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【社会】

「一緒に生きていく」と女性 少年から臓器提供受け

2011年4月20日 18時32分

 15歳未満で初めて法的に脳死と判定された少年から膵臓と腎臓の同時移植を受けた女性患者(33)=岐阜県=が20日、共同通信のインタビューに応じ「提供された大事な臓器とともに一緒に生きていく」との思いを明かした。

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)に13日、届けられた臓器には「成功を祈っています」と書かれた一つの折り鶴が添えられていた。ドナーの少年は生前「誰かの役に立ちたい」と話していたことから、家族が脳死移植に同意したと伝え聞いた。女性は少年と家族の思いに体が震え、涙が止まらなかった。

 女性は10歳で糖尿病になり、1日4回インスリンを注射してきた。4年前に膵臓移植を受けたが拒絶反応は強く、1年半前に腎不全を併発。毎週3回、1回5時間の人工透析を欠かせなくなった。昨年末から糖尿病と合併症の胃腸炎で、吐き気にも悩まされた。今月12日、移植の連絡を受け、ほっとする半面「また拒絶反応が出たら」と不安で眠れなかった。

 ためらう女性の背中を押したのは、移植コーディネーターから伝えられた少年の話だった。「もっと生きて、いろんなことをしたかっただろう。その命を引き継がせてくれる。生きよう。手術を受けよう。一緒に生きていこう」。そう決意した。

 14日に無事手術を終えた。あれだけつらかった吐き気はぴたりと止まった。一日一日、体が軽くなるのを感じる。インスリン注射も透析も必要ない。「健康って、こんなに自由なんだ」。18日に一般病棟へ移った。1カ月もすれば退院できるが、感染症や拒絶反応との闘いはこれから。不安はあるが、提供された臓器の支えがあるので心強い。

 手術の影響で少し膨らんだおなかに手を当てると、じんわり温かい。女性はさすって話し掛けるという。「一緒に頑張ろう。乗り越えて、いろんなことを体験して感動しようね」

(共同)
 

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