<原子力安全委員会について>
原子力安全委員会は原子力基本法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法及び内閣府設置法に基づき設置されています。原子力を安全に利用するための国による規制は、直接的には経済産業省、文部科学省等の行政機関によって行われていますが、原子力安全委員会は、これらから独立した中立的な立場で、国による安全規制についての基本的な考え方を決定し、行政機関ならびに事業者を指導する役割を担っています。このため、内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っています。
原子力利用における国の安全規制は科学的合理性に基づくべきであることから、専門的かつ大局的な見地から判断を下す役割を担う5人の原子力安全委員会委員が、国会の同意を得て総理大臣により任命されています。また、原子力安全委員会の下には、法律によって設置が定められている原子炉安全専門審査会と核燃料安全審査専門審査会が置かれ、関連する分野について深い見識を有する専門家が参加して原子炉施設と核燃料物質の加工や再処理施設等の安全性に関する調査審議を行っています。さらに、耐震安全性、放射線防護、放射性廃棄物の処理・処分等、多くの分野にわたって、それぞれ深い見識を有する専門家の議論に基づいて、国による安全規制についての基本的な考え方を、原子力安全委員会の文書、報告書、安全審査指針等としてとりまとめ、公表しています。
<原子力安全委員会の使命>
我が国の原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主・自主・公開の三原則の下に進められ、エネルギーの確保などを通じて国民生活の水準向上に寄与しています。国は、原子力利用の大前提である安全を確保するため、原子炉や核燃料物質等の利用については、法律に基づく規制を行います。原子力安全委員会の使命は、原子力利用時の安全確保を確実なものとすることにあります。
原子力利用に際しては放射線や放射性物質の発生を伴うことから、万一の事故などでこれらが人々の健康や環境に悪影響を与える可能性(リスク)の存在を完全に否定することはできません。原子力安全の目標は、このようなリスクを社会が容認できる水準に抑えることにあります。この目標を達成し、さらに高い安全の水準を目指すためには、原子力利用に関わる事業者と規制に関わる行政機関が、共に安全確保のためにより効果的な方策を生み出して実行に移す努力を続けることが必要であり、さらにこのような努力について国民に知っていただく必要があります。
原子力安全委員会は、専門家の立場から、科学的合理性に基づいて、安全確保のための基本的考え方を示し、改善・是正すべき点については提言や勧告を行うことによって、行政機関や事業者を指導します。また、情報公開や国民との対話を進め、原子力安全への信頼を高める努力を続けます。<原子力安全委員会の沿革・歴史>
昭和53年(1978年)10月4日、原子力基本法等の一部改正法が施行され、原子力の安全確保体制を強化するため、旧原子力委員会の機能のうち安全規制を独立して担当する原子力安全委員会が設置されました。以来、原子力安全委員会は原子力安全行政における「かなめ」としての役割を果たしてきました。例えば、以下のようなことを行ってきています。
1. 原子力安全に関する基本的な考え方を提示するとともに、指針類の整備を行ってきました。基本的な考え方は行政機関の施策や事業者の安全確保活動に反映され、指針類は、安全審査の基準や自治体における防災対策の基準として用いられています。 2. 原子炉の設置許可などに関する安全審査を行い、安全性の確認を行ってきました。審査においては、規制行政庁とは異なる視点から検討を行っています。 3. 原子力施設の設置許可の後に規制行政庁が行う「後続規制」活動を監視・監査し、不断の改善・向上を促すことを目的とした「規制調査」を実施しています。 4. 原子力施設に関する事故などへの対応を行ってきました。特に、平成11年9月に発生したJCO臨界事故においては、現地における助言活動や事故調査報告書の作成など、専門的・技術的観点から事故対策に関する中心的な活動を行いました。