東京電力の藤本孝副社長は21日、毎日新聞のインタビューに対し、夏の電力供給力について、従来見通しの5200万キロワットから約300万キロワット積み増し、通常の夏のピーク需要である5500万キロワット分を確保する方針を明らかにした。東西で電気の周波数が異なる問題では、周波数変換所の処理能力を強化し、長期的には東電へ融通してもらう電力規模を1.5倍に引き上げたい考えを示した。
供給力の積み増しに関して、藤本副社長は、被災で稼働が遅れている広野火力発電所(福島県広野町、5基計380万キロワット)について「損壊が少ない設備から着工し、社員、協力会社を挙げて夏の戦列に入れたい」と述べた。広野火力は福島第1原発から30キロ圏内にあるが、藤本副社長は「作業員は線量計を携帯しているが、線量はほとんど出ていない」と復旧作業に大きな支障はないとの見方を示した。
さらに夜間に下流から上流のダム湖に水をくみ上げて昼間に発電する「揚水発電」を増やす方針も表明。揚水は従来、コスト安の原発などの電力を使ってきたが、福島第1原発事故などに伴い火力を使う。このためコスト増となるが、燃料費がどの程度膨らむかは「見通しはついていない」と述べた。また、揚水発電は全体で発電量より消費電力が約3割多くなるが、夏の電力需要のピークとなる昼間の供給確保を優先する。
東西間で電力を融通する能力(現行100万キロワット)の拡大については、既に中部電力が20万キロワットの増強を計画。東電はさらに他の電力大手と連携し、150万キロワット規模に拡大する考え。ただ、藤本副社長は「送電線の整備などで10年はかかる」と述べた。【宮崎泰宏】
毎日新聞 2011年4月22日 2時34分(最終更新 4月22日 4時40分)