東日本大震災に際し、米軍が大規模な支援作戦を展開してくれたことで、ぎくしゃくしていた日米両国本来の連帯の強さが、あらためて認識された。
震災発生以降、米軍は「トモダチ作戦」と名付け、かつてない規模で救援活動を実施した。最大時で人員約2万人、艦船約20隻、航空機約160機を投入し、物資を被災地に運んだ。仙台空港を復旧したほか、自衛隊とともに三陸沖で行方不明者を捜索した。福島第1原発事故に関しても、無人偵察機を飛ばして撮影した写真を日本側に提供するなど、数多くの分野で労を惜しまなかった。
支援活動に参加したある米軍兵士は、仙台空港近くを飛行中、浜辺に被災者が木を並べて書いた「ARIGATO(ありがとう)」の文字に気が付き、日本人の感謝の心に感動したという。
このほど来日したクリントン米国務長官は、菅直人首相との会談で「日本は必ず回復し、経済的に活躍すると確信している」とエールを送った。会見でも「ビジネスマンやその他の米国人は平常通り日本に来てほしい」と呼び掛けた。
米国の分厚い支援の背景には、アジアの安全保障戦略で最大のパートナーである日本が、震災で国力を低下させ影響力を失うのは困る、との判断があろう。
2009年秋の民主党政権誕生以来、日米関係は迷走気味だった。米側は、米国離れを思わせる鳩山由紀夫前首相の言動に神経をとがらせ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に関わる日本政府の対応にも不満を抱いた。
一方で、米国務省のメア日本部長(当時)が「沖縄はゆすりの名人」などと発言したと報じられ、日本側を怒らせた。
震災での協力は、こうした相互不信の感情を劇的に改善したといえる。
日米両国は昨年の安保条約改定50年を機に、同盟関係の深化を目指す協議を始めていたが、普天間問題などがネックとなり、進んでいなかった。
今回の震災で見せた現場レベルでの協力の成果をテコにして、両国関係の再構築を進めてほしい。今回の実績を基盤に、両国が災害時に相互に支援する協定を交わし、さらにアジア地域での災害対応協力へと発展させるのもいい。
一つだけ気になるのは、普天間問題との絡みだ。両国政府の中には、震災での支援により、日本国内で在日米軍の存在感や評価が高まり、普天間飛行場の名護市辺野古移設案への追い風になるのでは、との期待があるかもしない。
しかし、たとえ国民が震災で在日米軍の有用性を実感したとしても、それが沖縄にあることの理由にはならない。むしろ、「日本全体で基地負担を考えてほしい」(仲井真弘多知事)とする沖縄の主張が説得力を増した感がある。この点は雰囲気に流されない議論が必要だ。
=2011/04/20付 西日本新聞朝刊=