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石油の生い立ちを知ろう!

探鉱 −石油の見つけ方−

探鉱の手順

地下に存在する石油や天然ガスを見つけ出す作業のことを「探鉱」と呼びます。

事前調査 まず探鉱の第一歩として、対象となる地域の事前調査を行います。事前調査では文献や資料による石油地質的評価を実施するとともに、政治経済的安定性や立地条件を検討し、有望と判断される地域の鉱業権を取得します。石油地質評価のためには、リモートセンシングや航空写真解析も用いられます。
概査 鉱業権を取得した地域では、地質・地化学調査、重力・磁力探査などを実施することで堆積盆地の広がり、地層の根源岩、貯留岩としての性質、地質構造の概要などをつかみます。
精査 有望と判断される地域に地震探査を実施し精度の高い地下情報を収集します。これらの探査データを総合的に解析し、油・ガスの基となる根源岩とトラップやシールを伴う貯留岩が想定され、根源岩から貯留岩へ油・ガスが移動したと考えられるような集油・ガスの可能性が高い場所を探します。これらの場所について想定される埋蔵量を計算し、最も集油・ガスの可能性が高く、埋蔵量の大きい場所を試掘候補地として選定します。
試掘と鉱床評価 この候補地に試掘を実施します。試掘とは、油・ガスを探すための井戸を掘ることです。掘削中や掘削後に得られた地質データ、物理検層データから、油・ガスが地下に集積されている圧力状態や、貯留岩の分布状況などを解析・検討・評価し、実際の石油生産を行うかどうかの判断を下すことになります。

地質・地化学調査

石油探鉱のために行う地質調査には以下のような調査項目があります。

地表地質調査 野外を歩いて、地層が露出している露頭とよばれる場所(崖など)を観察することによって、岩相の判定、上下岩相の関係、構造などを解明し、層序の設定を行います。
写真地質調査 空中から撮影した写真より地形の分類を行い、地質状況と関連付けます。これを空中写真の地質判読と言います。地質判読後、実際に現地での調査を行い、判読結果をチェックします。
古生物調査 野外で採集した岩石中に含まれている古生物(化石)を鑑定し、層準、地質年代、堆積環境を明らかにします。
地化学調査 野外で採集した岩石、油、ガス、水などの試料を化学分析し、石油鉱床の可能性について考察します。
堆積学調査 堆積岩(地層)中に見られる粒度の違い、ラミナ、ソールマークなどの細かな堆積現象を観察することによって、地層の堆積した環境を考察します。総合的な考察によって、堆積盆地の成因と形成の過程を知る手がかりとします。
岩石学調査 岩石の物理的な性質や岩石に含まれている鉱物組成を調べ、岩石や地層の成因、続成作用、年代測定などを行います。

物理探査

地下の様子を物理的な手段を用いて調べることを物理探査と呼びます。石油・天然ガスの探査では、主に重力・磁力および地震探査が用いられます。

重力・磁力探査 重力や磁力の大きさは地球上で一定ではなく、様々な理由により場所ごとに異なった値を示します。地下構造の変化も重力や磁場の変動に影響を与えているため、各地点における重力や磁場の値を測定することにより地下構造を推定するのが重力・磁力探査です。これらの探査により、地下の基盤岩の形状や火山岩の有無などを推定できます。

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重力・磁力探査

地震探査 地震探査は、人工地震によって作られた振動が地層境界面で反射して戻ってきたところを、地震計の一種である受振器でとらえて地層境界面の深度や形状を調べる方法です。地震で作られた振動の伝わる時間や大きさが地下の岩石の性質(速度や密度)によって異なることを利用しています。

人工地震をおこすために、陸上では爆薬や機械的振動を、海上では圧縮空気を主に使用します。受器と震源を密に配置して反射波を取得する3次元地震探査もよく行われています。

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地震探査

三次元地震探査 3次元地震探査では地下構造を立体的に捉えることができ、より正確に調べることができます。最近では、4次元地震探査も行われています。これは3次元地震探査を時間間隔をおいて行う方法で、例えば石油を生産する地下の様子などを時間変化として捉えることが可能です。

地下からの振動には雑音が多く、これらを取り除くためにコンピュータを使った処理や解析が欠かせません。単に地下構造形態を表す処理・解析ばかりではなく、地下の岩石や流体の物性など知る特殊な処理・解析も行われます。これらによって地下に油・ガスが貯留されているかどうかを予想することができます。

三次元地震探査

総合地質解釈作業

地質調査や物理探査によって得られた成果を基に総合的な地質解釈を行い、最も油やガスが集まっている可能性の高い所を選定します。

地震探査データの解釈 処理を施した地震探査記録に対して反射波列の追跡や断層推定による地質解釈を行います。この解釈は、文献・資料や地質・地化学調査などから得られた情報とともに、周辺地質の形成過程を推測しつつ行なうことになります。

構造図の作成 地震探査データ処理記録を解釈することによって各時代層準の地下構造図を作成します。特に、地史の解明によって貯留岩と推定される層準に関しては詳細な構造図が作成されます。地震探査では深度は時間で記録されていることから、得られる構造図も時間構造図です。この時間構造図を坑井や地震探査データ処理によって地下構造の速度を推定し、深度構造図に変換します。しかし、最近は地下構造の高精度な速度推定技術が発達し、地震探査データ処理記録の深度が距離で出力されることも多くなりました。

プロスペクトの抽出・試掘位置検討作業 堆積盆地の特徴および炭化水素胚胎の地域的な広がりを把握した後、さらに詳細な石油地質評価を行います。

すなわち、1.集油構造、2.根源岩、3.貯留岩(目的層準)、4.シール のそれぞれの能力と空間的な広がりを評価することになります。

集油構造は、地震探査解釈による地下構造図によって見いだされ、集油面積や孔隙率などから求めた埋蔵量を基に経済性についても検討します。根源岩については、周辺地質や坑井データに基づいて有効な層準を推定し評価します。貯留岩・シールについても同様ですが、地震探査記録の特徴からその存在を推測することもあります。また、根源岩から石油やガスが貯留岩へ移動するタイミングに関する評価もとても重要です。

1〜4のそれぞれについて、どれが不良でも石油鉱床の胚胎のリスクは大きくなります。それぞれが比較的良好である場合、その集油構造はプロスペクトといい、探鉱(試掘)対象となります。
試掘および結果検討 試掘はとてもお金がかかる作業です。慎重に準備をすすめ、作業は迅速におこないます。掘削中は、坑井元にいる地質技術者が、循環泥水とともに地表にあがってくる掘り屑を調べます。掘り屑は現在掘削中の地下の岩石地質を教えてくれます。

地質技術者は掘削中掘り屑を観察・記録し、今、どこを掘っているか、予想との深度誤差はないか常に検討しています。記録した地質データは後に周辺地質を検討する際に有用な情報となります。対象層近傍では掘り屑に油を含んでいないか、注意深く観察します。

また、実際に地下岩石のサンプルを取る必要がある場合は、コア採取を決定します。コアサンプルの取得によって貯留岩の性状をより正確に把握することができます。掘削中は地下情報を得るために、泥水中のガス成分も測定しています。ガス成分の変化によって、地下における炭化水素の有無を判断することができます。掘削中、物理検層もおこなわれます。物理検層では、岩石の物理的特性を計測することによって、岩相や地層の孔隙率、炭化水素の飽和率など推定します。

これら掘削中および掘削後に取得したデータを総合的に判断して、油・ガス層の存在する可能性を評価し、この評価に従って、油・ガス層と推定される部分について産出テストがおこなわれ、試掘井からの産出能力と産出する流体の性質が判明するのです。

こうして、商業的稼行に足る程の油・ガス量が発見されると物理検層データと地震探査記録の対比を行い、その油・ガス層の空間的な広がりを推定します。さらに、この推定を確認するために評価井を掘削することになります。