JR福知山線脱線事故から6年を迎えるのを前に、事故の負傷者や家族らが23日、兵庫県尼崎市の事故現場周辺で「メモリアルウオーク」を行い、約30人が雨の中で2.8キロ歩いた。追悼や事故の風化防止が目的で、昨年に続き2回目。その中には、東日本大震災の支援に駆け付けた「日本レスキュー協会」(兵庫県伊丹市)のスタッフの姿もあった。
同協会の安隨(あずい)尚之係長(31)ら。東日本大震災の発生直後から1週間、岩手県陸前高田市などで捜索にあたった。ウオークに参加したのは、脱線事故で腰の骨を折った伊丹市の増田和代さん(41)が昨年6月、同協会を訪れたのがきっかけだった。
事故後、増田さんは精神が不安定になり、睡眠薬などを欠かせない日が続いた。だが、シーズー犬を飼うことで徐々に癒やされていったという。「私は小型の犬を飼うことで救われた。レスキュー犬やセラピー犬による活動をもっと知ってもらいたい」と、協会に参加を呼び掛けた。
事故で妻が重傷を負った兵庫県川西市の中島正人さん(47)は「6年たっても心と体が癒えない人がいることを忘れず、風化防止・安全の実現を願う」とあいさつ。尼崎市内の公園を出発し、事故現場で献花した後、JR尼崎駅まで歩いた。
協会のレスキュー犬とセラピー犬各1頭も参加。安隨係長の妻で協会スタッフのめぐみさん(32)は「6年前の事故でレスキュー犬を派遣できなかったことを今も悔やんでいる。今後、どういった協力ができるのか。追悼の思いも込めて歩きたい」と話した。
「負傷者と家族等の会」を支援する津久井進弁護士(41)は「後遺症を抱えた人をどう救っていくのか、まだはっきりしていない」と指摘した。【小坂剛志、衛藤達生】
毎日新聞 2011年4月23日 12時12分(最終更新 4月23日 12時46分)