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特集社説2011年04月16日(土)

子ども初の脳死移植 情報公開に向けて議論急げ

 交通事故で関東甲信越地方の病院に入院していた少年が改正臓器移植法に基づき15歳未満で初めて脳死と判定され、提供された臓器の移植手術が全国5病院で行われた。
 心臓は10代後半の少年に移植。18歳未満から提供された心臓の移植は待機患者として登録した時点で18歳未満だった人を優先する、との厚労省の新選択基準が初めて適用された事例ともなった。
 脳死での臓器提供が家族の承諾で可能になり、子どもの提供にも道を開いた改正移植法の施行から9カ月。やっと踏み出すことができた一歩だけに意義は大きい。
 この間、大人の脳死移植が年間10件程度から40件以上に急増したことを思えば、子どもの脳死移植が容易には受け入れられない現実を突きつけたといえるからだ。
 脳の回復力の強さから子どもの脳死を人の死とすることに異論があるように、子どもの脳死判定や臓器提供には大人以上に難しさが伴う。
 今回も提供者の少年が拒否していなかったという点を含め、意思の確認はより慎重な対応が求められたはずだ。
 しかし日本臓器移植ネットワークは記者会見で、事故から臓器提供の選択肢提示までの時間などについて「把握する立場にない」と、にべもない。
 またしても移植医療の透明性の確保が問われる結果となった。改正移植法の施行後、誰でも臓器提供者になり得るとして重要性を増していたにもかかわらず、である。
 子どもの判定に必要な虐待の有無の確認についても移植ネットは「病院が確認したことを確認する立場。確認の方法や内容は控える」と回答。虐待は無かったとする判断の根拠は明かされなかった。
 虐待の有無の確認は提供者の死因に関係なく求められる。脳死判定の壁を高くしただけに、移植を待つ患者や家族、医師なども初の事例について知っておきたいだろう。
 厚労省は今回のケースについて、経緯の妥当さを検証する専門家会議で優先して取り上げるという。検証結果の報告書は後日、公表される。
 だが、報告書は提供者の家族の意向次第で全部の公表が保証されるわけではない。もとより全て公表不可もあり得るとあっては、情報公開の在り方について早急な議論が求められるのは当然だ。
 子ども初の脳死移植が報道されたことによって、多くの親がわが子の脳死判断を現実的な問題と受け取るようになったことは疑いない。
 それだけに貴い経験を当事者のものだけで終わらせてはならない。プライバシー保護に気を配りつつ情報を幅広く共有できるものにしなければならないと、もう一度確認しておきたい。

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