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北九州地区、急転直下で奈落の底~日銀短観

日本銀行下関支店および北九州支店は1日、2009年3月の企業短期経済観測調査(短観)を公表した。

北九州支店管内の全産業の業況判断指数(DI)は-42。前回より39点も急落下して、1998年12月につけた平成不況の二番底で過去最悪の-49に接近した。下落幅は1974年8月→12月の-26を軽軽と更新して、1974年5月の調査開始以来最悪。これまでの常識が通用しない急激かつ凶暴な悪化だ。

下関支店管内の全産業の業況判断指数(DI)は-43。前回より17点低下して、2002年3月につけた平成不況の二番底で過去最悪の-50が見えてきた。下落幅としては過去3番目の大きさ。山口地区のマイナスは8期連続。

2008-9年 業況判断指数―全産業(括弧内は予測値)
/ 3月 6月 9月 12月 3月 6月予想
山口 -9 -12 -16 -26 -43(-34) (-52)
北九州 +9 +8 +10 -3 -42(-25) (-55)
大分 -6 -9 -18 -28 -42(-38) (-47)
九州 -5 -8 -14 -20 -38(-31) (-44)
中国 -7 -13 -17 -29 -50(-43) (-57)
全国 -4 -7 -14 -24 -46(-38) (-52)

外部環境

今回の調査期間(2月23日~3月31日)は米国のサブプライム問題に端を発した信用崩壊が金融危機を経て、実体経済に大打撃を与えた時期だ。特に2月は先進各国で凶悪な経済指標が立て続けに発表され、米国では株価が昨年秋の安値を割り込んで、先行きは全方向が漆黒の闇に包まれ総悲観の様相だった。

3月に入り、米国ではISM製造業景況指数が連続上昇したり、日本では景気ウォッチャー調査が2ヶ月連続で上昇したりと、景気転換の先行指標が底入れを示唆し始めて、日米の株価が急反騰するなど状況に変化が見られる。しかし日銀は調査票を3月10日までに回収しており、変化の兆しは今回の調査に反映されていない。

今回の全国短観で注目された大企業の先行き業況判断は11期ぶりに改善する方向にあり、日銀短観にも変化の兆しは見て取れる。ただ、業種別に業況判断をみると、自動車が-92、電気機械が-69、鉄鋼が-65など、関門都市圏の牽引業種には悪夢のような数字が並んでおり、北九州地区や山口地区の景気回復は遅れる可能性がある。

支店発表の管内短観に目を移せば、北海道、沖縄、九州などの万年不況地域が上位に並ぶ一方、地方圏の優等生だった名古屋や前橋などが下位に沈んでおり、今回の景気後退が日本の牽引車を直撃したことが窺える。

北九州地区

北九州支店管内は製造業の業況判断指数が-57。前回調査より51点暴落して、下落幅としては過去の最悪記録(-32、1992年2月)を塗り替えた。全国最良の水準にあった非製造業の業況判断指数も今回は-32と、前回調査より30点急落下して、下落幅としては過去の最悪記録(-23、1982年5月)を塗り替えた。

直近2期の下落幅は製造業で-61点、非製造業で-48点にも及ぶ。今回の景気後退は足元の地面が突然裂けて、奈落の底に突き落とされたかのような変化幅の大きさが特徴だ。過去の景気後退のように何年かかけて悪化すればまだ対応のしようがあったが、今回の景気後退は軌道修正の猶予を一切与えなかった。

2008年度の売上と経常利益は、製造業・非製造業ともに下期の猛烈な悪化により減収減益で着地しそうだ。製造業は下期赤字化。2009年度計画は、製造業が減収大幅減益、非製造業が微減収微増益を見込む。製造業は上期赤字継続。売上高経常利益率は製造業が低下傾向ながら、非製造業は上昇波動を保つ。

景気の先行指標である設備投資は、製造業が2008年度見込みを下方修正して9.3%減、2009年度計画は先送り分があるため30.2%増。非製造業は同見込みを上方修正して34.1%増のため、同計画は45.9%減。全産業では同見込み0.5%減に対し、同計画9.4%増と、全国や九州の動向とは逆行しそうだ。

製造業では、生産設備判断の「過剰」が激増、製品在庫水準判断も「過大」が激増、製品需給判断は圧倒的な「供給超過」に陥り、目を覆いたくなるようなひどい有様だ。仕入価格判断は資源価格の急落を受けて下落基調だが、販売価格判断の下落も同時進行して企業は恩恵を受けていない。

雇用人員判断は製造業で余剰人員だぶだぶの状態ながら、非製造業が「不足」を堅持した。北九州では第一交通産業(本社、北九州市)やウチヤマホールディングス(本社、北九州市)のような好景気下で人を集められなかった企業が、今回の人余りを好機と捉えて採用に意欲を燃やしている。

不良債権の増加により全国的に金融機関の余裕がなくなっているが、北九州地区では山口銀行がシェア奪取のため積極融資を続けており、今回も貸出態度判断は「緩い」をなんとか堅持した。しかし、企業の資金繰り判断は他の地域と同じように「苦しい」。借入金利水準判断は政策により一時的に「低下」。

4月の管内金融経済概況によれば、「北九州地区の経済は一段と悪化している。輸出は大幅な減少が続き、設備投資も収益環境の悪化を背景に減少に転じている。個人消費は弱まり、住宅投資も低調に推移している。公共投資は横這い圏内で推移している。生産はこうした需要動向を反映して、急速な減少が続いている」。

先行きは製造業・非製造業ともにこの世の地獄へ踏み入る見通しだ。しかし、この見通しは未曾有の変化に狼狽し、総悲観が蔓延していた頃のものだ。足元では3月の「かんもん景気ウォッチャー調査」の先行き判断が8期ぶりに改善している。新年度に発動される景気対策なども勘案すれば、目先のさらなる悪化は考えにくい。

山口地区

下関支店管内の製造業の業況判断指数は-43、非製造業の業況判断指数は-39。下落幅は全国平均程度で、北九州地区ほどに凶暴ではない。業種別では石油・石炭が-100。すなわち、全員が「悪い」と回答したのが印象に残る。輸送用機械(マツダ)と不動産は±0で着地した。

2008年度の売上と経常利益は、製造業・非製造業ともに下期の猛烈な悪化により減収減益で着地しそうだ。製造業は下期赤字化。2009年度計画は、製造業・非製造業ともに減収「増益」を見込む。非製造業は大幅増益予想。設備投資は製造業・非製造業ともに2008年度の激増を受けて、2009年度計画は落ち込みそうだ。

生産・営業用設備判断は「過剰」が拡大。雇用人員判断は「過剰」が3倍増。製商品在庫判断は「過大」が拡大。対する製商品・サービス需給判断は「供給超過」が拡大。仕入価格判断は「下落」に転じたが、販売価格判断も「下落」が拡大した。金融機関の貸出態度判断は「厳しい」が拡大。資金繰り判断は「苦しい」が拡大。

4月の管内金融経済概況によれば、「県内景気は大幅に悪化している。輸出の大幅な減少が続いており、素材・加工とも減産の動きが続いている。設備投資は計画を下方修正する動きが広がっており、先行きについても大幅な減少が見込まれる。この間、住宅投資・公共投資は低調に推移している」。

先行きは製造業・非製造業ともに悪化の見通し。非製造業の予測値は未踏の領域だ。しかし3月からの変化の兆しや、新年度に発動される景気対策なども勘案すれば、実際は足踏み状態に留まるか、一時的にせよ薄日が差すのではないか。

付録

2009年3月 日銀支店発表の業況判断指数―全産業
業況判断 各地の支店
±0~ なし
-1~-10 なし
-11~-20 那覇 -17
-21~-30 長崎 -30
-31~-40 松山 -32、函館 -33、釧路 -36、北海道(札幌) -36、後志(札幌) -36、青森 -37、九州(福岡) -38
-41~-50 北九州 -42、大分 -42、鹿児島・宮崎(鹿児島) -42、神戸 -43、下関 -43、広島 -44、香川(高松) -44、高知 -44、熊本 -44、横浜 -45、全国 -46、水戸 -46、盛岡 -46、旭川 -48、近畿(大阪) -48、徳島(高松) -48、中国(広島) -50
-51~-60 静岡 -51、東北(仙台) -52、新潟 -54、北陸(金沢) -54、岡山 -54、甲府 -56、名古屋 -56、福島 -58、京都 -59、山陰(松江) -60、山形 -60
-61~-70 前橋 -61、秋田 -62、松本 -67

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