改正臓器移植法に基づき国内で初めて15歳未満で法的脳死と判定された10代前半の男子の臓器摘出手術が13日午前、終了した。臓器は全国5病院に搬送された。このうち、「18歳未満の提供者からの提供先は18歳未満を優先する」という国の基準が初めて適用された心臓移植が大阪大病院で終了するなど、各病院で準備が進められた。
12日午後11時ごろ、男子の脳死判定を行った関東甲信越地方の病院に、移植施設側の医師が集合。臓器の摘出は13日午前4時2分に始まり、午前7時半ごろまでに終わった。
心臓は、心室の筋肉が硬くなり拡張しにくくなる拘束型心筋症の10代男性に移植された。チャーター機で大阪(伊丹)空港に着いた阪大医師ら2人がクーラーボックスを持って緊急車両に乗り、午前7時20分に阪大病院に到着。移植手術が午前中に終わり、自然に心臓の拍動が再開した。
両肺は東北大病院で50代女性、肝臓は北海道大病院で20代男性、膵臓(すいぞう)と片方の腎臓は藤田保健衛生大病院(愛知県)で30代女性に移植される。もう一つの腎臓は当初、新潟大病院で40代男性に移植される予定だったが、男性側の医学的理由で手術を断念、東京女子医大病院で60代男性に変更された。
日本臓器移植ネットワークによると、男子は交通事故で頭部に外傷を負った。家族は、主治医から回復の見込みがないと説明を受け、11日に脳死臓器提供を決意。脳死判定と臓器摘出を承諾する書類を移植ネットに提出した。男子は生前、家族と臓器提供について話し合っていなかったが、提供を拒否する意思も示していなかった。12日午前7時37分、法的脳死と判定された。
15歳未満からの脳死臓器提供は、昨年7月に全面施行された改正臓器移植法で可能になった。【藤野基文、曽根田和久】
毎日新聞 2011年4月13日 東京夕刊