放射性廃液放出事故を起こした歴史のあるイギリスの町で不信感が再燃しています。
アイリッシュ海に面したイギリス・セラフィールドには、1950年代から核関連施設が置かれ、一部は現在も稼働していますが、原子炉の火災や放射性廃液の放出などの事故を起こした歴史もあります。
さらに、当初からの汚染水流出は、およそ30年後に初めて明らかになりました。
現在は、基準値を超える汚染は検出されなくなっていますが、福島の事故をきっかけに、付近の住民や周辺国の不信感が再燃しています。
福島第1原発の事故で、漁に出ることができなくなったという、いわき市勿来漁港の漁師。
さらに20日、政府は、魚介類に対しては初めてとなるコウナゴの出荷停止と摂取制限を指示した。
漁師は、「1年もこうなっちゃったら、干上がっちまうよ、おそらく」、「結局、蛇の生殺しと同じだよ」と話した。
海の汚染、そして風評被害と、日本の漁業関係者は苦境に立たされている。
かつて、史上最悪の海洋汚染に見舞われたイギリスでは、風評被害が国民食を襲った。
白身魚とジャガイモのフライ「フィッシュ・アンド・チップス」は、手ごろな価格の日常食だが、それを提供するパブで、「アイリッシュ海の魚は使っていません」という張り紙がされたことがあった。
イギリス・シースケールの町で、泥の中の放射線量を測ると、通常の40倍の値が計測された。
アイリッシュ海に面する町、シースケール。
緑あふれるのどかな風景の先に姿を見せるのは、「セラフィールド」。
ここには、核燃料再処理施設など、原子力関連の施設が立ち並んでいる。
1980年代から活動を続ける、地元の環境団体CORE代表のマーティン・フォーウッドさんは、「おそらく、1980年代半ばごろまでは、セラフィールドの放射線への懸念というものを一般の人は意識していなかった」と話した。
この施設では、1950年代から放射性物質を含む汚染水のアイリッシュ海への流出が続いていたが、それは1980年代に入るまで、住民に知らされることはなかった。
情報公開の不備が、住民の不信感の増幅につながった。
そして、福島第1原発が汚染水を放出した3日後、セラフィールドでは、使用済み核燃料の再処理に反対する団体が抗議活動を行った。
この団体は、北海を挟んでイギリスと隣り合う、ノルウェーの団体。
放射能流出の隠ぺいによる不信感は、近隣諸国にも及んでいる。
地元のパブ店主は「(地元の魚は絶対に食べないといううわさだが?)そんなことは、まったくないよ。うちの魚は全部、地元の漁師がここらへんの海で捕ったもの。問題はないよ」と話した。
現在、アイリッシュ海で捕れる魚から検出される放射性物質は基準値を下回り、健康には影響のないレベルだという。
しかし、不信感はぬぐいきれない。
フォーウッドさんは、福島第1原発について、「東京電力と日本政府は、現状を正確に説明すべきときに、正直ではなかったと日本の団体から聞いています。それは原発業界の典型的な対応です。どこの国もすべて同じです」と話した。
(04/21 01:23)