ガゾーン関門都市圏

2011年3月5日更新

小倉D.C.タワー

設計・施工
井出昭治=大林組+梓設計(設計)、大林組(施工)
竣工・規模等
2008年12月16日着工、2011年3月5日竣工、RC造、地下1階 地上41階、高さ145.777m、敷地面積2849.34㎡、建築面積1993.07㎡、延床面積3万2641.28㎡、住戸数195(以上、建築計画のお知らせほか)、事業費約85億円
場所
北九州市小倉北区室町2-77-1他24筆(登記)
画像

西小倉駅前交差点から見た小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

勝山通りの現場前から見上げた小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

長崎街道の起点、木の橋(常盤橋)から見た小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

ともに和の意匠 極彩色のリバーウォークと、モノトーンの小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

ともに和の意匠 地面に埋まった松本清張記念館(真正面)と、背伸びした小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

清張通りから小倉城内越しに見上げた小倉D.C.タワーの高層部 2010年7月

画像

紫川船溜越しに見た小倉D.C.タワー 2010年7月

画像

西小倉駅前第一地区 下と同じ構図 2010年7月

画像

西小倉駅前第一地区 上と同じ構図 2006年12月

あらまし

小倉D.C.タワーは、西小倉駅前第一地区市街地再開発事業による超高層の分譲共同住宅。事業主は西小倉駅前第一地区市街地再開発組合。売主は大和ハウス工業。名称のD.C.は「District of Culture (文化地区)」「Development of Community (地域社会の発展)」「Daiwa house Created (大和ハウス製)」の頭文字という。

事業の経緯

室町二丁目はかつて国鉄小倉駅前の一等地として栄えたが、1958年の小倉駅移転により寂れた。西小倉駅前第一地区の再開発は1980年に準備組合が設立され、1989年に都市計画決定がなされた。地区の場末化により商業開発は難しく、当初から住宅開発の計画だったが、当時タワーマンションは奢侈であり、バブル崩壊により事業化のめどがつかなかった。2003年には組合設立申請が取り下げられた。

しかし、地権者は諦めなかった。北九州がバブル景気以来の好景気に沸いた2006年、大林組・大和ハウス工業グループが特定業務代行者として名乗りを上げ、再開発事業はより大型化して再始動した。着工はリーマン・ショック直後の2008年12月。その後景気は未曾有の落ち込みを見せるが、この事業までが滑り込みセーフだった。これ以降の事業は小倉駅南口東地区を含め、軒並み中止に追い込まれた。

建物は2011年3月5日に竣工式。同年11月に再開発組合が解散して、30年来の再開発が完了する。

建造物

大和ハウス工業が「九州最高層タワーマンション」と誇らしげに謳うように、小倉D.C.タワーはその高さが注目を集めている。当初、西日本最高峰となる棟高150m(最高160m)を目指したが、計画変更により棟高145.777mとなった。西日本では宮崎のシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート(154m)、広島のリーガロイヤルホテル広島(150m)、アーバンビューグランドタワー(149m)に次いで4番目の高さになる。

棟高が低くなったのは、駐車場を4層から3層に圧縮して機械式を入れたからだ。機械式は月に何度か使う程度の行楽用自動車を格納する場所であって、毎日出し入れする自動車を止めるところではない。自家用車の交通手段分担率が45%(2000)に達する北九州では、駅前立地であっても自動車は必須だ。出庫・入庫の容易さを犠牲にしたコスト削減はすべきでなかった。「最高層」を売りにするのならなおさらだ。

床の構成は、地階が機械室と駐輪場、1階の西小倉駅からリバーウォークへ至る動線側が貸店舗、反対側が共同住宅の表玄関とロビー、2~4階が197台(機械式118台、平置き79台)収容の駐車場、5~41階が総戸数195戸の分譲マンション。共同住宅の分譲価格は2220万円~1億3000万円。億ションは最上階にあり、広さ199㎡という。1階の店舗区画は延床1000㎡程度を8分割しており、個人商店向けとみられる。

超高層ビルは形状に工夫を凝らすとコストがかさむ。小倉D.C.タワーは駐車場をケチるくらいだからあっさりした形をしている。下層の駐車場を台座として、か細い住宅棟を空に積み上げる。土地に余裕のある北九州でこんな超高層は本来必要なく、象徴性を獲得するためにせいいっぱい背伸びした建物だ。超高層は買い手優位の北九州の新築住宅市場で、住宅購入者にアピールするための最新手段になっている。

和の意匠

画像

2006年に公表された環境影響評価方法書の参考図(右)は、地元勢が手がけたトーマスタワー(2008)をのっぽにした感じだった。この垢抜けない建物は大林組の設計事務所によって洗練され、工業都市に似合わしい硬質な外観になった。もっとも大林組は工業都市を意識したのではなく、北九州市の有識者で構成する景観アドバイザーからの意見をもとに「小倉城や長崎街道のイメージを表す瓦の黒と漆喰の白、日本の伝統的なモノトーンを建物の基本色彩とした」という。

リバーウォーク北九州(2003)で極彩色を採用しながら、いまさらモノトーンもなにもないだろうと突っ込まれそうだが、リバーウォークはあれでいて「茶器と茶請け」に着想を得た和の意匠だ。小倉城下の新建築は、思えば、松本清張記念館(1998)、小倉城庭園(1998)を含め、すべて和の意匠を取り入れている。しかし街区の景観統括者がいないために、各々が和の意匠を独自解釈して、まったく統一感が感ぜられない街並みができあがった。

2010年7月25日作成

資料

参照記事(外部サイト)
小倉D. C. TOWER公式ホムペ
西小倉駅前第一地区市街地再開発組合公式ホムペ
小倉D.C.タワー テナント募集 - アイユーホーム
建物の概略(当初計画 着工した建築物とは異なる) - 北九州市
大和ハウス工業、「小倉D.C.タワー」概要発表 - 関門通信
小倉DCタワーを見つめるマカロニ星人ペンネちゃん。 - flipflop
関連項目(ガゾーン内)
レーベン21 - 有料老人ホーム。板チョコ形ではなく、地上21階の筒型タワー。
門司港レトロハイマート - 黒川紀章設計の分譲タワーマンション。地上31階。
メディックス三萩野 - 分譲タワーマンション付の総合病院。地上27階。
さわらびガーデンモール八幡 - 八幡駅前の住宅商業複合施設。地上19階×2。
城内タワー - 住所が「城内」。白亜の分譲タワーマンション。地上27階。
クロッシングタワー - 賃貸タワーマンション。板チョコ形状。地上21階。
ヴェルタワー下関駅前マリンビュー - 公益施設と分譲マンション。地上22階。
戸畑C街区 - 主題は「都心に新しい丘を創る」。区役所が核の複合施設。
小倉タワー - コカコーラ風の分譲タワーマンション。地上28階。
オリエント キャピタルタワー - 下層が店舗の賃貸タワーマンション。地上20階。
トーマスタワー - スーパー銭湯付の賃貸タワーマンション。地上25階。
オリエント トラストタワー - 香春口の賃貸タワーマンション。地上33階。
門司ミッドエア - 門司駅北口の分譲タワーマンション。地上28階。
ポレスタータワー大手町リーモ - 大手町の分譲マンション。地上20階。
小倉D.C.タワー - 再開発。分譲タワーマンション。地上41階。

ご意見等

公開 私信  

©2011 ガゾーン 転載自由。著作権は関門通信またはその情報提供者に属します。

Kokura D. C. Tower (Condo.)