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新北九州空港開港

[新空港解題] その立場と役割、可能性・2
現状下における新北九州空港の集客力

さて、ここからは単純に新空港が開港時どのくらい便利か考えてみたいと思います。よくJRの広告で「博多駅まで~分」とかいう時間の比較で利用客を誘う広告がありますが、空港を考えるときはこの所要時間比較のやり方で考えていくのが妥当でしょう。ただし、どの交通手段を使うかによって、公平性は著しく削がれます。誰でも利用できるという点で、ここではバスで比較してみましょう。

たとえば山口宇部空港から新山口駅までは30分、下関駅までは75分(山口宇部空港サイトより)です。大分空港では、中津駅まで90分、由布院駅まででも105分(ツーリズムおおいたサイトより)かかります。

対して新北九州空港の場合、下関駅までは50分。中津までは65分(北九州市サイトより)、ここでは大幅なアドバンテージが期待できます。簡単に言えば希望が持てるのですが、これが鉄道を使ってみた場合、話はごろっと変わります。

福岡空港から新下関駅まで新幹線を使えば約40分で着いてしまいます。さらに福岡―羽田線の航空割引運賃を適用すれば、値段もお得になりかねません。さて、下関市民にとってはどちらが利用価値が高いか。ここで深く論ずる必要はないでしょう。

この例で分かるとおり、はっきり言ってしまうと、北九州市内でも新空港ができてもさほど便利ではないところはあります。鹿児島本線というやたら便利な幹線を持つ黒崎や八幡にある企業の中には、新北九州空港へ行く時間よりも福岡空港へ行った方が速くて安いでしょう。今のままでは勝負になりません。

スターフライヤーは市内の企業から出資してもらいました。出資企業に優待券を発行することで利用客数を確保しようという狙いがあります。しかしこれは一般客にはなんのメリットもありません。このことと貨物が扱いやすいことから、新空港をビジネスに特化した空港にすべきとの意見もあります。

これら地域からたとえ高速バスが出ようと、不便であることには変わりありません。空港アクセス鉄道など空港への移動時間が画期的に短縮されでもしない限り、それを不便に感じる人には新空港は対岸の出来事です。

現実論として、公務員や企業人など一定の「縛り」がある人たち以外は、今回の開港で新北九州空港の方が福岡・宇部・大分より便利な人は新空港を利用しますし、そうでない人は今のままでしょう。極めて当たり前の話なのですが、それを無視して空港セールスを行っているフシも見られるため、あえて述べてみました。

新空港へのアクセスは、今のところマイカーや乗り合いタクシー、バスに限られています。近隣にある需要を手っ取り早く掘り起こすためには、前述したとおり空港へのアクセス鉄道の導入が必須不可欠といえます。車社会に徹した空港、なんて発想もここでは論じられていますが、さて自家用車と飛行機とは相性の良いものでしょうか?

確かに自家用車に合わせた考え方は円滑な道路交通を考える上で重要なものですが、人はクルマにはどうやってもなれません。高齢者や年少者など、それをどうしても扱えない方が出てきます。また飛行機が車ごと目的地まで運んでくれるのであればワンストップで済みますが、それは今の段階では採算が合いません。

利用客が一度自家用車から降り、飛行機経由でまたレンタカー等に乗らなければならないのであれば、最初からそれらを必要としない交通手段で他地域と勝負できる方がより有利です。だからこそ福岡空港は長崎空港や熊本空港、鹿児島空港などに勝ち、新千歳並みのハブ空港の位置づけを与えられているのですし、これからもそうでしょう。

新北九州空港は、どうやっても勝てないそのアドバンテージを縮めていき、補完機能を担う道を選んだ方が楽ですし、失敗がありません。

国際線の誘致を考えているのであれば、なおのことユニバーサルデザインに即した空港を目指すべきであり、それに対する公的援助を惜しむことは、吝嗇だと言えます。道路には特定財源を出せて公共交通には出せないのか、他の先進国ではバリアフリーの観点から手厚く出しているのに、なんて見方もありますね。

空港を「時間を短縮するための手段」と捉えるのであれば、それに徹するのが整備する側の役割だと思いますが、いかがでしょうか。(つづく)

編)新北九州空港開港にあたって、識者に寄稿を願いました。

庵田 綏宇(いおた すいう)
工学修士。近代地域史学・産業考古学専攻。
http://www.geocities.jp/iota_titanus/

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