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March 31, 2011

またまた、おかしなことを・・・。「日独友好決議」の怪

■ またまた、おかしなことが行われようとしている。
 日独交流150年記念決議というのが出されるらしい。
 案文は次のとおりである。
 

□ 日独交流百五十周年に当たり日独友好関係の増進に関する決議(案)
 今から百五十年前の一八六一年、我が国は日・プロイセン修好通商条約に調印し、日本とドイツの前身であるプロイセンとの間に公式な関係が樹立された。一八七一年にプロイセンを中心に統一を達成したドイツは、我が国が近代化に当たり模範とした国の一つであり、我が国はドイツから、法学、医学、芸術を始め、様々な分野で多くを学んできた。また、浮世絵を始めとする日本の伝統文化も、ドイツを含むヨーロッパの芸術に少なからぬ影響を及ぼすなど、日独両国は、友好関係を築いてきた。
 両国は、第一次世界大戦で敵対したものの、先の大戦においては、一九四〇年に日独伊三国同盟を結び、同盟国となった。しかし、両国は、その侵略行為により、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることとなった。
 あわせて、敗戦の中から両国は奇跡の経済復興を遂げ、同時に戦争への反省に立ち、今日、自由、民主主義、人権の尊重という基本的な価値観を分かち合いつつ、世界の平和と繁栄のために緊密に協力している。さらに、両国の国民は、相互の文化と価値観に対する尊敬の念を基礎に、広範多岐にわたる交流を着実に進めている。
 本院は、日独交流百五十周年に当たるこの機会に、日独両国が国際社会の平和と安定に大きく寄与していることを確認するとともに、今後とも我が国は、信頼関係に基づくパートナーであるドイツと共に、国際平和の実現に向けて最大限の努力を継続する所存であることを、ここに銘記する。
 右決議する。 

 この決議案が「危ない」のは、下記の文言である。
 ● しかし、両国は、その侵略行為により、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることとなった。
 日本の場合、政府の公式認識は、村山談話や小泉談話で示されている。
 ドイツでは、第二次世界大戦の咎は、ナチスの蛮行にきせられるのであって、ドイツ国家に責任は帰せられないというのが、公式解釈であるはずである。だから、戦後のドイツは、ナチスとの「縁」を感じさせるものは、徹底して消し去ろうととしたl。もっとも、ナチスの蛮行には、往時のドイツ国民が陰に陽に支持を与えたという事実がある。だからこそ、その「非ナチ化」は、断固として進められた。「悪いのは、総てナチスだ」ということにしなければ、前に進めなかったのである。
 ゆえに、、ナチスに類する「自由と民主主義を破壊する政治結社」は、西ドイツ時代のボン基本法以来、認められていない。戦後のドイツの復興を牽引したコンラート・アデナウアーは、KPD(ドイツ共産党)をも「自由と民主主義の趣旨に添わない政党」として非合法化した。
 この決議案の文言では、「ドイツ国家は、その侵略行為により、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることとなった」という歴史解釈になる。これは、ドイツとの「友好」を趣旨としながら、ドイツに思いっきり喧嘩を売るような内容になる。アンゲラ・メルケルにしてみてれば、福島原発のとばっちりで政権の足元が揺らいでいるときに、こういう決議を出してくる日本の「真意」を疑うであろう。
 この決議案を誰が起草しているのかは、雪斎は知らない。けれども、こういう決議を書くくらいだから、コンラート・アデナウアーの「回顧録」ですらも読んでいないであろうということは、容易に推測できる。
 震災対応のどさくさに紛れて、こういう日本の外交上の立場を揺るがせるような阿呆なことが行われてはならない。

 …と、こここまで書いて、下のような記事が配信されている。
 

□ 日独友好決議「両国が侵略行為」 自民反発、文言修正へ
             産経新聞     3月31日(木)7時57分配信
 民主党が採択を目指していた日本とドイツの交流開始150周年の国会決議案の文言の一部が削除される見通しとなった。自民党関係者が30日明らかにした。
 原文では、先の大戦を「両国は、その侵略行為により、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることになった」となっており、日本の行為をユダヤ人大量虐殺などナチスの戦争犯罪と同一視していると受け止められかねないため、自民党が強く反発。「侵略行為」という表現を削除し、「両国は、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることになった」に修正する方向だ。

  なるほど、この決議案の採択は、民主党主導であったたのか。
  記事によれば、「『侵略行為』という表現を削除し、『両国は、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることになった:』に修正する方向だ」らしいけれも、この修正でも、あまり意味はない。、当該文言は、全部削除でなければならない。こういうことがあると、「大連立? 冗談じゃないな…」と思う。

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Comments

私も極めて残念だと思いますが、この文言に問題はないでしょう。

アメリカ議会の従軍慰安婦決議に観られるように、欧米諸国は日本とナチス・ドイツとを同じものと考えているのであり、抗議すると731部隊の件までほじくり返されて中国・韓国からも再び袋叩きに会う可能性が高い。

ドイツの言い分など「建前」でしかないことは雪斎さんにもおわかりのはず。国際世論も大勢はそうでしょう。悪い奴がいて、正義は勝つ。そういう「嘘」の方が「真実」より世間は受け入れるもの。ましてや震災でこれからローレンス・サマーズ(アメリカ人ですよ)氏が「日本は貧しい国になるでしょう」と言っているくらいですから、もはや自国の立場など発言できますまい。とっくに日本の外交上の立場など「ない」のです。

私は民主党には何の愛着もありませんが、「大連立」も何も、ありとあらゆる事にNOと言うだけの自民党の支持が増えることにはなりません。今や戦時政権の菅内閣は、これから自民党の非・協力ぶりをアピールして、気がついた時には自民党の方が大連立を嘆願するようになり、「もうドアは閉じられている」と逆に言い放たれる可能性もある。
近衛文麿が「国民党政権を相手とせず」と言って墓穴を掘った事を例に挙げて、安倍元首相の北朝鮮との交渉を難じた雪斎さんがどうした事でしょう。「柔」の外交を唱えられた方が、民主党相手だと途端に頑迷になるとは。

Posted by: ペルゼウス | March 31, 2011 at 01:30 PM

>ドイツ国家に責任は帰せられない

違います。

いわゆる、ポツダム協定における
「非ナチ化」で問題にされたのは、
ドイツ「国民」であって、
ドイツ「国家」ではありません。

ご確認ください。

Posted by: 七師三等兵 | March 31, 2011 at 06:34 PM

民主党は社会党がより悪くなったモノみたいです。とても正気とは思ませんが、残念ながら狂ってはいないのでしょうね。

Posted by: KK | March 31, 2011 at 07:13 PM

ペルゼウスさんが結局のところ、どのように外交を行うべきと主張しておられるのか良くわかりませんが、外交に限らず全ての交渉・交流において建前や大義名分は重要なものですよ。
私は、雪斎さんが民主党相手だと頑迷になっている、とは感じません。単に民主党のやることなすこと、愚策の比率が尋常ではないものだから、そういうことになる。
ドイツ相手に何らかの決議を出すならば、現在の悪くない関係を無為に悪化させない配慮が十分になされねばならないし、受け入れがたい理屈でもって他国が日本を叩いて来たならばこれに堂々と抗議をし、牙を剥かねばなりません。それが外交というものでしょう。

Posted by: 南白 | April 01, 2011 at 02:58 AM

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