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建物のしくみ 1

 人が生きていくためには「棲み家」の存在は重要です。また、文明的な
生活を送るためには、買い物をするための百貨店や公共サービスを行う
役所、ホテルや放送局なども必要です。これらのサービスが、雨が降ったら
ダメ、風が強いとダメ、では話になりませんので、それらを有効に動かしてい
くためには、建物という最大の施設を用意してから初めてできるようになるの
です。

■建物の構成

 雨・風を防ぐために建物が必要なのですから、屋根は必要です。
当たり前ですね。それらを支えるためには、が通常は必要です。
また、柱をしっかりと地面で支えるために、基礎が必要です。

この程度は別に建築関係の方でなくても、常識として理解できるでしょう。
しかし、全ての建物が同じ構成(仕組み)によって建てられているのかと
いうとそうではなく、いくつかに分類することができるのです。


構造材料の4類型


 1) 木構造 (W造)
 住宅などでは最も一般的な材料です。「木」という天然の材料を森から
切り出してきて、乾燥させたものを使います。"wood"の頭文字を取って、
W造と言ったりします。
 現場に運ぶ前に、柱や梁に使う木材を加工します。これを刻みと言います
(機械によるプレカットもあります)。刻みの間に基礎工事を進めておきます。
刻みが終わったものを現場に運んで柱や梁を建てます。これが建方です。
建前ということもありますが、建前は上棟式のことを指す場合もあります。
建方の時は2階に梁を上げる作業などがあり、重機などを用意しなければ
ならず1人ではまずできないので、大工さんも応援を呼んだりして一斉に
とっかかります。結構壮大です。
棟上げが終わった時点では、工期としてはまだ半分もいっていないような状態
ですが、骨組みはすでに完成に近い状態で、建物が壊れるような構造上の欠陥
は、この時点で既に発生していることが多いようです。

木構造の特徴は、以下のような長所・短所があります。

長所 短所
強度が強い   
加工が容易
軽い
燃えやすい
腐朽しやすい
品質が一定でない

 一番の利点は、比重に対し強度が強いという点です。これは人によっては
意外に感じるかもしれませんが、鉄やコンクリートに比べて非常に軽い割には、
それほど材料として弱いわけではないので、材料が自分自身を支えるのに
苦労せず、部材の大きさに比べて、大空間を作り出すことができるのです。

 短所は、燃えやすいというのが大きいでしょう。構造材自身が火をあげて燃える
のは木構造だけだと言っても過言ではありません。また、湿気が多いと腐りやすく、
節や反りなどがあって全ての材料が同じ強度を持つわけではないので、設計に
問題がなくても材料の選び方によっては不具合になることもあります。

木造住宅の軸組(イメージ図)
木造住宅在来工法の軸組(イメージ図)

 ・2×4工法(ツーバイフォー工法)
 木造住宅には、在来の工法の他に、2×4工法というのがあります。
これは、横幅2インチ・縦幅4インチの部材を単位とし(1インチ=約2.54cm)
これを沢山使用することによって耐力のある壁を作り、それによって建物を
支える工法で、在来工法が荷重を柱で支えるのに対し、2×4工法は壁に
よって支えているのです。そのようなことから、在来工法・2×4工法をそれ
ぞれ、軸組工法・枠組壁工法とも言います(こちらの呼び方が正式名称です)。

  ・2×4工法は万能か
 2×4工法を中心に扱っている住宅メーカーのサイトを見ると、いかに2×4
工法が優れているかということを強調して解説していますが、それほどのこと
もありません。在来工法でも2×4工法でも、同じような建物を同じくらいの
強度で作ることは可能です。壁で支えるので、余りに大きな窓を作って壁の量
が確保されないものは設計不可能になりますが、それは逆にメリットとも言え
ます。在来工法で筋交いが足りずにちょっとの振動で揺れる建物も多い中、
2×4工法では通常それは考えられないからです。
2×4は気密性が高いのもウリにしてますが、逆に湿気をため込んで腐朽しや
すくなることもあり得ます。これも設計によりけりで、もちろんメリットにすること
もできます。
 2×4工法の強化版で2×6(ツーバイシックス)工法というのもあります。



 2) 鉄骨造(S造)
 個人住宅から超高層まで、用途や規模を選ばず採用することができる
工法です。"steel"の頭文字から、S造と言ったりします。
 鉄骨は、製鉄会社で大量に作られています。鉄鉱石などから製鉄→製鋼
→圧延と工程を踏んで、鋼材となります。
 実際に建物に使う鉄骨を加工し製作するのは、鉄骨製作工場です。
ここで柱と梁の接合部の溶接から高力ボルト用孔空け等、建物の設計に
合わせた様々な加工をして、現場に運びます。この製作工場には規模など
によってグレードが分けられていて、扱える鋼材から板厚に至るまで、細かく
規定されています。
 どんなものを作って、どのように運ぶのでしょう。木造とは違って鉄骨造の
場合、柱は柱用の部材、梁は梁用の部材と、1本1本分けて搬入するのでは
ないのです。柱は階高にもよりますが、2層から3層分、それに梁の部分を
1mくらいくっつけたものを1パーツとしてトラックで搬入するのです(下図の
矢印右側部分)。梁の部分を少し出した状態で1パーツを作るのは、梁に
掛かる力が少しでも少ないところで分けた方が構造上有利だからです。

木造では不可能ですが、鉄骨ですと溶接できますのでその方がいいのです。
たまに、大きなトラックが入れないような所の建物の場合、それによって
パーツを細かくせざるを得ない場合があります。

鉄骨のパーツ

このパーツを運んでは現場で組み立てていく、という作業を、完成するまで
繰り返して行きます。通常は高力ボルトを使用して、組み立てた鉄骨を接
合していきます。
 ここで重要なのは、建入れ直しです。高層になればなるほど、ほんの少し
の精度の悪さが大きな狂いを生じることになりますので、精巧な機器を使用
して厳密に確認しながら作業を行います。建て入れ直しの結果(測定結果)
は大事な資料ですので保存しておきます。鉄骨造の良否を決める上でも最も
重要な作業の1つと言えます。

 鉄骨造には、以下のような特徴があります。

長所 短所
構造物として軽い   
工期は短い
高層建築物に対応
火災に弱い
揺れやすい(ラーメン構造)

 長所は構造物として軽量であるということがあります。鉄は、それそのものは
比重が7.8と、コンクリートの2.3と比べて遙かに重いのですが、鉄筋コンクリー
トより有利な断面形状として、上からの荷重に強いH形鋼や、中を空洞にした
ロの字形の角形鋼管を使用でき、また鉄筋コンクリートよりも長いスパンで
梁を渡すことができるので、結果的に有利になるのです。ただ、細い部材で
賄える反面、建物が揺れやすいという欠点が生じることもあります。
 短所は、火災に弱いということです。鉄は高温になると強度が著しく落ちるた
め、耐火被覆という、火に耐えられるもので包んであげるという作業が必要に
なります。鋼材は、それだけで不燃材料なのですが、耐火被覆をしないと耐火
構造にはならないのです。

 その他、建て入れ直しやボルトの本締め・溶接などによる施工精度の問題
もありますが、これは後述する鉄筋コンクリートの方が精度差が出やすいとも
言えますので、比較した時に欠点と言えるかどうかわかりません。

 ・ラーメン構造とブレース構造
 鉄骨造には、柱・梁で構成するラーメン構造と、柱・梁の他にブレースという
斜材が入るブレース構造というのがあります。ここで言うブレースとは、木造
の筋交いと同じ働きのものと考えて間違いありません。これにより、柱と梁の
接合部にかかる「曲げの力」を解消することができるので、構造上有利になり
ます。ただ、斜材が入るわけですから、大きな開口を取れなくなります。工場
などですと、ブレースが室内側に入ったままでも窓を設けたりしています。


 (次ページに続きます。)



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