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 4辺固定スラブ・片持ちスラブ

 スラブについての話をしましょう。スラブとは、はやい話が床版のことです。
ここでは、一般的な4辺固定(4つの辺がガッチリ梁などにくっついている)と、
片持ち(バルコニーなど、先が宙に浮いている)スラブについて取り上げます。

スラブ厚さの決まり
 まず、スラブは、スラブにかかる荷重や大きさによって、必要な厚みが決められています。

周辺固定
t=lx/30
片持ち t=lx/10

ここで、
  t: 所用版厚
  lx:短辺方向の内法スパン
  ly:長辺方向の内法スパン
  λ:ly/lx
  wp:積載荷重+仕上荷重

スラブ配筋の決まり
 スラブの配筋は、最大応力を受ける部分で以下のような条件があります。

  普通コンクリート 軽量コンクリート
短辺方向 20cm以下
15cm以下(9φ未満の溶接金網)
20cm以下
15cm以下(9φ未満の溶接金網)
長辺方向 30cm以下
スラブ厚の3倍以下
20cm以下(9φ未満の溶接金網)
25cm以下
20cm以下(9φ未満の溶接金網)

 周辺固定のスラブ厚算定式は、とても難しいですね。でも、これは「こういうものだ」ということで納得してしまう
しかありません。また、最近の建築基準法改正により、新たに「lx/30」というのが加わりました。これを満足しないと、
たわみの計算が必要になり、たわみの制限が大変厳しいものとなっているので、これも無条件にクリアしておいたほうが
いいと思います。 式は、必要な値を代入して計算してあげればいいのですが、ポイントが2つほどあります。それは、
(1) lx・lyの数値は内法(うちのり)であること
(2) wpは、積載+仕上荷重であること
 1の「内法」というのは、梁の内側から測っていいですよ、ということなんです。梁の中心からとる必要はないんですね(下図)
 2の積載+仕上荷重というのは、どういうことでしょうか? 荷重の中に、1つ足りない要素があることに気づきましたか?
 そう、この計算ではスラブ自重を入れる必要がないんです。 自重をいれて計算すると、厚さがかなり必要になって
 しまいますので、この計算には注意しましょう。


 片持ちスラブの場合は簡単で、荷重に関係なく、持ちだし長さの1/10の厚さ(元端で)が必要になります。
例えば、持ちだし長さが180cmなら、持ちだしの根元の厚さが18cmあればいいことになります。
しかし実際には、あまりにも持ちだし長さが長かったり、先端に手すりや壁などが付いている場合は、1/10では
長期たわみなどで障害が起こる可能性があるので、余裕をもった設計にした方がいいでしょう。(+2cmくらい)
どうしても厚くできない場合、鉄筋を計算上よりも多くいれるなどをして対処することが望ましいです。
 また、マンションの構造設計などで、廊下・バルコニーの片持ちスラブは、スラブレベル(SL)から少し下げる
ことがよくありますが、その関係により、片持ちスラブが付く梁の主筋が邪魔になって、スラブの主筋が適切な
高さに配筋できないことがあります(配筋検査にいくと、すべての片持ちスラブで下がりすぎだったりする^^;)
そういう観点からも、片持ちスラブの配筋は余裕を見た方がいいようです。

4辺固定スラブ

◆応力計算
 まずは、スラブにかかるモーメントを算出します。これは、4辺固定の場合、以下の表のようになります。
そのときの応力の状態は、表の下の図のようになります。
これまたムズカシイ式ですけど、こういうもんだと思ってください。ただ計算機を使うのが面倒なだけで、
値を入れれば答えがでてくることには変わりありませんので。。。
 よくよく見てみると、端部上端より、中央下端の方が1/1.5 だけ小さい値になることがわかります。
 この式で、単位幅(1m)あたりの曲げモーメント(M)が算出されます。

短辺方向
(主筋)
端部(上端筋)Mx1   1/12wx・lx2  
中央(下端筋)Mx2   1/18wx・lx2
長辺方向
(配力筋)
端部(上端筋)My1   1/24w・lx2
中央(下端筋)My2   1/36w・lx2

ここで、
lx : 短辺方向の内法スパン
w: 全荷重

  ly: 長辺方向の内法スパン

 ◆鉄筋のピッチを算出する
 上の式でMを出したら、あとは鉄筋の間隔(ピッチ)を求めるだけです。
 ピッチを出すのに便利な式があります。
 S=1.75・at・d/M
    S: 必要ピッチ(cm)
    at: 使用する鉄筋の断面積(cm2
    d: スラブ面から鉄筋中心までの距離(cm)
    M: モーメント(t・m/m)
 これで、鉄筋のピッチがcm単位で算出されます。

なぜ1.75atd/Mなのか?
 なぜこの式で出てくる値が鉄筋のピッチなのか、それは式を展開していけばわかると思います。
 元々は、梁などで必要の鉄筋の本数を求める時にも使われる
  M=At・ft・j
 という式から来ています。(便宜上、Atとatを使いわけています)ここから、ftは引張応力度で鉄筋
SD295の場合、2.0(t/cm2) jは、0.875d になります。また、Mだけが(t・m)と、メートル単位
になっているので100をかけてcm単位にします。そして鉄筋断面積Atについて解くと、
 At=100M/1.75d
 になります。この時Atは、単位幅あたりに必要な鉄筋の断面積になります。
 このAtを、鉄筋1本の断面積で割ると、何本必要かというのがわかります。
 必要本数= At/at (at:使用する鉄筋の断面積)
単位幅が1m(100cm)なので、100を必要本数で割ると、必要ピッチが出てくるのです。
 S=100/必要本数
これらを1つにまとめると、
 
となります。ちなみにD19以上でSD345を使う場合には、ft=2.2(t/cm2)ですので、
S=1.925・at・d/Mとなります。

★配筋計算をしてみよう!
以下の条件で、実際に配筋計算をしてみましょう。

短辺スパンlx= 4.0m  長辺スパンly= 5.6m 
版厚(仮定)t=15cm  仕上+積載荷重Wp=0.64t/m2 
鉄筋(仮定) D10D13交互(主筋上端) D10(その他)

まず、仮定した版厚が所用版厚より厚いことを確認します。
 λ=5.6/4 = 1.4

曲げモーメントを算出します。
W=0.64+0.15×2.4=1.0t/m2
Wx=5.6/(4.0+5.6)×1.0 =0.793

Mx1=1/12×0.793×4.0=1.057
Mx2=1/18×0.793×4.0=0.705
My1=1/24×1.0×4.0  =0.667
My2=1/36×1.0×4.0  =0.444
・使用鉄筋: D10D13交互、D10
 主筋上端at=(0.71+1.27)/2=0.99
   その他at=0.71
・dを算出
  dは、スラブ厚からかぶり厚さと鉄筋径の半分を引く。配力筋側はさらに主筋の鉄筋径を引く。
主筋 (外側)d=15−3−(1.3/2)=11.35→11.3
配力筋(内側)d=15−3−1.3−(1.0/2)=10.2

短辺・上端筋(端部) Sx1=1.75×0.99×11.3/1.057 =18.5(cm)
短辺・下端筋(中央) Sx2=1.75×0.71×11.3/0.705 =19.9(cm)
長辺・上端筋(端部) Sy1=1.75×0.71×10.2/0.667 =19.0(cm)
長辺・下端筋(中央) Sy2=1.75×0.71×10.2/0.444 =28.5(cm)

あとは、設計配筋として、キリのいい数値にして、D10D13-150@ や、D10D13-175@に
すればいいのです。
 注意!
 このスラブは、配筋計算例として、配筋が厳しくなるような条件で考えられたスラブです。
実際には、長期たわみなどの問題から、現実的なスラブとは言えないものですので、
ご注意ください(これくらいのスラブならもうちょい厚くした方がいいかも^^)

 実際に配筋をしてみよう
とりあえず、上の計算により、最大の応力を受けるところで必要な鉄筋径とピッチを求める
ことができました。では、この計算結果を元にどのように配筋をすればいいのでしょうか。
上の計算結果は「最大の応力」部分での結果であり、その他の部分はこれより少なくて
済むハズなんですが……。

1) モチアミ配筋の場合
 モチアミ配筋っていうのは、算出したピッチですべて通してしまう配筋のことをいいます。
上端筋なら、端部で求めたピッチですべて配筋し、中央部分でも鉄筋を減らさず、また下端筋なら
中央で求めたピッチで端部まで通してしまう配筋です。これは一番簡単な配筋ですね。
小さいスラブで、端部や中央を分けるほど大きくないものや、特殊な荷重のかかるもの、
屋根スラブなどもモチアミにすることが多いようです。また、これらとは別に「現場が配筋を
ラクにするため」「ややこしくなって混乱するから」という理由もあるようです。 

上の計算例をモチアミ配筋にすると……

  主 筋 配力筋
上端筋 D10D13-175@ D10-175@
下端筋 D10-175@ D10-175@

という感じになります。ここで主筋とは、短辺方向にかける鉄筋のことで、配力筋とは長辺方向にかける
鉄筋のことを指します。主にスラブの荷重は主筋によって梁に伝達されるものと考え、配力筋は、スラブ荷重を
主筋に渡すための鉄筋という考え方をしています。 この配筋例は一例で、特に配力筋下端の配筋が、計算では
285@以内であればいいのに175@にしたのは、意見が分かれるところでしょう。

2−1)一般の配筋の場合(15dの定着)
 端部と中央の配筋を分けるだけの十分なスラブの大きさがあり、一般の部分で使われるスラブでは、
計算で求めた部分以外では、配筋を半分に減らし、中央の上端筋は鉄筋を入れないことが多いようです。
 半分に減らす場合、中央と端部は”Lx/4”(短辺長さの1/4)で分け、定着長さとして15d
(鉄筋径の15倍の長さ)を余分に取ります。これは短辺・長辺共に同じで、長辺方向の端部・中央
だからといって長辺長さの1/4で分けるのは誤りです
。お間違いのないように。
 また、主筋・配力筋でも、Lx/4の幅の部分については、モーメントを値を半分にすることができる、という規定
があり、RC規準にも記されています(けっこう見落としがち)。モーメントの値を半分にするということは、単純に
鉄筋量を半分にできるということなので、これを当てはめればさらに鉄筋を減らすことができます(ここでは
その部分の範囲を”側部”と呼びます)。
この場合の配筋例は、

  主 筋 配力筋
  端部 中央 側部 端部 中央 側部
上端筋 D10D13-175@(1) D10-250@(2) D10-175@(3) - D10-350@(4)
下端筋 D10-350@(5) D10-175@(6) D10-350@(7) D10-350@(8) D10-175@(9) D10-350@(10)

といった感じになります。これだけではわかりにくいので図を描くと、以下のようになります。
図中の番号は、配筋例の中の青字の番号の位置を指しています。

スラブ上側(上端筋)
   
スラブ下側(下端筋)

2−2)15dの定着ではなく、ベンド筋を用いる場合
 ベンド筋とは、折り曲げ筋のことです。上端筋で、端部から中央にさしかかって鉄筋を減らすことができる地点で、
定着長さをとって止めるのではなく、下側に折り曲げて、下端筋の中央の鉄筋として使う方法です。
基本的には、2−1)の配筋と同じです。ただ、私達設計者は何とも感じませんが、現場はベンド筋を使うのは
かなり面倒だと思います(笑)。 スラブ厚・短辺方向の長さなどにより、折り曲げ位置などが変わってくるのですから。

2−3) 中央上端筋を入れる場合
 屋上スラブなどは、ひび割れ防止のために中央上端筋も必ず配筋します。その場合は端部の鉄筋の1/2になります。
今回の例では、主筋でD13-350@(またはD10-350@)、配力筋でD10-350@となります。


片持ち(キャンテ)スラブ

片持ち(キャンテ)スラブとは、大梁から張り出しているような、1方向だけで受けているスラブのことです。
配筋は、スラブの根元部分の、上側の鉄筋がポイントになります。
◆応力計算

スラブの積載荷重と、先端に手すり壁などがある場合、片持ちスラブにかかる力は
上の図のようになります。
これは、普通に反力を出すように計算していけば算出できます。
持ち出し長さをLとすると、
 M=1/2・W・L+P・L
となります。
 このとき、片持ちスラブの場合、割り増し係数をモーメントに掛けます。
 Mc=α・M
  αの値は1.5や1.33などの数値を使うことが多いようです。
あとは、1.75atd/Mcで鉄筋のピッチを出してあげればいいのです。

 冒頭でも書きましたが、片持ちスラブの算定には、十分に安全を見ておきましょう。
 また、スラブ厚もL/10では、1.7mの長さの場合不十分であるとの研究もあるので、
厚さも余裕をもった設計が肝要です。

★配筋計算をしてみよう!

 持ち出し長さ1.8mのキャンテスラブ
 上載荷重(スラブ含む) 0.66t/m2
 手摺(先端集中荷重)  0.42t/m
スラブ厚(基端) 20cm 使用鉄筋D13

M=1/2・W・L+P・L
 =1/2×0.66×1.82+0.42×1.8=1.83
Mc=1.5×1.83=2.75
 1.75Atd=1.75×1.27×15=33.34
33.34/2.75=12.1cm(D13ピッチ)→D13-100@

配筋例:
  主 筋 配力筋
上端筋 D13-100@ D10-250@
下端筋 D10-100@ D10-250@
配筋図は右図の通りです。




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