【コラム】孫正義が日本の首相になる日(下)

 日本での韓国系の活躍は、今に始まったことではない。かつては力道山や張本勲(韓国名・張勲〈チャン・フン〉)などの英雄がスポーツ界で活躍した。現在でもロッテグループ会長の重光武雄氏(韓国名・.辛格浩〈シン・ギョクホ〉)や「パチンコ王」ことマルハン会長の韓昌祐(ハン・チャンウ)氏、東京大教授の姜尚中(カン・サンジュン)氏、作家の柳美里氏など、多くの韓国系が日本でが活躍している。芸能界やスポーツ界は、韓国系の活躍がなければ成り立たないといわれるほどだ。

 だが、実力以上に家柄や出身地などが重要な政界だけは、韓国系の進出の道がぴたりと閉ざされている。唯一の例外は、1990年代に活躍した在日韓国人2世の故・新井将敬氏ぐらいだ。新井氏は政治家として将来を期待されていたが、選挙のたびに「朝鮮人」と中傷され続けた。新井氏は結局、違法な株取引をめぐる捜査中に自殺するという悲劇的な結末を選択した。まだまだ働き盛りの50歳だった。

 日本の政治は、派閥の力学によって舞台裏で権力が決まるシステムだ。国民からどんなに強く支持されても、多数派から推薦されなければ首相になることはできない。孫氏のように政界以外で権力を築き上げてきた外部の人間は、入り込む余地がないのだ。孫氏本人が政治に関心を示したことは一度もない。ただ、孫氏の目標がカネではないことは明らかなようだ。孫氏は4年前、記者とのインタビューで「富は道具にすぎない」と話していた。

 孫氏がロールモデルとしている人物は、江戸時代末期の革命家、坂本竜馬(1836-67)だ。竜馬に魅了された理由について、孫氏は「理想のために命をささげ、革命を起こしたから」と語った。53歳の孫氏はすでに、日本で最高の資産家となった。今や孫氏の視線はビジネスの枠を超え、日本社会の変革を見据えているようだ。

 米国では黒人の大統領が誕生した。日本ではいつごろ韓国系の首相が誕生するだろうか。今の日本はこの質問に対する答えを出せない。このため、日本が「真のリーダー不在」という危機を克服する日は、遠い先のことにしか思えない。

朴正薫(パク・チョンフン)記事企画エディター

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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