2011年4月22日7時32分
例年、大型連休ごろには、一面の菜の花と残雪の北アルプスの景観で、絶景ポイントとして人気が出てきた長野県大町市中山高原の菜の花畑が、シカの食害で全滅した。菜種収穫後の8月下旬には、混栽されているソバの花が咲き、NHK連続テレビ小説「おひさま」に登場するソバ畑となる。放映を機に、観光面でも期待していた地元は大きなショックを受けている。
菜の花を栽培する菜の花農業生産組合の竹折敬喜組合長によると、雪解け後の13日に組合員が被害に気づいた。ソバと混作している5ヘクタール、菜の花だけの3ヘクタールの計8ヘクタールで、緑の葉を茂らせ始めた菜の花は、根だけを残して全滅した。被害は、スキー場跡地を利用して栽培を始めた2004年以来、初めてのことだという。
市内のNPO地域づくり工房は、菜の花から油を絞り、回収した廃油をバイオ燃料とする「菜の花プロジェクト」で、組合に栽培を委託している。調味油としての販売も軌道に乗り始めていた。
さらに満開の菜の花畑と北アルプスの景観の人気も高まり、シーズンの週末には1日約2千人を集めるまでになった。朝ドラ放映を機に、観光協会なども売り込みに乗り出した矢先だった。
今回の被害で、5月14日に予定していた「菜の花ライブ」などのイベントは中止になった。
竹折組合長は「予想外のことだが、ことしで終わるわけではないので、対策を考えないと」。地域づくり工房の傘木宏夫代表も「せっかく、それなりのブランドに育ててきて、地域にとっても大損害だ。県や市などにも対策をお願いしたい」という。25日には、行政や観光関係者らを現地に招き、説明会を開く。
連ドラ放映中でもあり、組合はとりあえずソバをまいて、6月にはその花を楽しんでもらう。その後、土にすき込んで肥料にする。7月下旬には例年通り、ソバと菜の花をまくことにしている。