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[ライフ]ニュース トピック:病気・医療
【主張】少年の脳死移植 厳粛な思い常に忘れずに
脳死と判定された15歳未満の少年をドナー(臓器提供者)とする脳死移植が、国内で初めて行われた。
昨年7月の改正臓器移植法の施行で子供の臓器提供は可能になっていたが、実際の移植までには9カ月が経過していた。家族が提供の意思をどのように確認するかはいまなお大きな課題である。
ドナーとなった少年の両親は「息子は世の中の役に立つ仕事をしたいと言っていた」とのコメントを発表している。わが子の死という大きな悲しみの中での重い決断には敬意を表したい。
脳死移植は厳しい医療である。臓器提供を待つ患者を救うのにドナーの死が大前提になるからだ。その一方で、移植を受ける患者は臓器移植以外では助からない重い病気に苦しんでいる。それが移植手術でスポーツができるほど元気になる。そうした劇的な回復があるからこそ、臓器提供に基準を設け、時間はかかったものの、普及啓発に取り組んできた。この動きは大切にしたい。
改正臓器移植法で子供のドナーからの臓器提供が認められるようになったのは、移植をしなければ死を待つしかない子供たちが今、現実にいるからだ。日本では臓器提供が望めず、海外で移植手術を受けた例も少なくない。
なんとか小さな命を救おうと周囲の人たちが募金活動を行うケースもある。わが子に最善の医療を受けさせたいと願う親の気持ちは痛いほど分かる。
だが、そうした日本の動きに「国内で移植が進まないからといって海外に頼るのはおかしい」という国際社会の批判もある。世界的ドナー不足のなかで、国際移植学会と世界保健機関(WHO)は臓器の自給自足を求めている。
国内で脳死移植の機会を増やす努力は大切だ。ただ、日本人の死生観からは、臓器を物のように扱うことへの抵抗感もある。医療の現場では、常に生と死に対する厳粛な気持ちを失わないよう自戒する必要があるだろう。
今回、ドナーとなった少年は交通事故で脳死と判定された。両親は「身体の一部だけでもどこかで生き続けていると考えると、つらさや悲しみから少し救われるような気がする」とも語った。臓器提供が家族の悲嘆を和らげている。そうした一面があることもあわせて認識しておきたい。
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