2011年4月23日(土) 0:00~0:49
2011年4月24日(日) 17:00~17:49
見どころ
アラブ諸国で市民革命の波が続いている。発端となったチュニジアでは、23年続いたベンアリ独裁政権が崩壊した。比較的政情が安定し、経済発展も著しいチュニジアで市民デモが突然わき瞬く間に拡大、政権を倒した衝撃がパンドラの蓋を開け各国に伝播した。アラブ世界で異例の市民革命が成功した裏には、ツイッターやフェイスブックなど、インターネットが大きな役割を果たした。それによって結ばれた、海外在住のアラブ人たちも大きな力となった。在日チュニジア人青年もフェイスブックを通して、革命に参加していた。
衛星TVが起こした東欧革命から20年。史上初の「ネット革命」はどのようにして起きたのか。番組では、チュニジアでフェイスブックに書き込まれる映像記録や、ネット上でのインタビューも交え、史上初のフェイスブック革命の舞台裏を探る。
iPhoneに届いた青年の死
都内のイタリア料理店で働くチュニジア人青年は、フェイスブックで190人の友人とつながっている。友人や、そのまた友人から故国の映像やコメントが次々と送られてくる。フェイスブックの「共有」機能を使えば、情報や映像を、瞬時に自分とつながる人たちに送れるのだ。去年12月、彼は、母国で野菜売りの青年が警察の横暴な取締りを受け、抗議の焼身自殺をしたことを知る。長期政権下で1人当たりのGDPが40万円まで倍増し、西欧化も進んでいたチュニジア。しかし貧富の格差は拡大し、富裕層を生む一方で、庶民とくに若者の失業率が高かった。自殺した青年も、大学でコンピューターを学ぶ夢を抱きながら、死んだ父に代わって一家9人の生活を支えるため、1日400円ほどの日銭を稼いでいたという。閉塞感を逃れ、縁故をたどって来日した青年の心にも、強く響くものがあった。
ストレートな情報を共有する若者たち
年が明け、在日青年のフェイスブックには、各地のデモ映像が飛び込んでくる。多くの若者は、検閲の厳しいTVや新聞よりも、YouTubeやフェイスブック、ツイッターなどネットメディアに信頼を置いていた。ネット上で、闘う市民のストレートな映像を見ると、抑えていた怒りに一気に火がついた。デモの映像には、携帯電話を高く掲げる手が多く映っている。撮影して事態を共有しようとする若者。それまで、ただ映像を観るだけだった青年も、送られてきたデモの映像を、自分と繋がる友人に対して送り始めた。故国を遠く離れ、直接参加は出来ないが怒りのコメントを付ける。こうした「共有」で事態を知り、デモに参加した友人もいた。
政府のネット統制も効果なく
チュニジアはネット普及率3割台で、8割の日本と比べると少ないが、効果を発揮するには十分だった。デモの拡大にあわてた政府はプロバイダーに命じ「有害」サイトへの接続をブロックしたが、その解除ソフトがすぐに出回る「いたちごっこ」の状態となった。またフェイスブックは大統領側近や富裕層も愛用していたため、ブロックすらされていなかった。
野菜売りの青年の死から革命に至るまで、情報を共有していた在日青年とその友人たち。いま、その思いは揺れ続けている。市民が勝利したかに見えるが、実際は側近が引き継いだ暫定政府に対して市民の反発は続いている。暫定政府はネット上で影響力のある反政府活動家を政権に取り込み、事態の収拾を図ろうとしているが、混乱は続いている。この“フェイスブック”革命は、リーダーの指導力と組織力によって成し遂げられる従来の市民革命と違い、情報を共有することによって革命へのエネルギーが生み出されたからだ。
自分のページを見る在日チュニジア人 ブバケル・モウムニさん
ブバケルさんと在日チュニジア人 ムラド・サルミさん
※放送内容は、変更になることがあります。詳しくはNHKオンラインをご覧ください。