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原発はつぎはぎだらけのハリボテ…なのに電力会社の力でメディアを黙らせてきた功罪を糾弾

2011年4月22日 07時00分(シネマトゥデイ)
原発はつぎはぎだらけのハリボテ…なのに電力会社の力でメディアを黙らせてきた功罪を糾弾鎌仲ひとみ監督と飯田哲也氏(シネマトゥデイ)

 「エネルギーを原子力に頼っていてよいのか」という問題意識が日本中で高まっている中、19日渋谷のユーロスペースでは、原発に代わるエネルギーへのシフトを提案した映画『ミツバチの羽音と地球の回転』が上映され、トークショーに鎌仲ひとみ監督と、代替エネルギー研究で知られる環境エネルギー政策研究所の飯田哲也(てつなり)氏が登場した。

 この日の朝、日本産科婦人科学会理事長が、NHKで「妊婦であっても、年間50ミリシーベルトは大丈夫」と発言したことを、鎌仲監督は、信じられないような顔で会場の人々、そして、飯田氏に伝えた。「犯罪のようなメッセージを発している意図は何なのか」という鎌仲監督の問いに、飯田氏は、「一番濃い雲は官邸にある。一般の人に不安を与えず、パニックを起こさせないようにしている。秩序を維持するためには、真実も、論理も、科学も、いくらでもゆがめていいことになっている。専門家が専門家ではなく、プロがプロではないから、言葉に責任を取らない」と答えた。

 原発の開発にもかかわってきた飯田氏は、日本の原子力発電所を、「表面はきれいに着飾ろうとして、安全だ、世界最先端だ、とのたまっているが、裏側をみれば、ベニヤ板をくっつけたようなハリボテ」と表現し、「これまでたくさんの事故を起こしているにもかかわらず、電力会社の力でメディアを黙らせてきたことが、ベリベリとはがれおちた」と体制そのものの問題を糾弾した。だが、はがれたメッキはひどくなるばかりで、いつまでたっても収束しようになく、状況は悪化する一方だ。

 3月11日に東日本大震災が起こり、メディアには御用学者たちが多く露出しており、「安全だ」ということを伝え続けている。原発を「ハリボテ」と呼ぶ飯田は、ネットで生放送の番組に数多く出演し、本音を語っているが、いまだ出演するテレビ番組はすべて“生”ではなく、“録画”型だという。発言はすべて、編集され、メディアに出てくる学者は、前出の吉村氏のように「大丈夫です」の一言を繰り返している。真実に向き合うのではなく、全員が「安全、大丈夫」と繰り返す報道番組。視聴者の多くが両方の意見を聞きたいはずが、一方の意見のみだけがテレビから聞こえてくる。賛成意見があれば、反対意見がある。それが通り一辺倒の意見では、自分たちが考えることもできないままだ。

 「放射線や被爆には歴史的なプロパガンダがあり、わたしなんかが槍で向かっていっても太刀打ちできない。でも少しでも崩したいと思って頑張ってきたんです」という鎌仲監督は、カメラを片手に、12年間、原発という大きな敵と、闘い続けてきた。映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』と常に放射能汚染の恐ろしさと向かい合ってきた鎌仲監督の作品には、必ず“弱者”が登場する。映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』では、劣化ウラン弾により、白血病やガンに苦しむイラクの子どもたち、『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』では、原発問題と闘う住民たち。わたしたちが、エネルギーを消費する裏では、いつも誰かが泣いていた。本作は、そんな弱者たちを救う、希望の光となる代替エネルギーを取り上げている。トークショー終了後、鎌仲監督に、いま一番伝えたいことを聞くと「決して泣き寝入りをせず、みんなで日本を変えていきましょう!」と力強い笑顔で答えた。

 この日来場していた20代の女性は、「あれだけ、たった一部の人に負担をかけていたのは衝撃でした。知ろうとしていなかった自分が情けないけれど、これから少しでも日本を変えていきたい」と話し、別の観客は「これまでの考えは、日本政府の考えであり、自分の考えではなかったことに気付かされた」と語った。少しずつだが、鎌仲監督の声は映画を通して届きつつある。(編集部・森田真帆)

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