2011年4月20日22時5分
「末永く『命のプレゼント』を守っていきたい」――。脳死と判定された10代前半の少年から膵臓(すいぞう)と腎臓を提供され、藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で移植手術を受けた30代の女性が19日、提供者の少年や家族に向けて感謝の気持ちを語った。
移植を受けた女性は病室で取材に応じ、「感謝の気持ちが強くこみ上げる。少年やご家族の思いに私が支えられることも多いと思う」と述べた。「少年はこれからいろんな可能性があったでしょう。私が目にするものは一緒に見てほしい」気持ちだという。
女性は、小児期から発症する1型糖尿病で、10代の頃から自宅でインスリンを注射し、食事も制限する治療を続けてきた。母親からの膵臓の生体移植を検討したこともあったが、医学的な問題から実現しなかったという。
13日に始まった移植手術の直前、移植コーディネーターから少年の家族の思いを説明され、「誰かの役に立ちたいという強い希望があると聞き、胸が熱くなった」。少年の家族は移植を受ける患者らに折り鶴を贈っていた。「折り鶴に『成功を祈っています』と書かれていて、うれしかった」
一人っ子だった女性は、少年のことを弟のように感じるという。時折おなかに手を当て「これから一緒にいろんなことができたらいいね。慌てないでゆっくり前進していくからね」などと語りかけているという。
一方で女性は「移植医療を受けるのを待っている患者さんはたくさんいる。しかし、強制的に臓器を提供するという世界にはなってほしくない。提供するかどうか、選択する権利は守られなくてはいけないと思う」と話した。
女性に移植された臓器は良好に機能しているという。すでに集中治療室から移植患者用の一般病棟へ移り、19日には起き上がって歩行を始めた。(松田昌也)