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建物のしくみ 3

■基礎の構成

 基礎は、建物を支える上で最も大切なものと言っていいでしょう。
基礎の形状は、上部の建物の規模や地盤の状態によっていくつかの形態が
あります。大まかに分けて見ていきましょう。

 1) 独立基礎
 小規模の建物で、地盤の状態も良いときに使用します。杭基礎に対して、
直接基礎に分類されます。それぞれの基礎が独立している状態で、基礎の
最も基本的な形です。地盤の浅い部分が良質な状態であることが求められる
ので、条件が揃わないと独立基礎は採用出来ません。

 2) 布基礎
 小〜中規模の建物に採用されます。これも直接基礎に分類されます。
布基礎は、建物の荷重がかかる柱を基礎梁で繋ぎ、その基礎梁から
フーチングを出すことによって基礎として建物を支えます。独立基礎も
基礎梁で繋げることが多いのですが、独立基礎の時の基礎梁は、単に
繋いでいるだけの役目(つなぎ梁)なのに対し、布基礎の場合は基礎
梁そのものがフーチングを出すことによって基礎の役割を果たします。
 住宅から中規模のRC造・S造など、大変多くの建物に採用されています。

独立基礎
(独立基礎も梁で繋ぐのが基本です)
布基礎

 3) べた基礎
 中規模の建物に採用されます。これも直接基礎です。
 基礎の部分を1枚の版にしてしまって、版全体で建物の荷重を支える
基礎で、直接基礎の中では最もしっかりしている基礎です。
布基礎にしてもほとんどがフーチングで占められてしまうような場合、全部を
1枚の版にしてしまった方がいいことも多いので、そのような時にべた基礎
を採用します。また、地下水位が高い場合に、地面からくる湿気を抑えるために
採用することもあります。
 
 最近では、個人住宅でも多く採用されています。

 4) 杭基礎
 中規模〜大規模の建物に採用されます。地盤面下に長大な杭を打ちこんで、
建物を支えます。
 杭基礎にも2種類あり、地盤の深いところにある堅い層まで杭を到達させて、
その堅い層でもって支持させる支持杭と、土が杭に与える摩擦力でもって支え
摩擦杭があります。支持杭として設計していても、結果としてその大半が
摩擦力でもって支えられていることもあります。
 杭は、使用している材料や工法によっても分けられます。

  ・場所打ちコンクリート杭
 杭を打つ部分を掘削した後、鉄筋を組んだものをその中に入れ、コンクリート
を打設して作る杭で、大きな杭を作ることができます。既製のコンクリート杭と
分けて場所打ちコンクリート杭と言います。

  ・既製コンクリート杭
 既に完成されているコンクリート杭を使用する方法です。工場で作られた杭な
ので、場所打ちコンクリートに比べて、杭体は品質が良くコンクリート強度も大きい
のが特徴です。工事の仕方は、掘削を先にしてから挿入していく方法(プレボーリ
ング工法)や、掘削しながら挿入していく工法(中堀り工法)があります。杭を
直接叩いていく打込み工法もありますが、騒音が激しいので近年ではあまり採用
されていないと思います。

  ・鋼管杭
 既製の鋼管杭を使用します。既製コンクリート杭と比べて軽く、運搬が容易
です。また、鋼材の特徴として水平力に強い傾向にありますが、腐食に対する
検討を必要とします。工法は既製コンクリート杭と同じような方法が採られます。

  ・木杭
 木材を杭に使用します。木は完全な乾燥状態か又は完全な湿潤状態にして
おけば腐らないので、地下水位の常水面下部分に設置します。木杭は通常、
摩擦杭として使用します。

 このカテゴリは構造一般ということもあって、基礎の話はあまり深く立ち入り
ません。次に、最終的に建物を支えている地盤と、それを確認する地盤調査に
ついて見てみましょう。

■地盤の構成

 地盤には、粒径(土を構成する粒の大きさ)によって、分類することが
できます。

粒 径
土 質 粘土 → シルト → 砂 → 礫(れき)

 粒径の大小によって、特徴が分かれますが、この粒径の違いだけで
地盤の良否を正確に判断することは出来ないと言っていいでしょう。
それらを判断するのは、次に解説する地盤調査が不可欠です。
 また、土は自然のものなので、上記の様にきちんと分類できるわけでも
なく、「粘土質シルト」とか、「シルト質砂」「砂質粘土」など、細かく分けると
無数の組合わせになります。

 ・ローム層
 何万年も前に降り注いだ火山灰が元となっている土で、「赤土」などと
言われるものです。上記の表では粘土に分類されるものです。
非常に柔らかく使い物にならないという印象を持つ方もいるかと思いますが、
荒らされることの無かった良質なローム層は意外と地耐力(地盤が荷重に
耐えられる力の大きさ)があり、100kN/m2(約10t/m2)の地耐力を見込め
るものもあります。関東では関東ローム層が一般的ですが、地域によって
様々なローム層があります。

次に、各土質の特徴(とくに欠点)を見てみましょう。

 ・液状化現象(砂質土の問題)
 大地震が起こった時には耳にすることがあるかもしれません。阪神・淡路
大震災の時も、液状化現象による被害が発生しています。
液状化現象は、
   1) 粒径がだいたい均一の砂質層で、
   2) 地盤が軟弱な上に
   3) 地下水位が高い
場合に特に発生する危険性が高くなります。
 普段は砂の粒子の空間にあって安定していた地下水が、地震で揺すられる
ことによって、砂の粒子間の隙間が変形し、地下水の水圧が高められて地上
に吹き出してきます。液状化現象のメカニズムは、実際にはもっと難しい理論
なのですが、ここでは割愛します。
 液状化現象が起こると、地盤の浅い地点を支持層として頼っていた建物は、
液状化の発生によって砂が水に浮いているような状態に変わった結果、
足元をすくわれたように倒れてしまうのです。
 粘土層ですと粒径が小さいので地下水は容易に動くことが出来ません。また、
礫層では隙間が多すぎて地下水の水圧が確保出来ないので、液状化にはなり
にくいと一般的に言われていますが、地震の規模によっては礫の液状化の発生
が見られたこともあるそうです。

 ・不同沈下(粘性土の問題)
 更地の上に建物を建てるということは、地盤に重さが掛かるということです。
それによって、どんな形であれ沈下が発生します。
 砂質土の場合、隙間が多く地下水がすぐに抜けるので、沈下はあっという間に
終わるのですが、粘性土ですと地下水が抜けるのに時間が掛かるので、沈下
するのに時間が掛かります。
 この時の砂質土の沈下を即時沈下と言います。即時沈下はその名の通り、
建物を建てている時点で沈下は終わっているので、長期的な問題になること
はほとんどありません。
 それに対して、粘性土の沈下を圧密沈下と言います。圧密沈下は建物が竣工
した後も沈下が続くので、思わぬ障害が発生することもあります。圧密沈下
が引き起こす障害の1つが不同沈下なのです。
 不同沈下とは、粘性土の層の厚さや堅さの違いによって、沈下の速度や
大きさが異なるために、建物の部分によって沈下量が変わってくる現象で、
それにより建物が傾むいたり、構造体に大きな亀裂が入ったりします。
 液状化現象は地震が起こらないと発生しませんが、不同沈下はある意味、
建物を建てた時点では表面化していないものの、すでに回避しようのない事態
に陥っていると言えるので、より一層厄介な問題です。
 これを回避するには、不同沈下を招くような軟弱な粘土層を貫いて、深い層を
支持層とすることや、地盤改良、または転圧を十分に行って竣工後の沈下を
減らす方法などがあります。基礎梁を強固なものにして一部分だけが下がる
のを構造で抑えるのも有効です。

■地盤調査

 地盤がどれだけの荷重に耐えられるか、また上記の様な問題が発生する
のかどうか、地盤の状態を確認することは極めて重要なことです。これを
地盤調査と言います。基礎の大きさや、調査の必要がある深度・土質の
違いによって、いくつかの調査方法がありますが、ここでは4つの地盤調査
方法を紹介します。

 ・ボーリング調査
 地中深く掘り進んで、試料の採取を行います。これにより、その地点の
地層がどのようになっているかを知ることができます。後述する標準貫入
試験を行う際に必ず実施されます。常にセットで行われるので、標準貫入
試験も合わせてボーリングということもあります。

 ・標準貫入試験
 中規模以上の建物を建てる時には、必ず実施されます。
 矢倉のようなものを建て、ロッドと言われる細長い棒を、重さ63.6kgの重りの
落下によって打ち込んでいきます。その結果30cm打ち込むのに必要だった
重りの落下回数をN値といい、これが地盤の硬軟を評価する最も大事な数値
となります。基礎の大きさや種別も、このN値によって決まります。
 土質を選ばずに採用できますが、砂質地盤の方が正確な値が出やすく、
軟弱な粘土層に対しては、他の試験の方が適しています。
 打ち込むロッドの先端には、土を採取するためのサンプラーが付いています。
これが上記のボーリング調査用の試料となります。
 試験の結果を集計し、報告書という形で以下のような柱状図を作成します。
ボーリング・標準貫入試験の結果、その深度に該当する土質とN値を柱状図
としてまとめることによって、視覚的に地質が理解できるようになります。
 柱状図は最も大事な資料の1つです。

柱状図
柱状図



 ・スウェーデン式サウンディング試験(SS試験)
 標準貫入試験と比べて、小規模・軽量の建物を建てる地盤の調査に
適しています。戸建て住宅を建てる際の地盤調査として最も一般的です。
ロッドの先端がドリルのようになっていて、最初は軽い重りから載せて
行きます。非常に軟弱な地盤なら、この時点でズブズブとロッドが入って
いきます。1kN(100kg)の重りを載せた状態でも貫入しなくなったら、ロッドを
回転させ、25cmロッドが貫入するのに掛かった回転数をカウントします。
これらのデータから、N値に換算することもできます。

 当サイトは構造設計のサイトで、構造設計を必要とするような規模の
建物の場合は、上記の標準貫入試験を行うのが普通ですので、私たち
にとってこの試験はあまり一般的ではありません。しかし、資材も少なく
てすみ、試験の時間も半日〜1日程度で、費用も数万〜10万ほどと
決して高くないので、新築される場合には必ず調査するべきと思い、
ここで取り上げました。

新築される場合は、施工者や設計者に地盤調査のことを確認してください。

 ・平板載荷試験
 直接基礎(独立・布・べた基礎)の底盤の高さとなる予定のレベルまで掘
削し、そこに30cmの円形の載荷板を設置します。その載荷板の上から荷
重を掛けて、それによる沈下の量や変化などから、地耐力を求めます。
 この試験は深いところではできないので、杭基礎を想定している場合は
採用できません。また、載せる荷重が大変重く、重りとして重機そのものを
載せるくらいの重さが必要になることがあるので、この試験はかなり大規模
になります。地盤が頼りになりそうで、中規模の建物を直接基礎でやりたい
場合などに、この試験を行うことがあります。


 ここまで、建物の骨格から足元の基礎部分、そしてそれを支える地盤の
解説をしました。一般の方を対象に「触り」の部分だけを取り上げてきました
が、いかがでしたでしょうか。
 次ページでは、建築の設計ってどんなものがあるのか、特に構造屋とは
何をやっているのかを解説します。



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