずつ河を汚染していくように、害虫が少しずつ家の隙間に潜り込む様に。
 一度に少しずつ、それを気が遠くなるほど何度も何度も何度も繰り返して、その膨大かつ複雑な構造をこちら側に流出させていった

 それ・・は次第に都市に広がっていった。都市と都市の隙間に。下水道と地下ケーブルの暗い隙間に、ビルとマンションの狭い隙間に、屋上と空の茫漠とした隙間に、人と人との間の”存在しない”隙間に。

 それ・・は質量のある実体は流出させなかった。では、何が侵入してきたのか。質量が存在しないならば、そもそも何も侵入してはいないのではないか。
 いや、それ・・は確かに確実に侵入してきている。何が? 異次元の構造体だろうか? しかし、異次元の構造体であるならばこの世界の物理法則と衝突し干渉するはずである。不可視にして不可触の質量の存在しない物体であろうか? しかし、そんなものはそもそも存在していると言えるのか…

 次第に次第に人々の間でそれ・・が意識に上り始めた。「どこからとも無く悪臭が漂ってくる」「ぬるりとした感触があるのに手を見て見ると何も付いていない」…都市伝説にすらならない、日常における唯の思い違い。明確に問題とならない、日常の些細な違和感。それがすこしずつ積み重なっていく。どれほど洗ってもぬっちょりした感触が拭えない。どれほど掃除しても香水をつけても悪臭が鼻を突く。日常を送る上では何ら支障は無い、しかし意識しないではいられない。その絶妙なラインをそれ・・は心得ていた。

 質量は存在しないが明確に存在する物とは何か、そもそもそんな物は存在するのか、それは矛盾ではないのか…
否、存在する。「情報」が存在する。何かが「ある」から「ある」と言うのではない。「ある」と言うから「ある」が存在するのだ。「光あれ」故に「光がある」のだ。
 狂った論理である。少なくともこの世界に存在してよい論理ではない。では、他の世界ならどうか、他の次元なら。

 徐々に都市にフラストレーションが溜まっていった。それは個人と言う単位で見れば些細なストレスでしかない。しかし、それらが都市全体を満遍なく覆いつくし、その総和として見れば、膨大なストレスが都市に対して掛かっていた。
 次にそれ・・は電子情報網及び人的情報網を駆け巡り蝕んでいった。それ・・は電子ネットワークの負荷を重くし、人間同士のコミュニケーションに軋轢を生じさせた。元々些細だがストレスを溜め込まされていたこともあり、それらは容易に不快感・苛立ちへと変化していった。
 道行く人々は皆苛立ち、怒りっぽくなっていった。隣人同士で文句を付け合い、知り合いと些細なことで言い争うようになった。犯罪件数は増加し、その大半は衝動的なものだった。
 都市にエントロピーが蓄積されつつあった。

   「クオリア」
 何故人は赤い光の波長を視覚で認識すると、「赤い色」のあの「感じ」を感じるのだろう。何故人は単なる音波の連なりから、「荘厳さ」や「物悲しさ」と言ったあの「感じ」を感じ取るのだろう。物理科学は赤の波長は何nmか、「第9」は何Hzかと言った答えは返せる。しかし、何故それらをそう感じるのかは答えられない。
 ヒトの脳は生化学及び物理科学によって説明できる。故に脳によって演算される意識、ひいては心も物理的に説明できるはずだ。しかし、脳をいくら解剖し解析しても、心の中枢が見つからない。見つかるのは無数の機能断片だけだ。
 心は脳の何処にあるのだろう?

 その都市は駅を中心に放射状に発展していった。それ故人の流れも情報の流れもまず駅から拡散し、駅に集中していく。
 人々の間にストレスが蓄積されてゆく。だが、その原因を意識することが出来ないが故に発散させることも出来ずに溜まり続けた。理由も無いのにイライラが収まらず、ただ抱え込み続けた。未だ人々の理性と言う名の堤防は保たれていたが、何か切っ掛けがあれば容易く決壊しかねなかった。
 そして、その時は着実に近づいていた。





あとがき

続編の構想はあるのですが、うまいオチが思いつかない。
何かいいアイデアが閃いたら続けます。


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