旭硝子(本社、東京都)は15日、日本国内における自動車ガラス需要が昨年秋以降半減したのを受けて、2009年末までに北九州工場(戸畑区牧山)の自動車ガラス事業を廃止し、愛知工場(愛知県武豊町)、相模工場(神奈川県愛川町)、アジア生産拠点での製造に集約することを決めた。北九州工場は事実上閉鎖される。
北九州工場は旭硝子の2番目の工場として1914年に操業を開始した。創業当時は板ガラスの製造工場。1917年にソーダ灰の国産化に初めて成功し、化学工場のパイオニアとして名をはせた。2003年に化学品事業から撤退、その後は北九州工業地帯に集積する自動車産業向けに自動車ガラスを製造していた。
北九州工場の従業員数は174名。自動車ガラス事業に従事する約170名が転勤か早期優遇退職を迫られる。抜け殻の北九州工場はもっぱら板ガラスの保管倉庫になるそうだ。北九州工場の整理に伴い、旭硝子は特別損失として約50億円を計上する。
2009年3月の日銀短観業種別業況判断は、自動車が-92、電気機械が-69、鉄鋼が-65など、北九州工業地帯の牽引業種が全業種中もっとも傷んでいることを示した。1月の東芝北九州工場の事業移管、今回の旭硝子北九州工場の閉鎖に止まらず、今後北九州では工場閉鎖や事業縮小が相次ぐ恐れがある。
2002年~2008年の景気拡大期に製造業の国内回帰が進んだ原因は二つあった。一つは、円安バブル。各国通貨に対して異常な円安が進んだことで、国内工場が相対的に価格競争力を持った。もう一つは、製造業派遣。国内においても人材を使いたい時だけ使えるようになり、企業の雇用リスクが軽減された。
円安バブル修正で製造業の海外流出がふたたび始まっている。また、派遣切りが世間の激しい非難を浴びて、企業は派遣社員の雇用に社会的・道義的リスクが伴うことを知った。仮に再度円安に振れたとしても、製造業は国内で雇用を抱えるのを嫌い、国内立地を避けると言われている。
今回の不況は先行きに望みが持てないのがもっとも苦しい。製造業の海外流出は企業業績が回復した後に本格化しそうだ。北九州市は工場誘致による経済活性化で先の景気拡大期に大成功を収めたが、次の景気拡大期に同じ手は使えない。別の手立てを考えなければ、長い冬の時代が待っている。