深刻な事態が続く福島第一原子力発電所では、復旧作業にあたっている作業員の疲労が日に日に増していて、現地で作業員を診察した医師は、生活環境や医療態勢をすぐにも改善していくことが必要だと訴えています。
作業員の診察にあたったのは、20年間、福島第一・第二原発の非常勤産業医を務めている愛媛大学大学院の谷川武教授です。谷川教授は、今月16日から19日まで福島第二原発に設けられている診療所で、作業員90人を診察しました。福島第一原発と第二原発には、合わせておよそ900人の作業員がいて、ほとんどが第二原発にある体育館で寝泊まりし、そこから作業現場に通っています。谷川教授によりますと、作業員は、体育館の床に敷かれた畳の上で防護服を着たまま毛布1枚をかけるか、寝袋で寝ているということです。また作業員は、5日前後、連続で勤務して2日休むというサイクルになっていて、勤務の間は入浴できず、食事はレトルト食品だけという生活が続いているということです。谷川教授によりますと、作業員の中には、かぜなどの症状のほかに、ストレスからうつ病が心配される人がいましたが、現在は心のケアを専門に行う医師が常駐していないということです。谷川教授は「復旧に向けた作業の中で危険を伴う仕事は、一瞬の眠気や集中力の低下が、ミスを引き起こし事故につながるおそれがある。衛生面の改善と医療態勢の整備が早急に必要だ」と話しています。