【コラム】小さな町の小さな飲食店が「一流」になるワケ(下)

 なぜ、このような運動を実施するのだろうか。同市の地域経済課に尋ねたところ「閑麗水道ケーブルカーや巨加大橋(釜山市-慶尚南道巨済市)が開通したことで、観光客が大幅に増え、これまでにないほどの活況を呈している。統営市の人口も昨年より1040人増加した。そのような中で、観光客たちが『忠武キムパプは高くなった』と言い出さないだろうかと懸念した。しかし、値下げを強制することはできないため、『順調なときこそ、良い商売をしよう』と呼び掛けている」と答えた。

 全ての企業にとっての哲学は、最終的に「価格」に集約される。フランスのエルメスのように、最高の価格で経営哲学を具現化する企業もあれば、日本のダイエーのように「価格破壊」という哲学を押し通す企業もある。材料費が値上がりした分をすぐに消費者に転嫁し、ほかの店が値上げしたからといって、追従して値上げするようでは、いくら大企業でも三流としかいえない。全国経済人連合会(全経連)のセミナーで、大統領と経済について語り合う経営者でも、価格についての哲学を持たず、周囲の動向に振り回されるだけの経営者は三流だ。そして、企業を説得できず、公正取引委員会や同伴成長委員会(大企業と中小企業の共生を目指すシンクタンク)を動員して圧力を掛けるだけの政府もまた、主要20カ国・地域(G20)の一員とはいえ、三流にすぎない。

 一方「人から悪口を言われてまで、食べ物を売る商売はしたくない」と言った飲食店の店主は、地方都市の16坪しかない店でキムパプを売るだけでも一流と見なされている。「順調なときこそ、良い商売をしよう」と呼び掛け、住民たちを説得できる地方自治体であれば、人口14万人の小都市でも一流だ。考えてみれば、韓国にも「三流」と同じぐらい「一流」が存在する。

 韓国はまだ、需要が供給を上回る経済状況にある。このような状況の中では、ほかの店の値上げに合わせて自分の店も値上げするような「三流」も生き残れる。しかし、主な消費者層(15-64歳)の人口の減少が始まる2017年からは、そのような時代は終わりを告げるだろう。所得-消費曲線が下向きになった瞬間、便乗に明け暮れるだけだった三流は淘汰(とうた)され「プンファ・キムパプ」のような「一流」だけが生き残るようになる。消費者を見下す時代は、もうあと何年も続かないだろう。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)記者(WeeklyBiz部長)

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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