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【社会】

水産物3.5万トン涙の投棄 宮城沿岸

2011年4月23日 06時59分

腐敗した冷凍魚を漁港に並べ分別する水産会社の関係者ら=22日、宮城県石巻市の石巻港で

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 被災した宮城県沿岸部の水産会社では、倉庫に残った水産物の腐敗が深刻になっている。特例で海洋投棄が認められた水産物は県内主要三港で三・五万トン。廃棄前には分別が必要で、解雇された元従業員たちが悪臭の中で作業を続けている。

 石巻港にトラックが次々と到着し、荷台いっぱいの魚を船着き場に降ろした。被災した倉庫から集められたカツオ、タラ、ヒラメの山。群がるウミネコをかき分けながら、かっぱとマスク姿の男女百人が、工具を手に山の中からビニールや段ボールを取り除く。

 分別後、魚は海洋投棄のために土砂運搬船に、段ボールなどは産業廃棄物の集積所にそれぞれ運ばれる。

 「いつまでたっても終わらない。でもやらなきゃ会社は始まらねえ」と成沢浩二さん(50)がぼやく。家族は無事だったが、津波で自宅が半壊。三十年勤めた水産会社が被災し、解雇された。

 二週間前、分別作業を元社長から紹介された。毎日朝八時から夕方四時まで。腐臭は下着にまでこびりつく。帰宅すると、妻と三人の子から「臭い」と煙たがられる。

 それでも家族を養わなければいけない。額は決まっていないが、県から手当が出る。廃棄が終われば、元の会社も再開し、採用してくれると期待する。

 海洋投棄は海洋汚染防止法で禁止されているが、焼却が難しいため、七日から石巻、気仙沼、女川の三港に限り、国が特例で認めた。石巻港では水産会社経営者が中心になり「水産復興会議」を結成、元従業員に作業への協力を呼び掛けた。

 石巻だけで倉庫と港に毎日計二百人を動員し、トラック延べ二百台を使っても、廃棄し終わるまで、一カ月以上かかりそうだ。 (原田遼)

(東京新聞)

 

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