出産時の帝王切開が遅れたため男児に脳性まひの障害が残ったとして、両親が「小樽病院」(北海道小樽市)を経営する社会福祉法人「北海道社会事業協会」に約1億7000万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁(古久保正人裁判長)は20日、両親側の訴えをほぼ認め、約1億4000万の支払いを命じる判決を言い渡した。
判決によると、母親は04年10月11日午前、陣痛が来たために、かかりつけだった同病院に入院。午後9時40分、帝王切開で男児を出産した。男児には脳性まひの障害が残り、その後、身体障害者1級の認定を受けた。
胎児が仮死状態にあって危険だと、医師がどの段階で診断できたかが争点になり、病院側は「心拍数は正常で、直ちに帝王切開をすべきだったとは言えない」と主張。しかし判決は「胎児の心拍数に異常が現れた午後6時15分の段階で仮死状態にあると診断できた」と指摘し、帝王切開の決定が午後8時10分ごろと遅れたために胎児が長時間にわたって低酸素状態に置かれ、脳性まひの原因になったと結論付けた。
そのうえで▽障害で得られなくなった将来の収入(約4000万円)▽今後も含めた介護費用(約6000万円)▽男児への慰謝料(約2600万円)--などを賠償額に認定した。
同病院は地域周産期母子医療センターに指定されている産科救急医療の拠点病院で、道によると年間500件程度の出産を扱っている。同協会は「判決を精査して今後の対応を検討したい」としている。【久野華代】
毎日新聞 2011年4月21日 1時55分