中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 速報ニュース一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

少年から臓器移植の女性、温かい気持ちに感謝の涙 

2011年4月20日 09時46分

15歳以下の脳死下臓器提供で膵臓と腎臓の同時移植を受けた患者=19日、愛知県豊明市の藤田保健衛生大病院で

写真

 15歳未満で初めて国内で脳死と判定された少年から、膵臓(すいぞう)と腎臓の同時移植を受けた女性(33)=岐阜県在住=が19日、手術を受けた藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で、本紙の取材に心境を語った。

 「少年と家族の温かい気持ちに感謝したい。移植を受ける前は、糖尿病と合併症の胃腸炎で毎日、吐き気との戦いだった。それが今は、不思議なくらいにない」。女性は14日未明に手術を終え、18日に集中治療室から一般病棟に移った。

 血糖値が下がって意識をなくすこともある「1型糖尿病」を10歳で患い、1日4回のインスリン注射が欠かせなかった。4年前にも膵臓移植を受けたが拒絶反応が強く、1年余りで機能不全に。最近はほぼベッドに寝たきりだった。

 再び移植を受けられると知ったのは、今月12日。移植コーディネーターから、臓器提供者が15歳未満だと知らされた。「少年が世の中の役に立ちたいと言っていたから」という家族の意向を聞き、涙が込み上げた。2度目の手術は、前回移植した臓器に癒着した血管をはがす必要があって難しいが「少年が背中を押してくれる気がした」という。

 手術後に報道で、少年の家族が臓器を運ぶ容器に折り鶴を添え、手術の成功を祈る文を書いてくれていたことを知った。「未来が楽しみな少年だったでしょうに。家族も、ものすごくつらかったはずなのに、とても温かい思いを込めてくれた」と感謝する。

 経過は順調で、1カ月半ほどで退院できる見込みだ。一般病棟に移った後、時折、腹部の左右に移植された腎臓と膵臓に手を当てて「元気に頑張ろうね」と話し掛けている。膨らんだ腹部はまるで、子どもを身ごもったよう。女性は手でさすりながら「ずっと守っていきたい」とつぶやいた。

(中日新聞)

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ