本研究グループの基本方針
● 卒業研究
私の研究室では計算機を用いた研究が主体になりますので、FORTRAN或いはC言語による簡単なプログラミングができることが必要条件です(当然、十分条件ではありません)。 従って、工学基礎学類で開講している「シミュレーション工学」の単位を取得していること、或いは同程度のプログラミングができることが求められます(未修得者は事前に相談して下さい)。
そのうえで、シミュレーションに従事するための物理的な基礎知識の習得に早い時期から勉強する必要があります。ただし、これまでの経験から「研究者としての可能性は学業成績では全く測ることができない」と考えています(下述の「大学院での研究」を参考に)。むしろ、学業成績の優秀な人よりも、物事を深く徹底的に考えるタイプの人を私の研究室では歓迎します。一方、講義中に携帯電話をしたりガムを噛んでいるような普通の常識の無い人や、卒業のための単位取得のみが目的で覇気の無い人は遠慮して下さい。研究課題は、私のところで進行中の半導体研究プロジェクトに関わったものが中心になります。 従って、研究成果(努力)と本人の希望によっては、国内で開催される研究会や学会での研究発表の機会を積極的に設定しています。実際、卒論の研究成果を応用物理学会等で毎年のように発表しています。
● 大学院での研究
学位取得後に研究者になることを想定して研究指導を行ないます(ただし、実際に学位取得後に研究者になれることを保証するものでは当然ありません。それは本人の心掛けと努力次第です)。従って、卒業研究に比べて理論的な研究に対する興味とやる気がさらに強く要求されます。
研究をすすめるためには根気がいるという事実を、充分に認識しておいて下さい。何か新しいことを創造するためには、我々のような凡人は毎日の愚直なまでの努力に頼るしかありません。 研究に一旦取りかかったら、(その研究成果や評価等などには惑わされず)寝食を忘れて無我夢中で取り組むという姿勢が必要なのではないでしょうか。 そうすれば、世の中を少しでも前進させるような貢献ができるということを信じています。「日本」の学生がよく陥るパターンとしては、 「研究がなかなかうまくいかない」とか「その研究に意味や意義があるのだろうか」と不信になってその研究に興味を失い、他の分野にすぐに気移りするというものです。 シミュレーションのような理論的研究では決してスムーズに研究は進みませんし、その研究成果がすぐに評価に繋がるとも限りません。独創的な研究であればあるほど、研究成果の意味や意義が認められるためには時間がかかるものです。それ故に独創的なわけです。世界中の優秀な研究者によって真剣に研究がなされているのですから、すぐに考えつくような安易なアイディアなど独創的であるはずもないのです。勿論、 いつまで経ってもその研究成果が評価されないようであれば、(世界的な見地から)その研究者の評価が自然に下されていくものです。ただし、国内の評価と国際的な評価は往々にして異なっている場合が多いので、国内での評価はあまり気にしない方が良いでしょう。国内での知名度(これは多分にその人の肩書きや出身大学の人的ネットワークによる場合が多いものです)に比べて、世界的には殆ど知られていないという「有名」な大学教官や研究者が数多くいるのも事実です。国内だけでしか通用しない肩書きや学歴に惑わされないということも重要です(実際にはとても難しいことでしょうが...)。 「ある分野で業績を挙げられない人(すぐに分野を跳び移るのでquitterと呼ばれます)は他のどの分野においても業績を挙げることはできない」というのは周知の事実です。 ただし、どうしても自分の研究内容に興味が持てないというのであれば、早い時期に見切りをつけて他の研究室(グループ)に移るということも必要です (この判断の兼ね合いが難しいのですが、 いつでも相談にのります)。
研究テーマの設定は、抽象的で大きな研究テーマを私が設定したあと、各人が研究をすすめながら具体的なターゲットを絞っていくというかたちで進めます。定期的(毎週1回程度)に研究内容の進捗打ち合わせを行います。
国内外の研究会や学会での研究発表と英語での論文発表を修士修了までに行うことを義務づけています。
当研究分野向けの書籍
私の現在の研究分野への入門書として、適当な標準的教科書を以下に挙げておきます。
1. Physics of Semiconductor Devices (J.-P. Colinge) Kluwer
2. Advanced Theory of Semiconductor Devices (K. Hess) IEEE Press
3. The Monte Carlo Method for Semiconductor Device Simulation (C. Jacoboni
and P. Lugli) Springer
本研究グループの研究課題と協力関係にある研究グループ
私自身の能力や工学部に属している国家公務員という立場上、自分の趣味的研究にのみ没頭することは許されないと私は考えています。従って、少しでも世の中に貢献できるような工学的な意味をもつ問題を研究課題として設定しているつもりです。 具体的には、半導体素子(電子および光デバイスの両方)における電子輸送に絡んだ物理的で基礎的な問題を深く突っ込んで研究をしています。これは、素子の微細化(今や既存のデバイスでもナノスケールです)に伴って、電子輸送の解析理論でこれまで当然視されてきたさまざまな物理的仮定が破綻していることが動機になっています。 このような問題を物理の基礎原理からひとつひとつ謎解きをするように考えています。研究においては他の研究グループと議論を行ないながら進めています。
● 半導体における電子量子輸送の研究
米国 IBM T. J. Watson Research Center(1995年 - )
伊国 Univ. of Modena & Univ. of Bologna(1997年 - )
● 極微細半導体素子における電子クーロン相互作用の研究
半導体理工学研究センター(STARC)(1996年 - 2003年)
東芝 LSI基盤研究センター(2003年 -)
● poly-Si TFTにおける電子移動度モデルの研究
東芝 生産技術センター プロセス研究センター(2002年 -)
● SiCにおける衝突イオン化現象の研究
産業技術総合研究所 パワーエレクトロニクス研究センター(2002年)
(注1)すべての研究課題は理論およびシミュレーション研究です。また、これらの研究は科研や受託研究等の外部資金によって研究費が支援されています。ただし外部資金の導入に関しては、研究の自由度が束縛されないことを最優先にしています。(つまり、必要以上に「見栄を張らない、欲張らない」がモットー!)。詳しい研究内容については「国際会議や海外での招待講演と主要論文リスト」(後日ポストします)を参考にして下さい。
(注2)研究契約等を交わした上記協力関係のある研究グループとは別に、個人的に親しくかつ研究遂行上やり取りのある研究グループは欧米を中心に数多くあります。(例、Illinois大学、Stanford大学、Arizona州立大学、Bell研究所、Cornell大学、Purdue大学、Princeton大学、MIT、UC Berkeley、Georgia工科大学、Texas大学、Notre Dame大学、Aachen工科大学、ETH、Vienna工科大学、Denmark工科大学、etc)。これらの多くは半導体デバイス研究のいわゆるCOE(Center of Excellence)です。「世界的な視点」でCOEや研究動向等を知るためにも、これらの研究拠点のホームページを見ることを強く勧めます。
本研究グループの構成員(H22年度)
大学院生
(博士後期課程)
(博士前期課程)
数理物質科学研究科2年 唐澤 貴彦
数理物質科学研究科1年 北出 大祐
数理物質科学研究科1年 藤田 貴之
卒業研究生
応用理工類4年 徐 丞完
応用理工類4年 田中 伸和
本研究グループ出身者の進路
卒業研究出身者
東工大大学院、筑波大大学院、東芝、富士通、セイコーエプソン、NTTデータ、鹿島建設、etc
修士出身者
東芝(研究職)2名、富士通、NTT東日本
専門
半導体デバイス物理(電子輸送)
デバイス・シミュレーション(モンテカルロ法およびドリフト拡散法)
非平衡量子輸送の基礎理論
略歴
趣味
球技全般(特に野球、サッカー。ただし、当然、既に引退)、剣道、能鑑賞、歴史小説
連絡先