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2011年4月22日(金)付

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統一選後半―棄権はもったいない

身近な政治家を選ぶ統一地方選の後半戦が、24日に投開票される。市区町村長選や議員選など約750の選挙がある。東日本大震災の避難者は、いまも13万人を超え、一部の地域で選[記事全文]

原発事故賠償―改革の妨げにするな

福島第一原発の事故に伴う損害賠償の枠組みについて、政府の原案が明らかになった。東京電力が支払いの主体となる。官民で新設する「機構」を使って、足りない資金を国費で肩代わり[記事全文]

統一選後半―棄権はもったいない

 身近な政治家を選ぶ統一地方選の後半戦が、24日に投開票される。市区町村長選や議員選など約750の選挙がある。

 東日本大震災の避難者は、いまも13万人を超え、一部の地域で選挙が順延される。なお続く震災の衝撃に、選挙の話題はどうしてもしぼみ気味だ。

 知事選などの前半戦は、民主党の不戦敗続出もあって低い投票率に終わった。とりわけ41道府県議選の平均投票率は初めて50%を切り戦後最低だった。

 だが震災の直後だからこそ、足元の政治にもっと目をこらそう。私たちは日々、被災地や避難生活への行政の対応を見ながら、市町村などの自治体の役割の大きさを実感している。

 よりよい自治体をつくるためには、優れた首長や議員を選ぶことが欠かせない。

 その第一歩は棄権しないことだ。期待できる候補者が見あたらない。自分の1票では何も変わらない。そう思って棄権するのは、もったいない。

 なぜなら、ろくな候補者がいないと思って棄権したら、そんなろくでもない候補者に投票した人の一票の重みが相対的に増すからだ。一部の支持者だけの票で当選を狙う議員には、棄権が多い方が都合がいい。棄権という沈黙を政治家は恐れない。

 それに1票の力は侮れない。少ない票の動きが、議会の顔ぶれを劇的に変えた例もある。

 前半戦で躍進した「大阪維新の会」だ。大阪府議・市議選とも40%台の低い投票率で勝った。代表の橋下徹知事は「投票率が10%は上がらないと過半数は無理」と繰り返していたが、実際には2ポイントも上がらなかったのに府議会で過半数を制した。

 最後まで投票先を決めかねる有権者も多いだろう。首長候補はまだ主張の違いを見極めやすいが、乱立する議員候補から1人にしぼるのは悩ましい。

 毎朝、駅前で立っていて元気がよさそうだ。町内会で世話になった。身の回りの政治家とはいえ、少なくともこんな選び方をしている場合ではない。

 朝日新聞の1月の全国自治体議会アンケートによれば、4年間で首長提案の議案を一本も修正しない、議員提案の条例をつくらない、議員の賛否を公表しない、いわゆる「3ない議会」が全体の3分の1あった。

 行政に対する監視機能も立法能力も乏しく、情報公開も遅れている。こんな議会を放置してきた責任は住民にある。

 失政のツケを払わされる主権者としてここは考えどころだ。せめて候補者の議会改革案を点検してから投票に行こう。

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原発事故賠償―改革の妨げにするな

 福島第一原発の事故に伴う損害賠償の枠組みについて、政府の原案が明らかになった。

 東京電力が支払いの主体となる。官民で新設する「機構」を使って、足りない資金を国費で肩代わりし、東電の毎年の事業収益から返済させる。その間、東電の経営は政府の管理下に置かれる。

 賠償金の総額が巨額になるのは間違いない。東電だけでは対応しきれない場合を想定し、被災者への支払いが滞ることのないよう準備を整えておくのは当然だろう。大量の電力債が流通している金融市場を混乱させない工夫も考える必要がある。

 国費を投入する以上、東電の経営陣に、事態をここまで悪化させた責任を厳しく問うことは論をまたない。社員の処遇や資産売却などを含め、徹底的なリストラは不可欠だ。

 それ以外にも課題は多い。株主は責任をとらなくていいのか。融資している銀行は無傷でいいのか。1基あたり1千億円以上ともいわれる廃炉の処理費用はどうするのか。

 支払い責任は東電が担うといっても、今の仕組みであれば最終的には電力料金に転嫁され、利用者が負うことになる。福島の原発が首都圏の電力需要をまかなっていたことを考えると致し方ない面もあろうが、政府がきちんと説明するべきだ。ほかの電力会社も機構に入る場合、負担が全国の利用者に広がる可能性もある。

 なにより、枠組みそのものが今後の電力行政改革の妨げにならないよう、注意が必要だ。

 ふつうの企業ならつぶれてしかるべき事態にもかかわらず国が支援に乗り出すのは、東電に代わって管内に電力を供給できる企業がないためだ。電力業界は、強い政治力によって、地域独占を維持してきた。

 今回の枠組みは、国の負担をできるだけ抑えるため、東電の存続を前提にしている。原発を推進してきた国の責任は不明確なままだ。国費投入に対する国民の批判を避けることばかり気にしていると、大きな課題を見失いかねない。

 原発の一義的な維持管理の責任を、電力各社に委ねたままでいいのか。地域独占が緊急時の電力融通を妨げている面はないのか。新エネルギー開発をだれがどのように担うのか。

 これらは、原発事故への対処や賠償責任とは別の角度から大いに見直していくべき問題であり、電力産業の姿を大きく変えうるものでもある。

 福島原発が提起した問題の本質を見すえて議論を深めたい。

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