きょうの社説 2011年4月23日

◎新幹線駅舎整備 地元の声を最大限生かして
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構が、JR金沢駅の新幹線駅舎について三つのデザイン 案を金沢市に示し、5月中旬の最終決定を経て、北陸新幹線駅舎の姿がすべて出そろうことになった。当面の終着駅である金沢駅舎のイメージが具体的に見えてきたことで、地元の期待感が高まり、開業へ向けた沿線地域の準備も加速していくだろう。

 すでに富山、高岡、黒部市は3案から1案を絞り込み、機構側に回答している。その際 、外壁デザインや天窓の広さから駅名板の位置に至るまで、いくつもの付帯意見を付けた。駅舎内部の地元産材活用は3駅に共通する。

 新幹線駅舎は都市づくりの新たな基点となり、交通の玄関口にとどまらず、土地の個性 や表情を象徴するランドマークとしての意味を持つ。住民が誇りや愛着を感じられるよう、細部にわたって、こだわっていくのは当然である。

 金沢駅の場合、巨大なガラスドームや鼓門がすでに金沢の顔として全国に広く定着して いる。新しくできる新幹線駅舎もそれらと調和し、駅の個性を際立たせるデザインが望ましい。

 具体的なイメージが示されたことにより、これからは駅舎の姿を明確にする段階に入る 。市民、県民から募る意見も参考に、地域の視点に立った発想で、できる限り具体的に要望を伝えていきたい。機構側も地元の声を最大限に生かしてほしい。

 金沢駅舎はデザイン決定後、来年2月までに実施設計を終え、2012年夏の着工をめ ざす。富山、新高岡(仮称)、新黒部(同)の3駅は実施設計が始まり、それぞれ今年末から12年度当初の工事発注が見込まれている。機構側はコンセプトの範囲内で修正可能としており、自治体は実施設計の確定へ向け、細部を入念に詰めていく必要がある。

 金沢市は5月13日までホームページやチラシで駅舎案の意見を募集する。GW期間中 は金沢駅がにぎわい、クラシック音楽祭の会場にもなるだけに、デザイン案をアピールする場として金沢駅を活用する工夫があっていい。駅舎への関心を開業へ向けた機運の盛り上げにつなげる発想も大事である。

◎地方3法案成立へ 改革の理念が試される時

 国と地方の協議の場の創設や、地方自治体の仕事を法令で縛る「義務付け・枠付け」を 緩和する法案など「地域主権関連3法案」の修正案が衆院本会議で可決され、今国会で成立する見通しとなった。

 この3法案は「国と地方が対等の立場」に立ち、「地域の自主性を尊重しながら、国と 地方の協働で国のかたちをつくる」という地域主権戦略大綱を具体化する一歩である。東日本大震災の復旧・復興事業が本格化するこれからは、まさに地域主権改革の理念が試される時である。

 地域主権改革は民主党政権の「一丁目一番地」といわれる最重要政策である。「地域主 権の表現は憲法の国民主権に反しており、不適切」という自民党の主張をはねつけてきたが、大震災に伴って地方の主体性を高める3法案の早期成立を求める声が高まり、法案名と条文から「地域主権」の文言を削除して成立させることで自民、公明両党と合意した。

 3法案の成立を後押しする形になった東日本大震災は、主権の意味や中央政府と地方自 治体の関係についての認識をあらたにする契機ともなった。

 福島原発事故を含め、大震災による国家的な危機に際して、国が主導力を発揮し、自治 体と一体になって国民の生命、安全を守る。自衛隊や警察、海上保安庁、消防などによる救助・救援活動は、地域主権などというあいまいな概念ではなく、国家主権に基づいてなされるものである。

 しかし、これからの地域社会の復興計画の立案と具体化に当たっては、各自治体の意思 が尊重されなければならない。政府と自治体のほどよいバランスの上に立って初めて復興計画が円滑に進むことを再認識したい。

 国と地方の協議の場の設置や義務付けの廃止は、地方分権改革の一環として自治体がか ねて求めてきたことである。大震災で自治体機能が弱体化し、国に頼らざるを得ない状況から、民主党がめざす「地域主権改革」の停止を求める声が一部に出ているが、分権改革の流れを止めてはなるまい。