2011年4月23日 2時30分 更新:4月23日 2時46分
東日本大震災で決壊した福島県須賀川市の藤沼湖は、震度6弱近い揺れで、盛り土でできたダム(高さ約17.5メートル)に亀裂が生じ、決壊につながった可能性のあることが、福島大などの現地調査で分かった。高さ15メートルを超すダムが地震で決壊したのは、1854年の安政南海地震で満濃池(香川県)が破堤して以来とみられる。藤沼湖は1957年のダムの設計基準制定以前に建設されており、専門家は老朽化したダムを中心に耐震性を再点検する必要性があると指摘する。
藤沼湖は貯水容量約150万トンのかんがい用ダム湖で、1949年に建設された。「アースフィルダム」と呼ばれる台形状に盛り土をしたダムで、地元の江花川沿岸土地改良区が管理する。3月11日の地震直後に決壊し、湖水がほぼすべて流出。下流で8人の死者・行方不明者が出た。
調査した川越清樹・福島大准教授(流域環境システム)によると、湖北東部の堤の長さ約130メートルのダムがほぼ全域で決壊していた。川下に向けて右岸の土がすべて流出しており、右岸から決壊が始まったとみられるという。「下流の集落では地震が終わってすぐに水が流れて来たという証言がある。巨大地震の強く長い揺れで亀裂が入って水が噴き出し、ダムが負荷に耐えられなくなったのではないか」と指摘。同様に盛り土で造った近くの羽鳥ダムでも地震後に亀裂が見つかった。田植え前で湖水位が高かったことも要因の一つと考えられるという。
多くのダム建設に携わった芝浦工大の岡本敏郎教授(地盤工学)は決壊のメカニズムについて「地震でダムの堤体に滑ろうとする力が加わり、高さが下がった。そこに亀裂が生じてさらに水圧への抵抗力が減り、決壊に至ったのではないか」と補足する。岡本教授は「今回の地震で設計時に想定した以上の地震に耐えたダムが多くあるのも事実だ。特に古いダムについては、通常の耐震性以外にも固有の弱点がないか、細かく早急に点検をすべきだ」と指摘する。
【八田浩輔】