きょうのコラム「時鐘」 2011年4月23日

 北陸新幹線の金沢駅舎のデザインが3案提示され、市民の意見を求める段階に入った

富山や高岡と違って、金沢駅は既にもてなしドーム・鼓門ができている。着物姿に例えれば、顔と胸元の意匠が先にあって、両袖の模様をどうするかの選択であり、一から造るわけではない。ドームを中心に据えて両腕を横に伸ばす姿をイメージすればいい

新幹線の技術と安全性の高さは今震災で証明された。だが、長年にわたって各地で没個性の駅舎を作り続け、都市景観の面からは反省が必要だ。広島も岡山も仙台も盛岡もほとんど区別がつかない。北陸新幹線の駅舎はその反省の上にある

富山なら立山連峰が見え、高岡は瑞龍寺の構造美を思わせ、金沢には歴史都市の香りがするものを後世に残したい。進化する鉄道文化が都市の個性とつながって、新しい日本の風景が生まれるのである

東京駅が、大正初期の姿に戻すため改修中だ。横綱の土俵入りをイメージした両翼に広がる赤れんが建築である。正面の皇居とつなぐ道路も整備した。駅は時代とともに、周囲の街とともに成長する。美しく磨き続ける力が要る。